吸血鬼の江雪と人間の鶴丸の話

妄想まとめ 続き→http://togetter.com/li/904497
10
ねや @gesukore

町の外れの屋敷に住む吸血鬼の江雪ちゃんと、町の子供の鶴丸な鶴雪が欲しい

2015-08-22 01:03:38
ねや @gesukore

化け物が住んでいるから、町の外れの大屋敷には近寄ってはいけないときつく言い聞かされていた町の子供達。 ショタ鶴丸は土産話で大人たちを驚かせようと、朽ちかけの屋敷の門をくぐり、軋む扉を開けて屋敷に忍び込む。 誰もいない。やはり化け物など嘘だった。そうして調子に乗って屋敷内を探検

2015-08-22 01:06:54
ねや @gesukore

どの部屋も埃っぽくて、人が住んでいる気配なんてなかった 次々と部屋を開けては何もいないことに少しほっとして、怖いもの見たさにまた新しい扉をあける それも飽きてきた頃、ある一つの部屋にたどり着く。 簡素なベッドとテーブル、クローゼットがひとつ それと所狭しとびっしり並べられた本棚

2015-08-22 01:10:45
ねや @gesukore

この部屋だけは埃臭くなく、豪奢ではないが品があり、明らかに「なにかが住んでいる」気配がした 他の部屋も、エントランスも、リビングもキッチンも、廃墟同然だったというのに その違和感が喉につっかえて、ショタ鶴丸は寒気に少し鳥肌がたった

2015-08-22 01:13:28
ねや @gesukore

唐突だった。耳が痛くなるほどの静けさの中、足音も、衣擦れの音もなかった。 「ここでなにをしているのですか」 真後ろから聞こえた声に、鶴丸少年は悲鳴をあげて逃げ出し、つまづきこけて気を失ってしまったのであった

2015-08-22 01:17:32
ねや @gesukore

鶴丸少年が目を覚ますと、夕日が差し込んで部屋はオレンジになっていた。身体を起こすときしりとベッドが軋んだ。 「目が覚めましたか」 二度目に聞いた時は、柔らかい声だなと思った。 ぼんやりと視線をやった先にら、黒い固そうなソファで本を読む1人の男がいた

2015-08-22 01:23:34
ねや @gesukore

「きみ、だれ?」 「誰でもありません」 「ばけもの?」 「そうであるならそうなのでしょう」 「おとなが、この屋敷には吸血鬼が住んでるっていってた」 「それは恐ろしいですね」 「きみは吸血鬼なのか」 「その話によれば、そうなのでしょうね」 「きみの話はよくわからないぞ」

2015-08-22 01:28:28
ねや @gesukore

つづきはあした ねる

2015-08-22 01:37:46
ねや @gesukore

@gesukore 要点を得ない男の言葉に食い下がりつつも、ショタ鶴丸はその男がきっと異形なのだろうと思っていた。だってあまりにも美しかったから。長く美しい雪の空の色のような髪に、血の気のない白い肌、伏し目がちの瞳は、町の近くの森にある誰もいない湖の色をしていた

2015-08-22 15:15:50
ねや @gesukore

@gesukore 男はショタ鶴丸と話しながらも、本から目を離さずこちらを見なかった。かっちりときた白いシャツに黒のベストとスラックス。結ばれたリボンタイはかっちりと歪みなく結ばれていた。 「君の名前が知りたい」 男を見ているうちに好奇心がわいてきたショタ鶴丸はなおも食い下がる

2015-08-22 15:23:06
ねや @gesukore

@gesukore そうして男はようやっと顔を上げた。正面から見た湖は深くて、底が見えなくてぞくりと悪寒が走る。未知に対する恐怖か、高揚か。ますます興味が湧いた。 「…いけません。」 それだけ言うと、また目を伏せて、本を閉じた。そうして立ち上がると俺の元へと歩み寄る。

2015-08-22 15:46:13
ねや @gesukore

@gesukore さらさらと流れる髪が夕日に煌めいて見惚れた。 「もう、お帰りなさい。そして二度とここに来てはいけません。」 ベッドに座るショタ鶴丸の前に膝をついて、男の指先がショタ鶴丸の頬に触れる。その指は骨ばって細く、氷のように冷たかった。

2015-08-22 15:51:32
ねや @gesukore

@gesukore ぽーっと惚けたまま、気がつくと、ふらふらと町のまで戻っていた。 心配していたのか、町の大人たちが何か言っていたがまるで耳に入らない。 あの大屋敷に独りで住む、あの美しい男のことで頭がいっぱいだった。 もう来るな、と言っていたがショタ鶴丸はそれを守る気はなかった

2015-08-22 15:55:27
ねや @gesukore

@gesukore ていうファーストコンタクト編吸血鬼江雪と人間鶴丸な鶴雪

2015-08-22 15:56:15
ねや @gesukore

あれですね!10月レア4オンリーは!間に合いませんね!一般参加確定!

