いまいち不遇なイギリス〝軽巡〟ホーキンス級のあれこれ

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kasado @Kasadojima

いまいち不遇な、イギリス最後の第一次大戦型軽巡洋艦であるホーキンス級。実は、古鷹型と同様の主砲換装(7.5インチ単装砲7基→8インチ連装砲3基)が検討されていた時期があった。その理由は7.5インチ砲の低発射速度(15インチ砲並みとさえ言われた)にあったのであるが、ここも古鷹同様。

2015-08-11 15:29:20
kasado @Kasadojima

ホーキンス級の改装案は1925年に持ち上がり、ケント級と同じ8インチ連装砲を前部に2基、後部に1基という、のちのヨークやエクセターと同様の配置が検討されており、更にボイラーの全罐重油専焼化や隔壁の追加が盛り込まれ、基準排水量は条約いっぱいの10,000tまで増大させるものだった。

2015-08-11 15:36:15
kasado @Kasadojima

しかしながら本案については火力の劇的向上(特に毎分投射重量は3,500lbsから6,144lbsに増大)は歓迎されるものの、充分な弾薬庫容積が確保できないため、ケント級の1門当たり150発に対して120発しか搭載できず、弾薬庫防御が貧弱であることや、何より改装費がネックであった。

2015-08-11 15:42:22
kasado @Kasadojima

ホーキンス級の改装費は1隻当たり70万ポンドと見積もられていたが、これに対してケント級の建造費は200万ポンド。新型の6インチ砲巡洋艦(リアンダー級の素案)は130万ポンドと見積もられていた。ホーキンス級は当時4隻が現役(ローリーは既に事故で喪失)であったので、計280万ポンド。

2015-08-11 15:47:57
kasado @Kasadojima

1925年当時というと、日米では古鷹型、青葉型、5,500t級やオマハ級といった、WWI世代に比べて高速化した巡洋艦が就役しつつあった頃であり、一方で英海軍の30ノット超の巡洋艦はエメラルド級2隻とホーキンス級4隻に過ぎなかった。

2015-08-11 15:58:27
kasado @Kasadojima

同じ金かけるなら、新型高速の巡洋艦を欲するのはある意味当然の帰結である。7.5インチ砲も、発射速度はともかくとして第一次大戦型軽巡洋艦に対して充分な威力があり、8インチ砲艦(主に古鷹型)のカウンターパートとしては見劣りするものの、既存の6インチ砲艦よりはよほどマシであった。

2015-08-11 16:01:11
kasado @Kasadojima

よって暫くは、低速かつ低火力な(旧)タウン級軽巡を退役させて、8インチ砲巡洋艦の拡充を優先させ、ホーキンス級の改装は暫く見送られたのであるが、状況が変わったのがロンドン海軍軍縮条約である。忘れられがちなのであるが、「重巡洋艦」という艦種(というより区分)が出来たのはこの時である。

2015-08-11 16:09:32
kasado @Kasadojima

また、忘れられがちなのであるが、区分は砲口径6.1インチ以下か6.1インチを越えるかであるので、7.5インチ砲搭載のホーキンス級は「重巡洋艦」枠に入れられてしまったのである。他の国は8インチ砲(200mm(7.9インチ)もあったけれども)であったので、これでは流石に厳しい。

2015-08-11 16:16:16
kasado @Kasadojima

また、8インチ砲艦に比べて安価かつ、バランスのとれた攻防力のある6インチ砲巡洋艦(リアンダー級)を整備の中心としようとしていたこともあり、重巡洋艦の建造枠が日米に比べて低い比率に甘んじることとなったが、低い比率の中で更に低性能のホーキンス級が1/4を占めるのは耐えられなかった。

2015-08-11 16:23:52
kasado @Kasadojima

また、前述のように、改装してもカウンティ級やヨークなどに及ばないホーキンス級を態々8インチ砲艦とするのではなく、いっそ6インチ砲艦に「降格」させて重巡洋艦枠を確保しつつ、それなりに強力な6インチ砲艦を手に入れようという方向に変化したのがロンドン海軍軍縮条約以降の流れである。

2015-08-11 16:27:07
kasado @Kasadojima

ホーキンス級の6インチ砲艦化案は、船体を大型化させた上で6インチ連装砲4基にリアンダー級と同じ1門当たり200発の砲弾、弾薬庫防御の強化(弾薬庫上に3インチ装甲の追加等)が主眼とされ、やはり基準排水量は10,000t程度とされたものの、これもやっぱりぽしゃってしまった。

2015-08-11 16:35:36
kasado @Kasadojima

ぽしゃった最大の理由は、この案が出た後に決まったロンドン海軍軍縮条約の規定にあり、「重巡洋艦」枠が1936年12月31日(つまり失効まで)カウンティ級9隻、ヨーク、エクセター、そしてホーキンス級4隻の15隻であると固定されてしまったからである。これでは8インチ砲艦を新造できない。

