【ミイラレ!第十二話:古椿の小槌のこと】(原文のみ)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女がなんやかんやするお話。正念場を乗り越えられるか? こちらは原文のみです。実況付きはこちら→ http://togetter.com/li/861908
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季の言葉に、しかし巡と春はただ顔を見合わせただけだった。「さすがに奴らは連れてこられなかったんでしょう?」「そうだな。……そういやいたんだっけか、退魔師の奴ら」春が首を傾げて言う。「まあうちの連中は全員無事だ。それで充分だろ」あっさりと言い放つ。75 #4215tk

2015-08-24 20:06:18
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「充分って……!それじゃなに、見捨てるって言うの!?」「お言葉ですが、若」振り向いた春が眉をひそめる。「あたいも奴ら全員を助けられるほどの霊気がまだ戻っておりません。それにあの赤髪は相当の手練れ。組員全員でかかったところで足止めが関の山といったところでしょう」76 #4215tk

2015-08-24 20:09:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季は言葉を失い、俯く。自分でも血の気が引いているのがわかる。ながれたちをあそこまで追い詰めた悪魔が、果たして怜たちになにをするか……考えるだけでも恐ろしい。「め、巡さん!なんとか助けに行けない!?」「あたしがですか?」答える巡は大いに不服そうだ。77 #4215tk

2015-08-24 20:12:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「なんであたしが……いいですか若旦那。今はともかく、奴らはいずれ敵に回ります。捨て駒としてお考えに」「できるわけないだろそんなこと!」その叫びが巡の言葉を上塗りした。目を丸くした鬼女を見つめ、荒くなった息を整えながらも彼は言う。「……頭領の命令は聞くんでしょ」78 #4215tk

2015-08-24 20:15:18
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

息詰まるような沈黙。腕組みをした春が、黙って巡を見据える。鬼女は……ややあってから溜息をつき、肩を竦めた。「今から行ったところで、間に合わないかもしれませんがね」「……まだわからないだろ、そんなこと」睨みつける四季を一瞥し、巡は寝室を出て行った。79 #4215tk

2015-08-24 20:18:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

大きく息を吐き、四季は小雨に寄りかかる。いつの間にか、彼女の体は柔軟性を取り戻していたようだった。大きな掌が彼を撫でる。「頑張ったね、四季」「……なにもできなかったよ。俺は」「できるだけのことはしてたよ」四季は答えず、目を閉じる。どうしようもなく疲れていた。80 #4215tk

2015-08-24 20:21:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

久しぶりに『片車輪』を引っ張り出し、巡は公園に向かっていた。彼女とて山ン本組の一員である。頭領から命じられればそれに従う……それがどれだけ気に食わぬ内容であろうと、だ。(春も起きちまったことだしねえ)内心で彼女は苦々しく呟く。これからは中々に窮屈になるだろう。82 #4215tk

2015-08-24 20:24:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

春は山ン本組最古参の怪異だ。彼女に認められなければ山ン本組を継ぐことなどできぬ。あの少年が頭領に選ばれた時点で、春が彼の味方をすることは自明である。自分の優位が少し失われたというわけだ……彼女は鼻を鳴らす。仕方あるまい。何より優先すべきは組の再興である。83 #4215tk

2015-08-24 20:27:01
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

物思いに沈んでいる間に、公園に到達。巡は『片車輪』から飛び降り、思わず首を傾げる。あまりにも静かで、何の変哲もない。あの悪魔ほどの怪異が暴れたならば、もう少し空気が変わっていてもおかしくないのだが。「おや」巡は思わず声を上げていた。公園の中央にいくつもの人影。84 #4215tk

2015-08-24 20:30:21
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

それは退魔師たちだ。倒れ伏す仲間を、必死に治療している様子。首を傾げ、巡は彼らに近づいた。「……巡さん?」退魔師の一人が顔を上げ、驚きの声を上げた。見覚えがある。草江 怜、だったか。「どうしてここに?」「若旦那のお言いつけでね」答えつつ、屈み込む。85 #4215tk

2015-08-24 20:33:01
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

そして仰向けに倒れる退魔師の胸に手を当て、軽く霊気を流し込む。「がっ!?ゲホッ、ゲホッ!」退魔師が咽せ、覚醒。「目を覚まさないのはあと何人だい?」目を丸くしてこちらを見つめる怜に、巡は苛立たしげに言う。「どうせ放っておくと若旦那の機嫌を損ねるからね」86 #4215tk

2015-08-24 20:36:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

【ミイラレ!第十二話:古椿の小槌のこと】終わり #4215tk

2015-08-24 20:37:07
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