渡辺真也氏の連ツイ「デヴィッド・ハモンズ理解のために」
(ハモンズ1)田中功起さんがTwitterにて、David Hammonsの「Bliz-aard Ball Sale」と、つげ義春の無能の人に出て来る「石を売る」を並列して述べており、少し思う所があったので、ツイートしてみたい。
2011-01-10 08:35:08(ハモンズ2)David Hammonsの作品を語る時に抑えなくてはならない点の一つに、彼がニューヨークの黒人アーティストであり、ブラックパワー・ムーブメントに関わっていた、という点がある。それを踏まえなくては、彼の作品における意図を見落としてしまいかねない。
2011-01-10 08:36:56(ハモンズ3)ポジネガ反転したアメリカ国旗「African-American Flag」や、ハーレムの床屋で取れた髪の毛を石に接着した彫刻作品「Haircut」、黒人活動家のジェシー・ジャクソンを白人にした作品「How Ya Like Me Now?」などが、その好例だろう。
2011-01-10 08:37:52(ハモンズ4)私が好きな作品の一つに、黒人の子供たちがバスケットボールばかりに夢中になって勉強しないから、と言って、近所のバスケットコートのゴールを10m以上の高さに引き上げてしまい、バスケットボールのゲームを無効化させてしまった作品「Higher Goals」がある。
2011-01-10 08:38:58(ハモンズ5)ただ単に、子供たちがバスケットボールをやれなくなったばかりでなく、そこにハモンズから黒人の子供たちへの、「より高い人生の目標(Higher Goals)を考えてみてはどうだろう」、という提案が理解できた時、初めて感動がある。
2011-01-10 08:39:24(ハモンズ6)この様に、ハモンズの作品の理解の為には、アメリカの黒人社会に関する理解が必要となる。そこで、Bliz-aard Ball Saleを考えてみよう。 http://bit.ly/ffufCW
2011-01-10 08:39:46(ハモンズ7)サイズの異なる雪玉を、値段を付けずに販売する。つまり、鑑賞者は、そのサイズを見極めて、自分自身が値段を付けなくてはならない。この作品の意図は、どんなものでも商品になってしまう、という理解だけで、本当に良いのだろうか。
2011-01-10 08:40:32(ハモンズ8)黒人男性が、路上にて、値段を付けずにサイズの異なる真っ白な雪玉を販売している。それを見たマジョリティに当たるイーストビレッジの白人たちは、一体どんな反応をしたのだろうか。そこまで考えなくては、この作品を正確に評価することは困難ではないか、と私は考える。
2011-01-10 08:41:29(ハモンズ9)東欧移民の子孫として工業都市ピッツバーグに生まれたウォーホルが、アメリカの「貧しさ」を描く為に用いたシルクスクリーン製のキャンベルスープ缶、黒人の「貧しさ」を補助線としたハモンズのSnow Ballは、手法として並列できると考える。
2011-01-10 08:43:36(ハモンズ10)さらにサイズの異なる真っ白な雪玉たちは、物量的な大きさと物の値段、という判断よりも、様々な色の小箱たちが音を奏でるPete Seegarの名曲「Little Boxes」を参照した方が適切ではないか。http://bit.ly/co3soK
2011-01-10 08:47:11(ハモンズ11)日本人がハモンズの作品を正確に理解することは、つげ義春の「無能の人」に留まらず、アメリカ人がフィッシュマンズの「宇宙・日本・世田谷」や、ホフディランの「多摩川レコード」のニュアンスを正確に理解するのに似た困難がある。
2011-01-10 08:47:39(ハモンズ12)実力のある表現者は、できる限り少ない手法で表現を実現しておりその実力に対面した際に、鑑賞者は作品理解ができず、困難に陥ることがある。それが、アートの面白い所の一つではないか。
2011-01-10 08:50:34