マスカレイド・オブ・ニンジャ #3
「イヤーッ!」スティールバイトが踏み込み、チョップ突きを繰り出した!もはやカラテあるのみ!オウガパピーは紙一重のスウェー回避、カンフー・キックを打つ!「ハイヤーッ!」「イヤーッ!」だがスティールバイトはこれを弾き、連続チョップ突きの反撃だ!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」 22
2015-09-12 01:19:28「ハイ!ハイ!ハイ!」オウガパピーは危険なチョップ突きを払い続け……反撃!「ハイヤーッ!」「イヤーッ!」弾かれる!近距離で素早い打撃が交わされるたび、互いの装束にまとわりついていたストリートの粉塵が飛ぶ!「ならばこれはどうだ、イヤーッ!」スティールバイトが構えを変えた! 23
2015-09-12 01:30:04これまでヤリめいて尖らせていた両手を手首で合わせ、指を鉤爪めいて強張らせる!そして横に引き裂くような構え!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」まるで這い回るムカデの脚のごとき斬撃!「ハイ!ハイ!ハイ!」かろうじて対応するが凌ぎ切れず、オウガパピーのニンジャ装束が裂かれ始める! 24
2015-09-12 01:36:11「見たかオウガパピー=サン!このムカデ・カラテの前に敵は無い!半殺しにした上で、セクトの法廷に引きずり出してやるわ!イヤーッ!」「グワーッ!?」爪に注意を向けすぎていたオウガパピーは、中段キックを腹に受けた!アブナイ!「ハイヤーッ!」連続バック転を打って仕切り直しをはかる! 25
2015-09-12 01:39:45「もう後がないぞ、バカめが!」然り!オウガパピーの背後には隣のビルの壁!横はストリートで足場がない!スティールバイトは突き進み、鳩尾目掛けとどめのムカデ・ケンを繰り出した!「イヤーッ!」だが、オウガパピーは最後のバック転後に、オメーンを変えていたのだ!「ハイヤーッ!」 26
2015-09-12 01:45:52「何!?」スティールバイトはあまりの速さに目を見張った!ムカデ・ケンは背後の劣化コンクリート壁に突き刺さり、オウガパピーはもうそこにいなかった!「ゴースト・オメーン!」彼は腕で顔をワイプして変面するやいなや、背後の壁を蹴り、驚くべき速さでストリート側に跳躍していたのだ! 27
2015-09-12 01:50:18「逃げたか!?」スティールバイトは爪を引き抜き、敵を追うべく横を見た!だが……否!彼はまるで上空から見えぬワイヤーに釣られているかのように円弧を描いて背後へ回り込み、回転連続キックを繰り出したのだ!カンフーカラテの奥義、ゴーストリープ・キック!「ハイヤーッ!」「グワーッ!」 28
2015-09-12 01:56:15「ハイヤーッ!」「グワーッ!」スティールバイトは側転を打ち体勢を立て直す!「何だこのカラテの切れは……!まさかモータル相手に力をセーブしていたとでも……!有り得ん!」「ハイヤーッ!」「グワーッ!」オウガパピーは畳み掛けるように目まぐるしい変面を行った!「オウガ・オメーン!」 29
2015-09-12 02:00:42「イヤーッ!」「ハイヤーッ!」「グワーッ!」オメーンが変わるたびに、カンフースタイルが変わる!スティールバイトにとって悪夢めいた体験だ!「バカな!」「ハイ!ハイ!ハイ!ハイヤアーッ!」そしてガードを払い除け必殺のジェットキック・アッパーがスティールバイトの顎先に…決まった! 30
2015-09-12 02:04:00「グワーッ!」敵は斜め上方に吹っ飛び、隣の建物の屋上へ十数メートル落下。住民の薄汚い洗濯物干し竿を折りながら、後頭部を痛打した!「ア……ア……」痛烈なカラテで全身が痺れ、動かぬ。インガオホー!ブラックメタリストを殺さず手加減した事で、敵はオウガパピーの力量を読み誤ったのだ! 31
2015-09-12 02:14:35「セクト……報告を…」スティールバイトは横に転がったIRC端末に指を這わせ、操作しようとする。だがオウガパピーが飛び降り、それを踏みつぶして破壊した。表情読めぬ恐ろしいチャイニーズ・オメーンの男は、敵を睨み下ろした。「話せ」「わ……解った……。殺さないでくれ……お願いだ…」 32
2015-09-12 02:19:42「それは貴様の態度次第だ」オウガパピーは敵の胸を踏みつけ、威圧的に言った。「解った……話す……話すよ……へへへ、俺も死にたかねえんだ……。こんなくだらねえミッションのせいで死ぬなんて、まっぴらごめんだぜ……。ああ、ドクヘビ・サークルは俺たちのコマさ」スティールバイトが吐く。 33
