黄昏町(柊)五十九日目

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@hiiragi_r_t_d

【五十九日目】 【魂19/力13/探索5】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、触角(探索+2) #hollytk

2015-10-02 23:24:45
@hiiragi_r_t_d

私は猿の死体に腰掛け、夕暮れに染まる空を見上げていた。 私の肩を枕にした巳穂がすやすやと安らかな寝息をたて、私はゆっくりと彼女の髪を撫でている。 蛇髪の一匹が私の指に巻き付き、頭をすりよせる。 蛇の喉をくすぐりながら、私は昨日の巳穂の話を思い返していた。 01 #hollytk

2015-10-02 23:27:01
@hiiragi_r_t_d

「確かに、娘と呼ぶのは失礼でしたね」 彼女は私よりもずっと長い時間を、この血濡れた町で生き抜いてきたのだ。 ……娘ではなく、同じ姓を名乗り、行動を共にする関係。 不意に腕の中の巳穂が身じろぎする。私の方へ倒れかかる彼女を受け止めた私は、彼女を抱きかかえる。 02 #hollytk

2015-10-02 23:30:51
@hiiragi_r_t_d

腕の中で眠る彼女。美しい白蛇の髪。その合間にのぞく絹のようなうなじ。はだけた胸元から覗く、柔らかな二つの膨らみが私の胸板に沿って形を変える。 不思議な紋様のあしらわれた浴衣に包まれた、すらりとした肢体。裂けた裾から覗く、真っ白な脚線美。 「いやいや、待て」 03 #hollytk

2015-10-02 23:33:41
@hiiragi_r_t_d

私は何を、何を考えている? 巳穂が無警戒に距離を詰めてくるのは今までにも何度もあったことだ。今更慌てたり、妙に意識する必要はない。はずだ!理由はない! そう頭では自分に言い聞かせながらも、私の視線は腕の中の巳穂から一向に離れようとしない。心臓が早鐘を打つ。 04 #hollytk

2015-10-02 23:36:17
@hiiragi_r_t_d

そっと巳穂を抱く腕に力を込めようとしたその時、私の耳に澄んだ声が飛び込んできた。 「あの……」 「は、はいっ!?」 何やら後ろめたいところを見られたような気がして私は声が上ずってしまう。 「一つ、お願いが」 トコトコと私の前に歩み出たのは、一匹の獣だった。 05 #hollytk

2015-10-02 23:39:27
@hiiragi_r_t_d

狐のようなその生き物は美しい白銀の毛皮を纏っていた。くりっとしたつぶらな瞳は深い青で、夕陽に照らされて輝いている。 ふぁさ、と柔らかな尻尾を振りながら彼女は提案する。 「毛皮をあげます。だから貴方を食べてもいい?」 06 #hollytk

2015-10-02 23:42:13
@hiiragi_r_t_d

なるほど。食べる事で私は毛皮の異形を得、目の前の狐は魂を得る。 「その毛皮、何かいい事が?」 「暖かいです。それから、水を弾きます」 「なるほど」 「それから、とても綺麗です」 狐は自慢げに毛繕いを始める。 「確かに」 07 #hollytk

2015-10-02 23:45:15
@hiiragi_r_t_d

「悪くないでしょう?」 小首を傾げて私を見る狐に、申し訳なさそうに告げる。 「申し訳ないのですが、今回はお断りさせて頂きます」 「……どうして?」 その毛皮の異形はとても美しいが、きっと私には似合わないだろう。それに。 「今はまだ、彼女と一緒にいたいので」 08 #hollytk

2015-10-02 23:48:26
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私の腕の中で、巳穂がごろりと寝返りを打つ。私は彼女の寝顔を眺めながら、少しだけ腕に力を込めて、彼女を抱き締めた。 「……なるほど。お邪魔しました」 つまらなさそうに地面に数回、たしたしとパンチを叩き込んでから狐は去っていった。 09 #hollytk

2015-10-02 23:51:22
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狐が去っていくのを見届けた私は、腕の中に目を落とす。 「さて、そろそろ起きてもらいたいのですがね」 昨日ずっと話していて疲れたのだろうか?巳穂はまだすやすやと寝息を立てている。 私は彼女をそっと寝かせ、立ち上がって大きく伸びをした。頬を軽く叩く。 10 #hollytk

2015-10-02 23:54:07
@hiiragi_r_t_d

心地よい風が火照った顔を冷ましてくれる。 私は頭を振り、極力先程までの感触を忘れようと努めた。別の事を考えよう。そういえば秘書の扇は元気にしているだろうか。随分長い間留守を任せてしまったから、帰ったら間違いなく文句の雨だろう。 「……よし、落ち着きました」 11 #hollytk

2015-10-02 23:57:28
@hiiragi_r_t_d

そうこうしている内に、後ろでもぞもぞと動く気配。 「貴方様……?」 「おはよう、巳穂」 巳穂に向けた私の顔は、いつも通りの笑顔のはずだ。 「……私、とてつもなく損をした気がしますわ」 「寝坊するとそういう気分になるね。そういえばさっき、白い狐が歩いていた」 12 #hollytk

2015-10-03 00:00:22
@hiiragi_r_t_d

「ええ!?それは残念ですわね……」 「だろう?だから明日からは早く起きようね」 「ええ、そうですわね。明日こそ貴方様より先に目覚めてみせますわ」 「まあ、頑張るといいよ」 何やら思いついたらしく含み笑いを漏らす巳穂を見ながら、私は考える。 13 #hollytk

2015-10-03 00:03:27
@hiiragi_r_t_d

私は、どうしたいのだろうか。目の前で笑う彼女と、これからどうするのか。 「どうすればいいのでしょうかね」 「何がですか、貴方様?」 「いや、なんでもないよ……なんでもない」 きっとその答えは単純なのだろう。しかしまだ、答えは出ない。 14 #hollytk

2015-10-03 00:06:15
@hiiragi_r_t_d

──────── 【五十九日目】 【生存】 【魂+1】 【魂19/力13/探索5】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、触角(探索+2) 15 #hollytk

2015-10-03 00:07:23
@hiiragi_r_t_d

[町]美しい毛並みの動物が、愛らしい目で君を見ている。「毛皮をあげます。だから貴方を食べてもいい?」《提案を受け入れるなら、君は戮され異形を得る【魂-1/異形『毛皮(水耐性、探索+1)』を入手】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #hollytk

2015-10-03 00:07:43