フォロウ・ザ・コールド・ヒート・シマーズ #4

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

通信機から詰問口調の声が漏れ聞こえる。ユージも声を荒げた。「だから俺だって知らねえよ!レーサー無事!結果オーライ!ッたく……ああ?知らねえよ!起こってから考える事だろ!冗談じゃねえ!」通信強制終了!ユージは再度ラッパ飲みし、呟く。「そんな事あってたまるか。シャレにならねえよ」44

2015-09-16 22:29:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガオオオン!木の葉と枝とバイオ鶏の羽を撒き散らし、ホット19とネズミハヤイは同時に藪から飛び出した。右手に濁流、左手にゴツゴツした断崖斜面を見る、ゆるやかにカーブした地形だ。左手の斜面は即ちフジサンの麓なのだ!「ヨー、こちらネズミハヤイDⅢ、デッドムーン」「こちらホット19」45

2015-09-16 22:38:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「さっきの出来事、どう考える」「知ったこっちゃない!どうでもいい」「とにかくアンタらも体験したッて事で間違いないな」「……ファック。どうせ蜃気楼か何かさ。樹海なんて文明人の居場所じゃないんだ。理解したいとも思わないね。それより……」「ああ、レースだとも」デッドムーンは頷いた。46

2015-09-16 22:40:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

現座、位置関係はほぼ並走、左の斜面側にネズミハヤイ、右側にホット19である。右手の川は実際流れが速く、ときおり対岸ではバイオ熊が前足でバイオサーモンをハントするさまが垣間見えた。「バイオサーモンをゲットしたレーサーに5000万ポイント」フラストミチのミッションだ。両者、無視。47

2015-09-16 22:53:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバーッ!」次の瞬間、対岸のバイオ熊を、走り込んで来た巨大な質量が轢き殺した!「イヤーッ!」助手席から上半身を乗り出したチョンマゲの男が投げ縄を放つと、死んだバイオ熊が捉えていた極彩色のサーモンを締め上げ、一本釣りめいて車内に引きずり込んだ。ワザマエ!サイバギーである!48

2015-09-16 22:57:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「エビで鯛を釣る、ミヤモト・マサシのコトワザどおりの展開ですぜ!」従者ドーシンはサーモンの首骨をカラテで折ると、主君サイサムライにサムアップして見せた。「コイン一枚が足りずにサンズ・リバーが渡れない、とも言いやすね」ドーシンは更に付け加えた。「でかした」サイサムライは誉めた。49

2015-09-16 23:00:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドーシンのサイバーサングラスが不穏に「殺す気」というLED漢字を明滅させる。彼は濁流の向こう、並走する二台を見ながら舌なめずりした。彼らの岸がネズミハヤイ達よりも高い位置にある。攻めるには好機だ。「次はマン・ハントと行きやしょうや……」「しばし待て」サイサムライは冷静だった。50

2015-09-16 23:06:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「でもネズミハヤイ野郎の助手席にニンジャスレイヤーはいやしません!」ドーシンは不満げに訴えた。「理由は知らねえがニンジャがいねえなら楽勝……」「待てと言ったぞ」サイサムライのUNIXアイが恐ろしげに光ると、ドーシンは身を縮めた。サイサムライはカラテ感知器スキャン中なのだ。51

2015-09-16 23:11:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

これは超高度テクノロジーの産物であり、悪の賞金稼ぎであるサイサムライならばこそ手にできる代物だ。「よし。周辺地形にもニンジャの潜伏は無い」「どこかでオッ死んだんだな!行やしょう!」「待て」サイサムライはモニタを目で追う。……キリング・マキのミッションが上がった!「行くぞ」52

2015-09-16 23:21:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カーブ到来!しかしここでサイサムライとドーシンは同時にデュアル運転システムのアクセルを踏み込み、サイバギーは急加速した!ゴウウン!サイバギーは濁流を飛び越え、そのまま斜めにネズミハヤイとホット19へ襲い掛かった。KABOOM!その瞬間ホット19はロケット加速!体当たりを回避!53

2015-09-16 23:26:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAAASH!「グワーッ!」デッドムーンはネズミハヤイの横腹に大質量の体当たりを受け、呻いた。一瞬の交錯!それまでホット19の車体で死角になっていた事もあり、この体当たりを避けられなかった。ホット19の窓から腕が突き出し、挑発的なバッドサインを残して、彼らを尻目に更に加速!54

2015-09-16 23:30:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

モニタに表示されている装甲ゲージの色が緑から黄色に変わった。「こいつはうまくない……」デッドムーンは呟いた。左は急斜面。そして右、体格差の激しいサイバギーが再び無慈悲な幅寄せを行う!SMASH!SMASH!「非力な運び屋野郎は死にくさるがいいぜ!」ドーシンが窓越しに挑発! 55

