マスカレイド・オブ・ニンジャ #4

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤマガタは驚いた。確かに以前からも、ヤサキとはライバルを越えた絆を感じていたが、プライドの高い彼がここまで腹の内を吐露したのは初めてだったからだ。「ああ」ヤマガタは頷いて笑い、握手した。それが自分が負かした男への最大限の敬意だと思われた。「俺は本物のアクションスターになるさ」22

2015-09-18 23:06:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あんたの分まで稼いでみせる」二人は肩を抱き合った。「ああ、図太く生きろよ」「そしてヤサキ=サン、あんたをいつか俺の映画に呼んでみせる」「どんな役だ?」「暴漢1だ」「ふざけるな、クソ役だ」「出演が嫌なら、俺の運転手は?」「ファック・ユー」そして二人は背中を叩き合い、笑った。 23

2015-09-18 23:17:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヤマガタ=サン、間もなく出番ドスエ」廊下からオイランの声。「時間か」ヤサキは腰の痛みも収まったと見え、立ち上がり、ジャケットを羽織り直した。どこか名残惜しそうに。「いつかサケだ。俺はしばらくオンセン旅行に出る」「いつ発つんだ、ヤサキ=サン?」「明日だ」ヤサキは肩をすくめた。24

2015-09-18 23:25:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤマガタは短く思案し、言った。「なあヤサキ=サン、なら今夜、後で飲まないか?いいヌードル店があるんだ。このイベントはあと3時間もあればヒケる。パーティーは出ない」「ヌードル店か」ヤサキはおどけた顔を作り、往年の暗殺者トウゼンめかして笑った。「よかろう、お前の命も今夜限りだ」 25

2015-09-18 23:33:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二人は笑い合い、憎まれ口を叩き合いながら、控え室から出て別方向へと歩いた。メイクをし直す必要がないと解り、美容師オイランはほっと胸を撫で下ろした。「メインステージはこの上だっけ?」ヤマガタは早足で進んだ。「アッハイ」オイランが小走りについて来る。「スミマセン、あとこれを」 26

2015-09-18 23:36:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「よし」ジェット・ヤマガタはオナタカミ社製の最新型サイバーサングラスをかけ、オイランのほうを向いた。「似合ってる?」「ハイ、スゴイです」ステージが近くなり、スタッフや他の出演者らが目立ち始めた。ヤマガタは今回のイベントのゲストの一人だ。彼はまだ真のアクションスターではない。 27

2015-09-18 23:38:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

眩しい極彩色のスポットライトを浴び、スタジアム席から浴びせられる凄まじい音圧の中へ進む。ジェット・ヤマガタの名前がコールされ、クールな最新型サイバーサングラスをかけた彼の笑顔が後方の大型ディスプレイに映し出される。協賛メガコーポの社章とともに。ジェット・ヤマガタは手を振った。28

2015-09-18 23:43:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サイバー銅鑼が響き、チャイナドレス姿のオイランドロイド・アイドルデュオがステージ上へと高速リフト垂直射出された。とてつもない歓声。「次のコーナーは、カンフーハプニング、キックでポン!」ナレーターが叫ぶ。二体がヤマガタを挟みコミカルに歌い始めると、笑い声と歓声が会場を包んだ。 29

2015-09-18 23:51:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……今期中にオールド・カメ・ストリートを地上げし、一帯をオナタカミ社のプラントに変える、そのような手筈であったな……?」禍々しい声が室内に響き、奴隷オイランたちが怯える。コブラ・リアルエステート社のビル最上階には邪悪なアトモスフィアが漂っていた。 31

2015-09-24 13:47:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

壁は金箔塗り、室内には噴水と日本庭園、紅葉したモミジの木、スシが盛られた大テーブル。壁には「非道さ」「コブラ不動産」「ヤクザ」「蛇」などのショドー。ハイウェイを挟んでオールド・カメ・ストリートを睥睨するこのビルこそは、まさにディストリクトの諸悪の根源、毒蛇どもの巣である。 32

2015-09-24 13:51:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイ、ディスポイラー=サン。ですが、報告いたしました通り、オウガパピーなるニンジャの邪魔が入り……」大テーブルの対面から、もうひとつの邪悪な声が応えた。無論、この男もニンジャである。白カンフーニンジャ装束。狡猾な切れ長の目。頭髪は黒く長い。唇に刃物の傷痕。両手には白手袋。 33

