フォロウ・ザ・コールド・ヒート・シマーズ #2

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「奴もその点、わきまえている……」デッドムーンはぶつけ返しながら言った。「願わくは、他のニンジャもそうであってほしいがね。いるんだろ、他にも」「恐らくはな。しかしながら、どうやらニンジャであろうがなかろうが、闘争心にあふれる連中ばかりのようだが」「俺もビビッてるぜ」44

2015-08-31 00:11:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お帰りなさいやし!」ドーシンが運転しながらサイサムライに頭を下げた。「野郎、質量感がありやがりやすぜ!たいしたクルマだ。……武装霊柩車ッてのは、実際モージョーに彩られたイカレ野郎の集まりなんだ。奴ら、デカい焚火を囲んで盃をかわすって話で。ニンジャスレイヤーの奴が何故……」45

2015-08-31 00:19:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「伝説的な霊柩車乗りに、かつてゲバタ・テルコという女傑がおった」サイサムライは言った。「ネズミハヤイDIII……」「知ってるんでやすか、武装霊柩車コミュニティを!あのデッドムーンとかいう野郎はそのゲバタと関係が?どんな奴なんで?」「否……走り、クルマの佇まい、どこか思い出す」46

2015-08-31 00:23:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「しかし参りやしたぜ」ドーシンはギアを切り替えながら舌打ちした。「サイバギーはそりゃもう輝かしい男の戦闘車両です。だもんで、霊柩車なんぞ重量差でブッ飛ばしてやるつもりだったんです。それが、こうビクともしねえとなると、速度の地力で……アアッ!」ドウ!ネズミハヤイがロケット噴射!47

2015-08-31 00:26:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おおッと!ロケット噴射と来たぜ!」ビッグユージが叫んだ。「目が離せない走りだ!ちなみに武装霊柩車のサスペンションッてのは門外不出なぐらい凄い職人テクノロジーの産物らしくって、オフロードでアツアツの蕎麦が食えるって話だ!たまげたね!」「ワオオーッ!」「一気に引き離すか!」48

2015-08-31 00:32:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「エエイッ畜生!タイミングを読み切れやせんでした!オヤブン!」ドーシンはハンドルを殴りつけた。「ドッシリと構えておれ!」サイサムライはシートに深くもたれた。「この長丁場のレース、単なる運転技術のみが全てを決めるわけではない」「ヘイ!だけど畜生!ポイントが……畜生!」「フン!」49

2015-08-31 00:35:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なかなかハヤイ……感銘を受けるね」デッドムーンはミラー越しにサイバギーを眺めた。「それじゃダメ押しにもう一発だ……旦那、奥歯をしっかり噛んでおけよ」デッドムーンはダッシュボードの丸ボタンをプッシュした。KABOOOM!二段ロケットエンジン点火!強烈なGがかかる! 50

2015-08-31 00:37:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ネズミハヤイは前方の角度数度の上り坂に突入し、ジャンプした。道路上に穿たれたクレーターを幾つか飛び越え、クロームシルバーの車体は誇らかに着地した。キャバアーン!一億ポイント加算!「別ルートとの合流地点だ」ニンジャスレイヤーは左を見た。然り、丘ルートの道が斜めに合わさる。51

2015-08-31 00:41:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

陽光を受け、蜃気楼めいた金色の輝きが前方に在る。「さあ、現在トップを行くのは丘ルートを走りきったサンライザーだ!」ビッグユージが身を乗り出した。「地雷源をものともしない!マイペースもいいとこだ!」「あの地雷、爆発パタンからして、オカメ55と察する」キリング・マキが言った。52

2015-08-31 00:45:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「湾岸警備隊の放出品だ。感知から爆発までに若干のタイムラグがある。サンライザーはトップスピードで地雷原を通過し、タイムラグを利用して、爆発を後ろに走りきったわけだ」「とんでもない事をしてみせる!それが前回優勝者のサンライザーだ!二度も優勝賞金を獲りに行く!使い切れるのか?!」53

2015-08-31 00:47:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「トップを行くっていうのは、常に不安と隣り合わせ。それは否めない」キンキー・コウイチが説明した。「不安のステージは段階を上げるごとに待ち構えるものさ。ゆえに王者は現状維持ではむしろ後退だって事を肌感覚で知っている」ダンベルを上げ、「満ち足りたら最後、外的要因に蹴落とされる!」54

2015-08-31 00:50:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「エートつまり」「投資こそが最適解さ。フェリペ2世をご存知かな?」「美にはカネを幾らつぎ込んでもいい」フラストミチ・マレナがサイバーボーイの鼻をつまんだ。サイバーボーイはくしゃみをした。「愛を注いでやれば、美は答えてくれるの。ホホホ!」「さあサンライザーの後ろでは……二台!」55