2015-09-16 23:33:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デッドムーンはグリップを維持しながら、「ベンハ」と書かれたボタンを押した。シュイイイ!ホイールから鋭利な側面スパイクが飛び出す!ギャリイイイン!ギャリイイン!ギャリギャリギャリギャリ!胸の悪くなるような金属摩擦音が鳴り響く。サイバギーもまた側面スパイクを飛び出させたのだ! 56

2015-09-16 23:37:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「このまま圧し殺し、敵を潰して、しかもポイント重点!キリング・マキさまさまよ!俺らは二倍旨い飯にありつくって寸法、つまりレースの成果は百倍よーッ!」ドーシンはサイバーサングラスに悦楽に歪んだ目のLEDアートを表示させて挑発した。「攻撃を受けています」怜悧な非情マイコ音声!57

2015-09-16 23:41:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デッドムーンはハンドルを握り込んだ。試練の時か。だがデッドムーンにとって、この危機的状況は経験した中のワーストではない。彼は「粗茶」ボタンを押した。「客も無いのに、俺も堕ちたな」デッドムーンは無感情に呟き、震動する車内でサービスオカキを食べ、マッチャで流し込んだ。58

2015-09-16 23:47:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

冷たい熱の揺らぎを辿れ……不意に思い出されるは、彼の師の座右の銘。ナンセンスなハイクの類いと彼は断じていたが、今はその意味するところが多少わかった気がしていた。彼はブッダコスモスのテープを挿し込み、再生ボタンを押す。ギュウイーン……ブッダコスモス……ユーアーインザスペース。59

2015-09-16 23:54:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サスペンションで吸収しきれぬ震動が彼を絶え間なく襲う。防音の車外ではネズミハヤイの悲鳴が鳴り響いていよう。サイバギーが微かに離れた。決定的な体当たり攻撃の先触れだ。デッドムーンは奥歯を噛みしめ、レバーに手をやった。……SMAAAAASH!ネズミハヤイは左に押し出される!斜面!60

2015-09-16 23:56:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「取ったりィー!」ドーシンが勝鬨をあげる!ネズミハヤイは斜め下から押し出され、バンクで横転しかかる!ナムアミダブツ!だがその瞬間ネズミハヤイの腹部スプリングが起動した!空中でキリモミ状に一回転したネズミハヤイは……サイバギーの真上におおいかぶさるように落下した!ゴウランガ!61

2015-09-17 00:00:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「バカナーッ!?」ドーシンがサイバーサングラスに「不満な」の文字を点灯させた。「チィーッ」サイサムライはギアを切り替え、この危機に対処しようとする。メキメキと頭上が音を立てる。ドーシンが下から天井部を押さえつけた。「お、押し潰されやしませんか!?何てことをしやがる野郎畜生!」62

2015-09-17 00:04:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「運転しておれ!」サイサムライが一喝し、抜刀!「サイサムライケン」UNIX音声が起動を告げる。サイサムライは真上にカタナを向け、力任せに突き上げる!「イヤーッ!」天井を貫く刃!ナムサン!だが、見よ!車体ごと下から串刺しにされる寸前に、ネズミハヤイはサイバギーの前に走り降りた!63

2015-09-17 00:07:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なかなか楽しい体験だったぜ……だが一番とは言えない」デッドムーンはミラーに向かって呟いた。車体にかなり大きなダメージを受けたとおぼしきサイバギーは後部から黒煙を噴き上げ、もはや加速するネズミハヤイにキャッチアップできない。キャバアーン!不意に三億ポイント加算された。64

2015-09-17 00:13:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「感動したからポイント進呈だ!」キンキー・コウイチは股割りしながら腕組みし、歯を見せて笑った。「感動には惜しみない投資を。それが僕の帝王学さ!ドライ・ノー。ウエット・ウエルカム。それが哲学。そこにマネーの流れが生まれる!」「含蓄がある。まあポイント用途は自由」ユージが答えた。65

2015-09-17 00:16:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブッダコスモス……ユーアーインザスペース。やがてホット19の車体が見える。サンライザーは……サンライザーはまだ見えてこない。デッドムーンはホット19に徐々に近づく。サンダリイ・ライラが振り返り、泡を食ってホット・チックに発破をかける。ブッダコスモス……ユーアーインザスペース。66

2015-09-17 00:21:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デッドムーンの視界は、ニューロンは、熱を帯び、しかし覚めている。好ましい世界だ。サイバネ腕の先端までコントロールが染み渡り、エンジンの回転とシンクロし、同時に、それを俯瞰的に眺める覚めた自我がある。ネズミハヤイはホット19を捉える。スリップストリーム。風の道を作ってくれる。67

2015-09-17 00:25:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブッダコスモス……ユーアーインザスペース。ネズミハヤイはホット19の真横に躍り出る。「ありがとうよ、お友達」窓越しにデッドムーンはホット・チックとサンダリイ・ライラを見る。前方にサンライザーの光り輝く機体が見えてくる。あれが首位。チェックポイントは近い。 68

2015-09-17 00:28:24