2015-08-22 19:28:22
ねや @gesukore

@gesukore ショタ鶴丸はそれから、大人の目を盗んでは屋敷に忍び込んだ。 ショタ鶴丸がこっそりと部屋の扉に手を伸ばそうとするときまって「また貴方ですか…町へお帰りなさい」と部屋の中から声がした。 いつ行っても、彼はその部屋で独り、静かに本を読んでいた。

2015-08-22 19:37:42
ねや @gesukore

@gesukore ショタ鶴丸は彼が食事をしている様子を見たことがない。それどころか部屋にはコップの一つもない。ショタ鶴丸は、屋敷に来るときにこっそりおやつを持ってくることにした。最初は断られたが、ショタ鶴丸があんまりしょんぼりするものだから、何回めかには食べてくれるようになった

2015-08-22 19:40:55
ねや @gesukore

@gesukore 数ヶ月も経てば、部屋を尋ねられた彼が開口一番「帰りなさい」ということもなくなったし、本から顔を上げる回数も増えた。雰囲気も心なしか柔らかくなったと思う。 ただ、帰る時には必ず「もうここには来ない方がいいですよ」と鶴丸の頭を寂しげに撫でた

2015-08-22 19:47:30
ねや @gesukore

@gesukore ショタ鶴丸が彼の元を密かに訪れるようになって1年が過ぎた。屋敷はその部屋以外は相変わらずのボロ屋で、つい先日とうとう一回の窓が朽ちて落ちた。あそこは確かキッチンだったなとショタ鶴丸は思ったが気にもとめなかった。どうせ彼は使ってないのだ。

2015-08-22 19:50:13
ねや @gesukore

@gesukore ある日ショタ鶴丸がいつものように彼の部屋を訪れようとすると、部屋の中から声がした。男の、少し艶のある声だった。 「いい加減、つまらない意地を張るのをやめてください」 「落ち着きなさい」 「兄さんが思い直してくれたら落ち着きますとも」 客人は怒っているようだった

2015-08-22 19:56:10
ねや @gesukore

@gesukore そうして客人は震える声で 「あと、10年しかないんですよ」と呟いた。 「見ましたか、あのキッチン、窓が朽ちて落ちていました。エントランスの柱も欠け始めた。他の部屋も。」 「そうですね。あと、10年で事はなります」 「…思い直してはくれないのですね」

2015-08-22 20:01:25
ねや @gesukore

@gesukore 「また来ます」と残して客人は扉を開けた。扉の前で聞き耳を立てていたショタ鶴丸は慌てて退いて顔を上げると、そこには美しい男が立っていた。桃色の柔らかそうなはねっけに甘い面立ちのの色気のある男だったが、ショタ鶴丸を一瞥する瞳がずっと冷たくて、ショタ鶴丸はこわかった

2015-08-22 20:04:31
ねや @gesukore

@gesukore 「これは?」 目を細めた客人が彼を振り返ると、彼は眉を顰めて「知りません。町の子供が迷い込んだのでしょうね」とだけ呟いた。 客人は「ふうん」ともう一度だけショタ鶴丸を見下ろすと興味を失ったのか今度こそ部屋から出て行った

2015-08-22 20:07:20
ねや @gesukore

@gesukore 「鶴丸」 ショタ鶴丸はその声にはっと我に帰った。気がつくと金縛りにあったように客人の帰った方を見ていた。冷や汗が背中を流れるのを感じながら声の方向を見れば、いつもの彼がいつものようにこちらを見ていて、どうしようもなく安堵した

2015-08-22 20:14:44
ねや @gesukore

@gesukore 「あれは誰?」 「さあ。旅人が迷い込みでもしたのでしょうね」 「君が嘘つきなのは知ってるんだ。兄さんって呼んでいた」 「ならばそうなのかもしれませんね」 彼はいつも、自分に対する質問には明確な答えを返さなかった。 それが今日は、いやにショタ鶴丸を腹立たせた

2015-08-22 20:17:56
1 ・・ 6 次へ