2015-08-31 00:55:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ギュアアア!デッドムーンのネズミハヤイとホット・チックのホット19がサンライザーのやや後ろで並び立つ!「トップを獲るのは難しい」デッドムーンは呟いた。ホット・チックのなまめかしい唇が嘲笑めいて歪んだ。「どうなる!どっちが出る!さあ、これはわからないぞ!ゴジュッポ・ヒャッポ!」56

2015-08-31 01:00:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

トライアングル陣形じみて、サンライザー、ホット・チック、デッドムーンは、バンブー林地帯へ突入した。道路両側に錆びて茶色くなったガードレールが迫り出してくる。「ウオーッ!」「ウオオーッ!」バイオパンダの遠吠えが非常に恐ろしい。「パンダが見たいわ!捕獲したら5000万ポイントよ」57

2015-08-31 01:05:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「三台のうち、勝者に1億。殺害すれば2億だ」キリング・マキが低く言った。「僕はレースを面白くしたいところだね」キンキー・コウイチは胸板にオイルを塗った。「サンライザー=サンに特別ミッションだ。ホット・チック=サンとデッドムーン=サンを一度先に行かせてくれ。5億ポイントだ」58

2015-08-31 01:09:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「五億?」ビッグユージが訊き返した。キンキーは両腕にオイルをのばした。「そうだよ。キャリーオーバーしたら興ざめだよね」「ワオ……さあどうだ!サンライザー!これは……ウワアーッ応じたぞ!減速だ!三者カーブに突入!アウト・イン・アウトで第一に突破したのは、ホット・チックだ!」59

2015-08-31 01:13:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「流石アタシのチェリーベイブ!」助手席のサンダリイ・ライラが笑った。ホット・チックは鼻を鳴らした。「どいつもこいつもタマ無しよ」「油断はダメよベイブ!ハッハハハ!」ヘアピンカーブ!三台は食らいつくような曲線を描きながら突入する!「さあバンブー林は視界も悪く危険だぞ!」60

2015-08-31 01:18:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウオオーッ!」ナムサン!通常の二倍大きい異常なバイオパンダがバンブーをかき分けてあらわれ、ガードレールを蹴り破ると、通過する車両に向かって危険な爪を振り下ろした。「ンアーッ!」ホット・チックは間一髪これを躱し、グリップを失いかける。アブナイ!ネズミハヤイが隙をついて前へ! 61

2015-08-31 01:21:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバーッ!」そのすぐ後ろで異常バイオパンダが引き裂かれて死んだ。サンライザーが体当たりをかけたのだ!バンブー林が開ける。三つの車両は完全に並列状態でゴーストタウンに突入した!「近い!第一チェックポイント近い!どうなる!武装霊柩車が出る!いや、サンライザーか?ホット19!」 62

2015-08-31 01:23:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

車両群は「おこしませ」と書かれたヒラガナ横断幕を潜り抜けた。痩せた子供達が歓声を上げて道路脇を走る。サンダリイ・ライラは助手席からキャンディをバラ撒いた。ビッグユージは汗を飛ばし、マイクに食らいついた。「どうなる!どうなるか!こいつはわからんぞ!ヤバイ!チェックポイントだ!」63

2015-08-31 01:27:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

三つの光る弾丸めいた車両は同時にチェックポイントを通過!ゴーストタウン目抜き通りを爆走し、ドリフトしながらロータリーに突入、クールダウン走行に入った。「ワオーッ!」中継映像にスタジアム観客が湧きかえる!「何てこった!こいつは……三台同着と言わざるを得ないぜ!」「ワオオーッ!」64

2015-08-31 01:34:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

バムフ!車外に出たホット・チックは力任せにドアを閉め、同じく車外に出たニンジャスレイヤーを睨みつけた。ホット・チックがヘルメットを脱ぐと、中身は驚くほど若く、そばかすの目立つ女だった。「パンダに救われたね、しみったれ野郎」ホット・チックは吐き捨てた。 65

2015-08-31 01:39:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「初出場の俺にもファンがいたらしい……死んだパンダ、悪くない」デッドムーンは運転席窓を開け、ホット・チックを見上げて言った。彼女はまだ何か言おうとしたが、後ろでサンライザーの車内UNIXが「キャバアーン!」という電子音を轟かせると、舌打ちして去った。撮影報酬獲得音である。 66

2015-08-31 01:44:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「内容はどうだ」ニンジャスレイヤーは訊いた。デッドムーンは頷いた。「要は……まずは生き残るッてところから。ポイントのおまけもついて、上々だ。二日目は長丁場……今日のようにはいかんだろうがね」「参加者の中に、それらしい者の姿はあったか」「……明日になりゃ、もっとよくわかるさ」 67

2015-08-31 01:53:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【フォロウ・ザ・コールド・ヒート・シマーズ】#2 終わり。#3 に続く

2015-08-31 01:54:26