【ミイラレ!第十八話:町の神様たちのこと】(実況付き)
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「美味しいだろ、イナメのご飯は。仮にも豊穣の神様だからね」「仮にも、は余計です。晩御飯少なくするよ?」「あ、それは困る」緩いやりとりを繰り広げる神様たち。ひと段落つくのを待ってから、ようやく怜が口を開いた。「……ヒルメさん、イナメさん。今日の用なんですが」70 #4215tk
2015-10-11 20:21:02今度は神様たちも口を挟もうとせず、怜の言葉の先を促す。「この町に潜んでいる怪異について、お願いがあるんです」「怪異か」ヒルメがやや眉をひそめる。「特定の怪異、って考えていいんだよね」「ええ。一年前、学生三人を斬り刻んだ怪異をご存知ですか」「無論」71 #4215tk
2015-10-11 20:24:02間髪入れずにヒルメは答える。「あれは最近の怪異が起こした変事にしては最大級だ。我々が見逃すはずもなし」「では、もう正体も?」「近年に発生した、通り魔タイプの怪異だったみたいね」イナメが言う。そこで四季は眉をひそめた。「だった?なぜ過去形なんですか?」72 #4215tk
2015-10-11 20:27:02「すでに手打ちにしたからだ。君らの言う怪異はもはや存在しない」ヒルメの言葉に、二人は目を丸くする。「あたしの金烏にイナメの御狐衆が、件の怪異を討伐している。消滅には我々も立ち会った。……変事の犠牲になった人の子らには悪いことをしてしまったけどね」73 #4215tk
2015-10-11 20:30:02ヒルメの表情が沈痛なものとなる。四季は思わず怜と目を見合わせていた。先輩たちの不安は杞憂に終わった。そう見ていいのだろうか?「……とはいえ、ねえ。どうもキナ臭いのよ最近」イナメの溜息に、二人の意識は引き戻される。「何か起こってるんですか?」74 #4215tk
2015-10-11 20:33:04怜の言葉に、ヒルメが重々しく頷いた。「近年、怪異の数が緩やかではあるが増えてきていてね。ああ、先に言っておくと君のせいではないよ四季くん。君がこの町に来るよりも前から起こっていたことだし……何より、この町に限ったことじゃないんだ」四季は小さく目を見張る。75 #4215tk
2015-10-11 20:36:02「御二方、加えてお願いしたいことが」「協力してほしいって?構わないよ」あっさりというヒルメに、返って怜は鼻白んだようだった。神様が笑う。「正直なところ、こちらも人手が欲しい。この町だけに人員を割いてもらうわけにもいかないからね」「あ……ありがとうございます!」77 #4215tk
2015-10-11 20:40:16怜が勢いよく頭を下げる。四季も慌ててそれに倣った。微笑を浮かべたヒルメは、ついで四季の方に視線を移す。「君の方にも特別処置がいるね、四季くん」「え!?えーと」「君というか、君の周りの怪異だな。変にいざこざになっても困るだろ?」あ、と彼は声を上げる。78 #4215tk
2015-10-11 20:42:20「ひとまず、そうだな……何か許可証のようなものを作ろうか。こちらの手勢が誤認しないようにね。あと君自身に頼みたいこともある」「お、俺にですか」居住まいを正した四季に、しかめつらしいヒルメの視線が注がれる。「週に一度、ここに来てそちらの百鬼夜行の報告を行うこと」79 #4215tk
2015-10-11 20:45:08報告。その言葉を聞いて、四季はにわかに緊張する。彼の緊張をほぐすように笑ったのはイナメだ。「そんな堅苦しくしなくてもいいの。この人、単に四季くんとお喋りしたり遊んだりしたいだけだと思うから」「……はい?」彼は思わず間の抜けた声を上げる。ヒルメが顔をしかめた。80 #4215tk
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