艦これ✕鋼鉄の咆哮 最終章『限り無き蜃気楼』

シリーズ最終章。
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碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

超兵器の脅威は、去っていない。それは一種予言めいていて。それが、今から思えば終わりの始まりの予兆だった。 ……私達は、少しずつ変化している。超兵器も、少しずつ変化している。それを、これまでの戦いの中で知っていた筈なのに。 それから僅か数日後、事件は起きた。18

2015-09-02 22:13:51
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

艦これ✕鋼鉄の咆哮 最終章『限り無き蜃気楼』 - Togetterまとめ togetter.com/li/868736

2015-09-03 00:45:38
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

終わりは、いつも突然やってくる。 その日、南極大陸が二つに割れた。極軌道衛星が捉えた写真には、中央に亀裂が生じた南極大陸と、それをやった『何か』が写っていた。嘗て、私達が海の底へ追い返した超兵器。『摩天楼(ヴォルケンクラッツァー)』。その同型、ないし発展型。19

2015-09-03 00:54:08
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

それだけなら、良かった。『大いなる冬』と同じだ。「……これ、縮尺幾つです?」「太平洋に沈んでいるヴォルケンクラッツァーを基準にして、大型は一回り大。小さいものは……およそ百分の一以下であります」衛星写真に映った無数の小さな点。それは……無数の小さな『ヴォルケンクラッツァー』。20

2015-09-03 01:00:41
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

超兵器が、ただの命だと。最初にそう言ったのは、自分の筈なのに。産み、増え、地に満ちる。それこそが、命の本懐である筈なのに。その光景を前に、戦慄以外の感想は抱けなかった。あの巨大な烏賊を前に抱いた杞憂が遂に現実のものとなったのだ。 21

2015-09-03 01:06:03
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

自己複製する超兵器。それは、彼女達が生命として完成した証。だが、だからこそ。もしも矛を交えることになれば。1隻でも残せば、人類に安息は決して訪れない。 これは生存競争だ。人類も、艦娘も、深海棲艦も。或いは、他の超兵器さえも。打ち勝たなければ、未来はない。22

2015-09-03 01:09:02
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「これ、どするでありますか?」「どうするって言われても……身動き取れないんですよねぇ……」提督は現在、入院中。この衛星画像すら、目の前のあきつ丸さんから……つまり、陸軍の伝手で入手したものだ。「大淀さん、どうします?」「どうすると言われましても……提督代理の判断を仰がないと」23

2015-09-03 01:16:20
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

私……明石とあきつ丸さん、そして大淀を巻き込んで、こうして鎮守府の小部屋でよからぬ企みをしているものの、当然ながら解決策は見当たらない。「……その前に、軍規とかどうなの?」「世界の危機に固いこと言いっこなしであります」「それでも、提督代理に話を通して……」24

2015-09-03 01:25:03
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「これを私達が知ってること、どうやって説明するんですか?」「いい加減諦めるであります」「ぐっ……謀ったわね!」大淀をやり込めようとしたその時、密談部屋の戸が勢い良く開く。「わーっ!」「これはその、女子会で……」「何も怪しくないであります!?」資料を隠し、三者三様の隠蔽工作。 25

2015-09-03 01:28:25
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

あきつ丸さんはさり気なく、日本酒の瓶を机の上に置いている。「……酒盛りにしては、酒臭くねぇな」だが、扉の外に居たのは……入院している筈の、寝間着姿の提督だった。「あの、病院は?」「抜け出してきた。悪巧みなら混ぜろ」「もしかして酔ってます?」「酔ってねぇよ。一杯引っ掛けたが」26

2015-09-03 01:33:48
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

吐く息がだいぶ酒臭い。「南極の話だろ?他にねぇもんな」「あの、そうですけど……」「呑まずにやってられるか」こんなに荒れた提督は、初めて見たかもしれない。「このまま行けば、人類はどの道終わりだ」「提督、それは一体……」思わず大淀が問い掛ける。27

