(漫画原作者、元編集者の)喜多野土竜先生による「電子書籍と出版の未来」についての意見
50:大手は社員数が多い上、やっぱり元々が高学歴で能力が高いため、出会い次第で優れた才能を開花させる編集は多い。目先の売上にこだわって、受け幅が狭い編集者って、中小のほうが比率は多いかも。なので、大手は大手で紙のほうの利益を維持するし、時期が来れば電子にも本格参入するでしょう。
2011-01-08 16:34:4451:では、電子書籍の未来とは? たぶん、芸人としての漫画家の生き方の選択肢になりえるかもと。今は、やっぱり大きな流通を考えた展開とかを夢想しがちだが、それには作家個人や編プロ集団では、難しい。組織が大きくなれば、理想より組織維持が自己目的化する。ただ立川流的な生き残り方も可能。
2011-01-08 16:37:5052:全国に雑誌を流通させるためには、昔は2万5000分以下の部数は輪転機が少部数用の特殊な物になるため難しいと言われたものだ。文芸誌は、出版社の意地で出してるとも。それは今も変わらないが、現在は1万部を切る雑誌もけっこうある。それでも単行本はそれなりの部数がないと配本されない。
2011-01-08 16:41:4753:弱小出版社なら初版3000部なんて部数もあるが、それにしてもそこが伝統があって取次との関係があるからこそ、その部数でも引受る。5000部以下の本は、出版社が小さすぎても大きすぎても、流通に乗らない。事実、自分の尊敬する漫画家は、デビュー20年だが、単行本が一冊も出ていない。
2011-01-08 16:45:0654:だが、例えば下関のネットラジオ『くりらじ』は、月額525円で科学解説番組『ヴォイニッチの科学』を配信した。配信三ヶ月ぐらいで登録1000人オーバーしたといってるので、今はもっと多いはず。525円で1000人なら、52万5000円。配信会社の取り分もあるが、悪くない数字。
2011-01-08 16:47:3455:大手なら箸にも棒にもかからない3000部作家でも、例えばそれを月額500円で定期購読してくれる1000人の読者がいれば、ComicStudioなどでアシスタントの人件費を押さえれば、なんとか食っていける。2000人いれば月産枚数も増え、かなりの好循環を生み出せるはず。
2011-01-08 16:52:2156:考えてみたら、落語の独演会で1000人集めるとか、実は大変な数字。入場料の単価は違うが、でもその集客力があれば食っていける。漫画家も、商業誌ではお呼びでなくても、好きなことで食える可能性がある。商業誌で需要がある作家でも、心ならずも打ち切られた作品を継続できる可能性が。
2011-01-08 16:55:4757:大手出版社が内心恐れるのは、担当編集が売れっ子作家をそそのかし、独立すること。それは作家個人(と担当)にはメリットがあっても、出版社と敵対関係になる。会社の名刺を自分の実力と勘違いした編集はともかく、やはり漫画に情熱ある、有能な編集を生み出す土壌としての出版社の存在は必要。
2011-01-08 17:01:2758:出版社とウィンウィンの関係になれれば、それがベスト。後ろ向きと言われるかもしれないが、自分は電子書籍は商業誌に向かない作品や作家、少数の根強いファンのいる作家にこそ可能性を感じる。で、その点に関しては山路達也氏の『弾言』と『決弾』の電位書籍化の事例が参考になるかも。
2011-01-08 17:04:0959:両著作は、過去に出版社から出たものをiPhoneのApp Store用に電子化したものだが、電子化に当たって利益の一部を本の出版社に印税として払っているとか。これなら出版社はリスクなく利益が上がり、発売側は制作と販売の責任とリスクを負うが、その分の利益も多く得ることが可能。
2011-01-08 17:07:2960:例えば人気漫画家は原稿料を抑え新人は最低額を保証し、新書と文庫本は出版社に任せるが、電子書籍の権利だけは保持する、場合によっては電子書籍の売上から印税を出版社に払うというのならば、雑誌という場を維持しつつ、個人の利益と漫画文化の継続のため、双方にメリットがあるのではないか?
2011-01-08 17:12:09というわけで、はた迷惑な連続ツイートも60番と切りがいいところで終わりですm(_ _)m 文字制限があるTwitterでは、意を尽くせませんが、現役漫画家・これから目指す人・諦めかけている漫画家の、5%ぐらいには考えるヒントやきっかけになったら、嬉しいです。では仕事に戻ります。
2011-01-08 17:15:13