黄昏町(柊)三十九日目

柊 @hiiragi_r_t_d

【三十九日目】 【残り百圓】 【魂15/力10/探索6】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、半透明(探索+3、力-3) #hollytk

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私は眠るカスカを背負って、縁日の石畳を歩いていた。 こうして背負う度に、カスカの軽さを感じる。 この軽く、小さい体で彼女はこの町を生き抜いてきたのだ。それはどれほど辛いことだろうか。 01 #hollytk

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やがて私の足が一つの出店の前で止まる。一陣の風が、無数の音を奏でる。 「いらっしゃい」 山高帽を深くかぶった店主が、軽く会釈する。 その屋台には、無数の風鈴が吊るされていた。 02 #hollytk

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「どうも。おすすめは？」 無口な店主はすっと山高帽を脱ぎ、その下に隠されたもの……縦に開いた目をあらわにした。 店主は額の目で私を一瞥すると、吊られた風鈴の中から一つを無造作に選び取る。 手渡されたそれは、透明な風鈴だった。 03 #hollytk

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色も柄もない、綺麗に透き通った風鈴。 中に吊るされた硝子棒には、細かい模様が刻まれている。 「良い風鈴ですね。ありがとうございます」 「………百圓。それと」 店主は山高帽をかぶり直しながら続ける。 「その子は、どうするつもりだ」 04 #hollytk

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「この縁日に、置いていくつもりです」 「悲しむぞ」 「………ここから出た方が、悲しむ事は多いでしょう」 店主は何か言いたそうにしていたが、溜息をついて掌を出した。 「分かった。世話を見てやろう」 「ありがとうございます」 私は懐から百圓を取り出す。 05 #hollytk

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鋭い爪の並ぶ店主の掌に、コインを置こうとした時……私の腕を、後ろから伸びた腕が掴んで止めた。 「……つまんねえこと、してんじゃねえよ」 カスカが、目を覚ましていた。 06 #hollytk

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「……カスカ、貴方はこの縁日に残りなさい」 「やだね。アタシはアイズミと一緒にこの縁日を出る。そう決めたじゃねえか」 「どうしても、ですか」 「どうしても、だ」 「ここを出れば、また酷い目に遭いますよ」 「心配してくれてんのかよ、らしくもねえ」 07 #hollytk

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カスカが私の背中から飛び降り、私の前に立つ。 私の目を見ながら、カスカは言い放つ。 「アタシは大丈夫だ。アイズミが心配する事は何もねえ」 「……カスカは強いですね」 「いや、アタシは弱いぜ？」 「いいえ、強いですよ。私よりも、ずっと」 08 #hollytk

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店主がもう一度尋ねる。 「で、どうするつもりだ」 私は肩を竦めて答えた。 「行けるところまで連れていきます」 「そうか。」 店主は改めて、掌を差し出す。 09 #hollytk

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私はカスカと手を繋ぎながら、店主の掌に最後の百圓玉を置く。 意識が遠のき、全ての感覚が消え失せても、自分の手をカスカが握っている事だけは感じられた。 10 #hollytk

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──────── 【三十九日目】 【魂+1、圓を失い死亡(魂-1、アイテム消失)】 【魂15/力10/探索6】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、半透明(探索+3、力-3) 11 #hollytk

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[縁日]透明な音色をいくつも重ねる風鈴屋。山高帽の主人が君に渡した一つは、ひときわ耳に心地よい。《【魂+1/失っている名前、感情があるならそのうちひとつを取り戻す】/-100圓》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/553567 #hollytk