吸血鬼鶴雪まとめの続きのまとめ。

吸血鬼の江雪と吸血鬼になった鶴丸 前作→http://togetter.com/li/864622 前作読まないとよくわかんないかもしれないです。
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ねや @gesukore

@gesukore 鶴丸が人を捨ててから1年が経った。 江雪は子である鶴丸から血を貰い糧とできるが、鶴丸は親の血では飢えは凌げない。子にとって親の血とは万能薬のようなもので、摂取すれば力は増すし大抵の不調は解消される。しかし薬は薬、鶴丸にとって江雪の血は食料にはならなかった。

2015-08-26 20:38:23
ねや @gesukore

@gesukore 二人は町を離れた。誰もが誰もの顔を知るあの小さな町では、鶴丸が人に紛れて食事を行うことはできない。更に鶴丸を異形へ落としたということで、町は恐怖と怒りが充満していた。鶴丸の言葉にさえもはや耳を貸さない彼らと共にあるのは不可能だった。

2015-08-26 23:50:54
ねや @gesukore

@gesukore あの屋敷は江雪が火を放って処分した。せっかく新築のように綺麗になったのに、と鶴丸は惜しがった。 しかし火葬のようにあがる炎を瞳に映した江雪が「あれは私の墓のようなものです。貴方と生きるのなら、必要ないでしょう」と言うので、手を絡めて焼け落ちるのを二人で見届けた

2015-08-26 23:59:53
ねや @gesukore

@gesukore そうして今二人は、栄えて賑わいのある港の路地にある、小さな家に住んでいる。この家は鶴丸の知らないうちに江雪がかりていた。曰く、旧友のつてだとかなんとか。 気になってその旧友について聞いてみたが、貴方はあまり関わらない方がいいと一蹴されて終わった。

2015-08-27 00:03:54
ねや @gesukore

@gesukore 江雪は日が昇った時と、日が暮れた時と合わせて1日に数時間眠る。あまり睡眠を必要とする身体ではないらしい。鶴丸の方はといえば、朝も昼も、おおよそ日が出ている時間は眠っている。

2015-08-27 08:23:54
ねや @gesukore

@gesukore 鶴丸は江雪の血によって徐々に人ではなくなったのだろう。最初は日の光が少し眩しいなという程度だったのだが、一月も経てば日の元に出られなくなり、抗えない眠気に晒されるようになった。まだ成りたてである鶴丸は日の光の元に立てるほど強くなかった。

2015-08-27 08:32:40
ねや @gesukore

@gesukore 日が昇り眠るとき、日が暮れて目を覚ますとき、鶴丸そばにはいつも江雪がいた。ふわりとベッドに腰掛け、おはようございますと髪を撫でてくれるから、シーツに広がる江雪の髪を掬い取って口付けておはようと返す、それがいつものことだった。

2015-08-27 10:58:56
ねや @gesukore

@gesukore おかしな言い方をすれば、鶴丸は江雪よりも吸血鬼に向いていた。持ち前の明るさと社交性に見てくれもよい。夜に出かけると、適当な酔っ払いの女性をひっかけては路地につれこみ、気づかれないように軽く肌を合わせながら甘い言葉を囁き少し血を頂いていた。

2015-08-27 11:11:30
ねや @gesukore

@gesukore 食事が終わり家に帰る頃には、鶴丸にはすっかり女の香水の匂いがついている。そうすると江雪はやんわりと避けて触れさせてくれないものだから、帰るとすぐに風呂に入る。 そうして江雪に飛びかかってベッドに雪崩れ込み、頭をぐりぐりとその胸に擦り付けてじゃれるのだった。

2015-08-27 11:28:04
ねや @gesukore

@gesukore 江雪は概ね受動的だった。鶴丸のすることは大抵なんでも受け入れたし、抱きしめれば、ほう、と充足の溜息をついた。鶴丸の匂いが好きなようで、襟足まで伸びた白い髪や、肩口に控えめに顔をうずめてささやかに甘えてくる。そのまま血を吸ってもいいのに、と思うがそれだけだった

2015-08-27 11:58:32
ねや @gesukore

@gesukore 江雪は鶴丸が人を捨てたことに責任を感じているようだった。全ては鶴丸の意思で彼の知らぬ間に勝手に行ったことだし、むしろ江雪を100年をかけた死への旅路から引き摺り下ろしたのだから、むしろ恨まれて然るべきなのにと鶴丸は思った。

2015-08-27 12:02:25
ねや @gesukore

@gesukore 江雪は今、鶴丸のために生き永らえている。自分が死ぬのなら共にという鶴丸を道連れにすることが、死ぬための苦しみを知る彼にはできない。きっと鶴丸はそれをわかっていて人を捨てたのだ。ずるくひどい人だと江雪は少し憤った。そんなことに愛しいその身を捧げて欲しくはなかった