2015-08-11 16:39:32
kasado @Kasadojima

新規に8インチ砲艦を建造する事が出来ない以上、「枠を空ける」意味は無く、さりとて6インチ砲艦化しても、リアンダー級新造よりは安価とは言え高性能とは言えない老朽艦(というほどでもないが、艦齢10年超)を改装する意味も無いわけである。ホーキンス級が不遇なのは主にこのせいである。

2015-08-11 16:44:51
kasado @Kasadojima

この後は各艦で様相が異なり、ヴィンディクティブは巡洋艦に復帰するどころか4.7インチ砲2門を搭載するのみの練習艦となり、フロビッシャーは7.5インチ砲5門でやはり練習艦。ホーキンスとフロビッシャーは1937年までに武装撤去されてしまった。退役させても枠が開かないので仕方が無い。

2015-08-11 16:51:15
kasado @Kasadojima

これが変化したのが日本の条約脱退である。日本では「無条約時代」とも表現されるけれども、(主に)米英にとってはWWII開戦まで「第二次ロンドン海軍軍縮条約時代」である。やはり保有量の制限はあったけれども、日本が批准しなかったのでエスカレーター条項により保有枠や代艦条項が緩和された。

2015-08-11 16:55:50
kasado @Kasadojima

エスカレーター条項で有名なのは戦艦の基準排水量の上限が35,000tから45,000tとなり、主砲口径も14インチから16インチに拡大された、というところだろうが、巡洋艦の保有枠についても大幅に拡大され、元々代艦として建造されるはずだった艦も純増として良くなったのである。

2015-08-11 16:58:09
kasado @Kasadojima

15隻枠も同時になくなったので、ホーキンス級の扱いは若干改善(?)され、再武装を施す方向となったけれども、新型6インチ砲巡洋艦は自国・諸外国ともに10,000t級となり攻防能力もホーキンス級を凌駕しており、また、艦齢20年に近づいていた事もあって遅遅として進まなかった。

2015-08-11 17:02:50
kasado @Kasadojima

そんな中、重巡洋艦枠の確保、という1930年当時の思惑が実現できることもあって、武装解除されていたエッフィンガムは再武装の際に旧来の7.5インチ砲ではなく、6インチ砲を主砲とする「軽巡洋艦」として再武装されたのである。

2015-08-11 17:06:47
kasado @Kasadojima

ただし、ホーキンス級の再就役については「巡洋艦の頭数を確保する」という意図が強かったので軽度の改装に留まり、6インチ砲もすべて単装砲で9門。砲自体も、役立たずと見なされ、主力艦の近代化改装の際に降ろされた4インチ単装高角砲に換装された、より旧式の"C"級の主砲であったものである。

2015-08-11 17:12:19
SUDO @sudo_simoigusa

@Kasadojima ていうか、もっと新しいやつは砲塔形式だから、面倒臭かったんじゃないかな(性能は新しいのでも古いのでも大差ないし

2015-08-11 17:13:29
kasado @Kasadojima

@sudo_simoigusa エッフィンガムについては、クラウン・コロニー級以降の新型が就役するまでのつなぎだったのかなぁ、という感じがするんです。ホーキンスとフロビッシャーの改装案は割と本格的ですので・・・

2015-08-11 17:23:36
SUDO @sudo_simoigusa

@Kasadojima 軽巡戦力の組み換え(防空型と従来型の混合)中に回ってきたデカイどんがらですから、強い軽巡として使うか、素敵防空艦にするか夢が広がりまくりんぐで色々と思惑があったんでしょうね

2015-08-11 17:32:23
kasado @Kasadojima

エッフィンガムは6インチ砲艦となり、他艦はどうだったかというと、ヴィンディクティブについては練習艦として余生を全うさせるつもりだったようであるけれども、ホーキンスとフロビッシャーについては1938年6月の段階では5.25インチ連装両用砲6基を装備する本格的な物が予定されていた。

2015-08-11 17:21:01
kasado @Kasadojima

ただし、5.25インチ砲艦化案にしても、航空機運用能力が付与される予定であったけれども、その装備するカタパルトはカウンティ級の近代化改装(実現したのはロンドンだけだったが)によって撤去されたものを再利用する予定であったり、集合煙突化で機関出力が低下するのを忍ぶといった妥協がある。

2015-08-11 17:27:29
kasado @Kasadojima

しかしこれらの多様な改装案も、実現したのはエッフィンガムの6インチ砲艦化のみで在り、ホーキンスとフロビッシャーは結局旧来同様の7.5インチ砲巡洋艦として現役復帰することになった。色々準備している間の1939年に戦争が始まってしまって、頭数が必要になったからである。

2015-08-11 17:29:41