2015-09-12 02:28:10「目的は何だ」「……へへへ、何てこたあねえ……カネだよカネ……。地上げ工作さ……それで……イヤーッ!」ナムアミダブツ!手の内を明かしながら相手の隙をうかがっていたスティールバイトが、ついに奥の手を放った!手首と指のスナップを使い、鉄輪爪を飛ばしたのである!「グワーッ!?」 34
2015-09-12 02:36:31両目と喉を狙った鉄輪爪の指弾を、オウガパピーは辛うじて両腕でブロックした!だが拘束がおろそかになる!「とんだお人好しのイディオットだぜ!イヤーッ!」スティールバイトは敵の足を払って立ち上がり、残った左手の鉄輪爪で、仰向けに倒れたオウガパピーの胸を狙った! 35
2015-09-12 02:43:10「イヤーッ!」「ハイヤーッ!」「グワーッ!」だがオウガパピーはネックスプリングで起き上がり、この卑劣な一撃を蹴り返した!サンズ・リバーへの門が一瞬開いた事で、ジェット・ヤマガタの脳にニンジャアドレナリンが湧き出る!「ハイヤーッ!」「グワーッ!」「ハイヤーッ!」「グワーッ!」 36
2015-09-12 02:46:28「ま、待ってくれ!オウガパピー=サン!」だがもはや怒りのカンフーカラテ連携は止まらぬ!「ハイヤアアアアアーーーーーッ!」骨を砕くダブル・オウガ・ポン・パンチだ!「グワーーーーッ!」痛烈!ワイヤーアクションめいて後方へと弾き飛ばされ、壁に叩き付けられて爆発四散!「サヨナラ!」 37
2015-09-12 02:51:04オウガパピーは敵の爆発四散痕を確かめるべく歩み寄った。ニンジャの死体はもはや、跡形もなく消え失せていた。まるで初めから、何も存在しなかったかのように。だが彼は本能的に解る。ニンジャは死ぬと爆発四散するのだと。彼は降り始めた重金属酸性雨の中、己の握り拳をしばし見つめていた。 38
2015-09-12 02:57:32ニンジャを殺した。むろん、ヤマガタの人生の中で初めての経験だ。だが幸か不幸か、彼の胆力は既にニンジャのそれになっている。踏み越えてはならぬ一線ではないかと恐れていた良心の呵責など……実際微塵も無かった。むしろ、清々しささえあった。全身を、勝利とカラテの喜びが駆け巡っていた。 39
2015-09-12 03:01:01「ストリートを守り、アクションスターの正体もバレなかった。おい、完璧だ」ヤマガタはいい気分だった。己には力がある。今までセーブしてきたが、この力をむしろ、もっと積極的に使うべきでは、と。……だが不意に、冷静になった。「おい待てよ、何で映画スターがそんな危険な橋を渡るんだよ」 40
2015-09-12 03:08:44オウガパピーは上空を飛ぶマグロツェッペリンを見上げながら、そう独りごちた。ツェエペリンの腹に吊り下げられた大型プラズマモニタには、気取ったサングラスと光沢のあるジャケットで映画番組のインタビューに答える、ジェット・ヤマガタの巨大な顔が映し出されていた。 41
2015-09-12 03:12:26不意に、オウガパピーの装束が、バカバカしい映画撮影の小道具じみたもののように思えてきた。暗い路地裏へと飛び降り、誰にも見られることなく装束を脱ぐと、彼は完全にジェット・ヤマガタに戻った。そして真っ先に、ユカリフォンとショウのことが気になった。 42
2015-09-12 03:15:24ストリートはまだ小規模な混乱が続いていたが、あとはマッポの到着で事態は収束するだろう。(まったく、俺はまだまだ未熟だな。オウガパピーはこれっきり、お蔵入りだ。危ない橋はもう御免だ)ヤマガタは心の中で独りごちながら進んだ。(ニンジャが何だ、アクションスターのほうが最高だろう) 43
2015-09-12 03:23:47パックド・スシめいて混雑した大通りを抜け、ヌードル店「竹」に帰り着く頃には、もう装甲シャッターも上げられ、客の大半は家路についていた。ノーレンをくぐり店内に入ると、奥の席にはショウもいた。出て行った時と何も変わらぬヤマガタの姿を認めると、ユカリフォンは安堵の笑みを浮かべた。 44
2015-09-12 03:31:53「なんだ、心配してみりゃ、ショウ=サンはここか?俺は結局ひどい混雑に捕まって、立ち往生だった」ヤマガタが肩をすくめた。「アイヤー、ヤマガタ怪我してないよ、本当に本当に良かったよ」ユカリフォンは少し涙ぐんでいた。ショウは机の上にブッダ像を置き、まだ白昼夢を見ているようだった。 45
2015-09-12 03:40:00ヤマガタは席につき、そのまま残してあった自分のソウルフードを食べた。ユカリフォンは冷めたフライド・ライスを炒め直し、彼の前に置いた。客はもう、ショウとヤマガタだけになっていた。「そうだ、ユカリフォン」ヤマガタは店を出る前に言いかけていた言葉を思い出した。「渡したいものがある」46
2015-09-12 03:48:48