2015-09-24 13:59:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「サーペンタイン=サン、そ奴の名は、どうにも儂を不愉快にさせる」毒蛇の首領が唸った。彼の名はディスポイラー。血も涙もない男であり、ニンジャソウル憑依者となって自らのヤクザクランとその所有会社を乗っ取った。その背には、禍々しい4本のペナント軍旗が交差するように背負われている。 34

2015-09-24 14:09:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スティールバイト=サンのIRCアクセス履歴を見る限り、このニンジャに殺害されたものと……」サーペンタインはハンドヘルドUNIXを操作しながら言った。ディスポイラーはサケを呷ると、エナジー珍味、大ムカデの姿焼きを頭から食いちぎった。「奴は我らスネイクピットの面汚しであった」 35

2015-09-24 14:18:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「この遅れによってオナタカミへの転売価値は下がっており、これ以上の労力は、コブラ社にとってコスト以外の何ものでもありません」スティールバイトが死んだ日から、既に2ヶ月近くが経過していた。以降、ストリートは襲撃を受けておらず、住民らは危機が去ったものと胸を撫で下ろしている。 36

2015-09-24 14:27:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スネイクピットと呼ばれる、このアマクダリ・セクト配下の小ニンジャ組織……彼らは何故、直ちにオールド・カメ・ストリートとオウガパピーへの報復を行わなかったのか?それは首領ディスポイラーが、近隣の油断ならぬアマクダリ小ニンジャ組織テリトリーを巡り、セッタイを受けていたからだ。 37

2015-09-24 14:33:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼はヤクザであり、メンツを重んずる。ディスポイラーはテリトリーをさらに広げようと画策しており、周囲の小組織を威圧してきた。そのような訪問中に、自らの支配領域でイージータスクな地上げが失敗し、ましてや所属不明の野良ニンジャにスティールバイトが殺されたと知られれば、どうなるか? 38

2015-09-24 14:41:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

答えは明白だ。ディスポイラーは江戸時代のウォーロードめいた狡猾さで全てを隠蔽し、2人の配下に報復の準備を整えさせていた。そして昨日、彼は遂にこの城へ帰還したのだ。「カネの問題ではない。オールド・カメ・ストリートは、儂の寛容さの閾値を超えた。踏みにじり、ジゴクを味わわせる」 39

2015-09-24 14:48:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウオーッ!」突如フスマが蹴破られ、フランベルジュを構えた興奮状態の男が入室!「「アイエエエエエエ!?」」奴隷オイランが失禁!男は背中から湯気を立ち上らせ、粗い息を吐く!その逞しい肉体は病的に白く、頭髪は黒く波打ち、顎には野蛮な長い黒髭。アノヨのヴァイキングめいた顔つきだ! 40

2015-09-24 14:56:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

男は怒りをこらえ切れぬように地団駄を踏んでから、フランベルジュを振り回し、手近にあった見事なカエデの幹を切断!「ウオーッ!」さらに大テーブルと大理石床に剣を叩きつけ、まだ収まらず、哀れな奴隷オイランの首を撥ねた!「ウオーッ!」「ンアーッ!」サツバツ!噴水めいた血飛沫が飛ぶ! 41

2015-09-24 15:03:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

何たる狼藉!だが大テーブルにつく2人のニンジャは眉ひとつ動かさず、サケを呷りながら、この男の行動を見ていた。「ハアーッ!……ハアーッ!……ハアーッ!」上半身裸、下半身を漆黒のハカマに包んだその狂戦士の如き男は、ようやく息を整え、ディスポイラーの横の椅子にどっかと腰を下ろす。 42

2015-09-24 15:08:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ようやく戻ったなディスポイラー=サン!あと一日遅ければストリートを俺ひとりで廃墟に変えた」男は歯を剥き出しにして笑んだ。「いきり立っているな、ホワイトパイソン=サン。スネイクピットの義兄弟よ」「サケだ」「よかろう」二人は赤いチャワンを腕組み交差させ、同時にサケを乾かした。 43

2015-09-24 15:16:56