2015-08-27 12:54:35
ねや @gesukore

@gesukore 鶴丸は髪の長い女性を好んだ。しとやかならばなおのこと文句はないのだが、夜中に酔っ払って男についていくようは女は大抵派手で軟派なものだ。 髪の美しい女性がよい というのも、まだまだうら若き鶴丸は、恋する化け物に手を出せず、情けないことに女の影に彼を重ねていた

2015-08-27 19:41:25
ねや @gesukore

@gesukore 手は繋ぐ。抱き合うことも、する。同じベッドで戯れながら寝ることもあるし、口付けだって、する。 そこまでしている。言い換えればそれまでしかしていない。 年上相手だというのに、鶴丸はあと一歩踏み出すことを躊躇している。清廉な彼をけがして、しまうような気がして

2015-08-27 19:45:26
ねや @gesukore

@gesukore 後ろから女を抱き寄せる。肩口に女の頭が当たり香水の匂いに包まれる。(自分より少し身長のある彼は、長い髪とうなじの感触、それと落ち着く匂いがする) 甘い言葉を囁く。女は嬉しがって甲高い声で媚びる。(彼はいつも少し動揺した後、耳を赤くしてささやかに頭をすりつける)

2015-08-27 19:57:38
ねや @gesukore

@gesukore 戯れながら汗ばんだ首筋に牙を突き立てる。(彼の肌は滑らかで白く、牙が貫く感触は柔く甘い。) 快感に喘ぐ女から血を拝借する。(彼は少し頬を赤らめて目を閉じ快感に耐えて、扇情的な湿った息をこぼす) ああ、彼が恋しい。

2015-09-10 21:13:27
ねや @gesukore

@gesukore 「おかえりなさい」 耳を打つ声は涼やかで、そのくせ身体の熱を上げさせる。 「…ただいま」 自分が今いやらしい顔をしている自覚はあった。いつも食事の後は街をぶらついてある程度熱を冷ますのだが、今日はなんだか彼に会いたくてたまらなくて、そのまま帰ってきたのだった。

2015-09-10 21:18:52
ねや @gesukore

@gesukore 彼に焦がれている、と思った。彼の血を久しく飲んでいないからだろうか。子である鶴丸は江雪の血を飲まなくてもなんら問題はないはずなのに、彼がいないときっと自分はおかしくなってしまうと思った。 江雪の鼻がひくりと動く。きっと今の自分は香水と血の匂いがするのだろう

2015-09-10 21:21:20
ねや @gesukore

@gesukore 覚束ない足取りで歩み寄り、彼の寛ぐソファに無遠慮に乗り上げて唇を重ねた。彼は驚いたのか僅かに身じろいだ後、不快そうにぐ、と眉間に皺を寄せた。 弾かれたように身を離す。いや、離さざるを得なかった。彼が「拒んだ」から。

2015-10-02 23:57:10
ねや @gesukore

@gesukore 彼は何も言わずに俯いて、ぐし、と唇を拭った。 「…風呂に入ってくる」 放心したようにぼうっと立ち竦んでいた俺は、かろうじてそれだけ絞り出すと、ふらふらとその場に背を向けた。

2015-10-08 08:15:40
ねや @gesukore

@gesukore 冷水を頭からかぶる。思ったよりもずっと自分は動揺していた。彼を怒らせたのは初めてだった。女の香水が嫌だったのか、路地の埃くささがいやだったのか、あまり考えたくはないが自分に唐突に口づけをされたことが嫌だったのか。何にせよ彼の機嫌を損ねたことには変わりない。

2015-10-08 08:18:20
ねや @gesukore

@gesukore あぁ、ともはぁ、ともつかない声が漏れる。ここで初めて鶴丸は、彼に嫌われたら、ということを考えた。彼が望むだけで自分は一切彼に近づくことはできなくなる。恐ろしかった。彼を失うことも、彼をまた独りにしてしまうことも。

2015-10-08 08:23:17
ねや @gesukore

@gesukore もう十分に頭も冷えた。こういうことは早く謝るに限ると、髪も濡れたまま、彼の元への戻った。彼は自分が去った時と同じようにソファに座ったままだった。 「江せ…」 「鶴丸」 遮るように名を呼ばれてぐ、と息がつまった。ああ、死刑を待つ囚人の気分だ。

2015-10-08 08:26:51
ねや @gesukore

@gesukore 「こちらへ」 勝手に足が動く。そうして鶴丸の意思の働かない身体は、差し伸ばされた手に指を絡めると、座る江雪の膝の上に乗り上げ腕を回してしなだれかかった。子供が抱っこをされているようでどうにもいたたまれないと鶴丸は気恥ずかしくなった。

2015-10-08 12:53:23
ねや @gesukore

@gesukore それにしても予想外だと彼は思った。てっきりお説教か、お小言か、最悪勘当でもされるとばかり思っていたのだ。何を考えているのか、抱きついている彼からは江雪の表情を伺うことはできなかった。ただうなじに回された指でさらさら、さらさらと鶴丸の髪を弄んでいた。

2015-10-08 12:57:00
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