黄昏町(柊)五十八日目

柊 @hiiragi_r_t_d

【五十八日目】 【魂18/力13/探索5】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、触角(探索+2) #hollytk

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「あの……どいていただけますか、貴方様」 「む……ああ、すまない巳穂。すぐに」 目覚めた私と巳穂は、トンネルの出口近くに折り重なるようにして眠っていた。 私はうつ伏せに横たわる巳穂の上から体をよけると、巳穂に手を貸して助け起こす。 01 #hollytk

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「さあ、今日はどこに行かれるのですか？」 いつもと変わらない笑顔を見せる巳穂に、私はふと問う。 「巳穂はこの町に来た事を、後悔していますか？」 ……私は何を聞いているのだ。この町に来た事を後悔しない人間が、いる訳がない。私ですら少しは後悔しているのだ。 02 #hollytk

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巳穂は少し逡巡したあと、うつむきながら話し始めた。 「……私には、この町に来る前の記憶がありません。名前も、生まれも家族も。年齢も正確には分からない」 息を呑む私に、巳穂は笑いかける。 「そんな顔をなさらないでください。過去がどうあれ、今の私は幸せですわ」 03 #hollytk

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「……すまない。辛い事を聞いてしまったね」 「いいえ、気にしておりませんわ」 巳穂は私の手を引く。 「そんな事より早く移動しましょう？日も沈んでしまいますわ」 「……巳穂、そっちは来た方向だよ」 「えっ」 「やれやれ。行こうか」 今度は私が巳穂の手を引く。 04 #hollytk

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「ごめんなさい……」 「誰だって欠点はある。気にしない事だ」 私達はどこかへと歩き始める。ここではないどこかへ。まだ見たことのないものを探して。 05 #hollytk

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私は大きな猿の死体の上に腰掛けていた。 「つまらないですね」 この猿に会うのも二度目。目新しい異形もなし。 「どうかなさいましたか？」 「いや、最近新しい異形を見かけなくなってね……趣味が捗らないのさ」 「それはそれは……では私の髪でも解剖してみますか？」 07 #hollytk

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思わぬ言葉に固まる私に向けて、巳穂が蛇髪を一匹するすると伸ばす。 「貴方様が異形の解剖を趣味にしている事は知っています……私の前だからといって、気を遣っていただかなくても良いのですよ？」 私は彼女の蛇髪を手に取り、観察しようとして……結局、手を離した。 08 #hollytk

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「やめておくよ」 「ですが、貴方様」 「一つ訂正。巳穂がどこから私の趣味を知ったのかは知らないけれど、私が好きなのは解剖ではないんだ」 欲しいのは血ではなく、知。まだ見たことのないもの。 「だから巳穂、一つお願いを聞いてくれないかな」 09 #hollytk

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「なんでしょうか」 「巳穂の話を、聞かせてくれないかな？」 「私の？」 「そう。なんとなくだけれど」 私は手招きをする。 「貴女の事が知りたいんだ」 「……うふふ、嬉しいです。貴方様、ずっとつれない事ばかりおっしゃるから。私てっきり嫌われたのかと」 10 #hollytk

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「そんな事はないよ。巳穂は私の」 「私、貴方様の娘のままは嫌ですわ」 聞きたくないとばかりに言葉をかぶせた巳穂は私の隣に座り、肩に頭を預ける。 「娘とか、異形とか抜きにして、私は貴方様と一緒にいたい。だから話しますわね。私が今まで何をしてきたのか。全て。」 11 #hollytk

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そして巳穂はゆっくりと語り始めた。彼女にまだ名前が無かった頃、黄昏の町を駆け抜けた『牙の少女』と『角の男』の二人組の話を。 12 #hollytk

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──────── 【五十八日目】 【生存】 【魂+1】 【魂19/力13/探索5】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、触角(探索+2) 13 #hollytk

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[町]息を荒げ、行く手を阻んだ怪物が、大きな耳を君へと向ける。君を探っているようだ。《力3以上で勝利【魂+1】、力2以下で死亡【魂-1/異形『獣耳(探索+2)』を入手】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #hollytk