2015-09-03 01:37:29
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「……やっと、上が何をしでかしたのか分かったんだよ」机の上の酒瓶をひったくるよるに取り、グラスに氷を入れて注ぎ始める提督。「超兵器調査の一環でな。南極の下を『掘って』みたんだそうだ。核で氷を吹っ飛ばしてな」「何やってるんですか!?っていうか南極条約は!?」28

2015-09-03 01:39:13
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「あれは、元々期限30年の条約だ。惰性で自動延長されてるだけでな。改正されてたんだよ。今回は事情が事情だ。……それ以前に、これは上がやったことだからな。俺は知らねぇ」「あの、調べた結果……どうだったんでありますか?」29

2015-09-03 01:41:48
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

提督の情報網はやはり凄まじい。私達が衛星画像一枚手に入れる間に、その遥か先の情報まで手に入れているとは。「聞いて驚け。あそこの氷の下の鉱床には、超兵器機関と同じ成分の材料がびっしりだ。秘匿のために『レアメタル』と呼ばれちゃいたが、同じもんだな」30

2015-09-03 01:43:32
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「大陸ごと超兵器に化けたって、おかしくないんだ。むしろ、吹き飛んでくれて幸いだったと言っていい」もう一度、私は衛星写真を見やる。つまり。こいつらは、増えているのだ。南極の資源を餌にして。「そもそもどーして、世界中の海底に超兵器が眠っているのかって話だ」提督の話は続く。31

2015-09-03 01:46:19
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「この酒をよく見ると、対流が起こっている」そう言ってグラスを突き出す提督。「まぁ飲め。まだ口つけてねぇんだろ」そして酒を薦めてくる。「氷で冷やされて、比重の重くなった酒が下へ沈み込む。同じことが海でも起こる」以下の話は、提督の話からどうにか理解した内容から再構築したものだ。32

2015-09-03 01:50:19
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「深層海洋大循環ってな。南極で冷やされた水が、深海へと沈み込む。南極から離れた水は、遥か北に流れて暖められ、表面に浮かび上がり、海流になって南極へ戻って行く。千年単位の長い時間での循環だ。だがまぁつまり、言い換えれば世界中の海水は、一度南極海を通過する」33

2015-09-03 01:51:35
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「海流に乗って、超兵器機関がばら撒かれた……と?」ここまで来るのに、既に三十分。だが、それが今の状況とどう関係するのだろうか?「だから、俺達はうっかりその元栓を開けちまったんだよ。鉱床から直で散らばった超兵器機関は、遥かに速く世界中の海にぶち撒けられる」ここまでで更に二十分。34

2015-09-03 01:54:58
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

超兵器機関は、みずからエネルギーを生産し、増殖する。そして……進化する。つまり、今南極に居る超兵器は、始まりに過ぎない。「だから、どのみち人類は……終わり、だと?」それに答える声はない。提督は寝息を立て始めている。二人は沈黙している。状況は、既に最悪を通り越していた。35

2015-09-03 01:58:18
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「……こんなの、勝てない」「で、ありますな」人類と私達がどれだけ力を合わせても勝てはしない。いや……違う。「……勝っちゃいけない」「え?」「へ?」「兵器で勝てば、彼女達の認識はそのままだから」そうすれば、彼女達は兵器の模倣を続けようとする。強くなろうとし続ける。 36

2015-09-03 02:01:45
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ほんの数日前の、提督との雑談の通りに。「だから、」だから。私達が命を賭ける他はない。人であり、兵器である私達が。その在り方自体を否定するために。 あれは、最後に残った『頑固者』だ。だから説き伏せさえすれば、希望が見える。私達の未来のために。そしてこの星の、明日のために。36

2015-09-03 02:05:51
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

◆艦これ✕鋼鉄の咆哮 最終章『限り無き蜃気楼』 ◆#1おわり #2へ続く

2015-09-03 02:06:54
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

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2015-09-04 00:45:32
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