1989年の朝日新聞のフランスでの日本アニメに関する記事と、フランス現地での日本アニメバッシングについて

記事を書く人によってスタンスが違ってくるという例。 (2018/06/29) ワンワン三銃士について3DCG版映画を含めて情報を追加・修正。 (2016/03/21) 『水曜日のアニメが待ち遠しい』(トリスタン・ブルネ)書評記事を追加。 続きを読む
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朝日新聞1989年8月家庭面『ヨーロッパ子ども考』より

MUNEGASHI Isako @isako134

さて、1989年5月に朝日新聞は企画・解説記事の載る面でフランスへの日本製アニメや特撮の進出をほぼ否定的に扱ったが、8月の家庭面ではそれとは違ったスタンスでフランスの状況を取り上げた記事が登場する。『ヨーロッパ子ども考』という8回にわたる連載記事の一部がそうで、鈴木繁記者による。

2015-10-11 22:24:19
MUNEGASHI Isako @isako134

鈴木繁氏は現在は朝日新聞解説委員で、WEBRONZAにて執筆した記事からも、80年代においてもアニメを好んでいることがわかる。 webronza.asahi.com/authors/201108… そのため、フランス革命200年の連載記事とは違い、現地の子供の事情をよく理解した上で書いている。

2015-10-11 22:32:35
リンク WEBRONZA(ウェブロンザ) 鈴木繁の記事一覧|WEBRONZA - 朝日新聞社の言論サイト 朝日新聞社の言論サイト、WEBRONZA(ウェブロンザ)の鈴木繁の記事一覧です。日本、そして世界で日々起きるニュースを踏まえ、編集部が「注目のテーマ」を設定。社内外で活躍する第一線の筆者陣による迅速な解説や独自の論考を多数掲載します。
MUNEGASHI Isako @isako134

『ヨーロッパ子ども考』は1989年8月8日からで、第1回はGu-Guガンモをパリにてフランス語版で再び見た鈴木記者の驚きから始まる。当時の日本アニメ増加はテレビが国営3局のみから、民営化含め無料民放局も合わせて5局になったことで、すぐ安く放送できる番組が求められたためでもあった。

2015-10-11 22:47:34
MUNEGASHI Isako @isako134

5月の記事同様に東映・東映動画作品やアタッカーYOU!の人気、ラ・サンクの罰金、眉をひそめる大人には触れているが、こちらの記事はキャプテン翼や小公女セーラの放映歴や、働きに出る母親の増加で子守りとしての需要があることにも言及した。国営局のみの時代は午前の放送自体少なかったという。

2015-10-11 22:59:35
MUNEGASHI Isako @isako134

とうに朝の子供番組が普通に存在していた日本と、1980年代前半までは午前中の放送時間が少ないフランスとでは子供番組やテレビアニメの制作状況が違いすぎた。フランスの親層はアステリックスのアニメ版なら安心して見せられるというが、劇場用作品なのでそう多くは作れず、数としては不利である。

2015-10-11 23:04:56
MUNEGASHI Isako @isako134

《だから、アニメ論議は、いつの間にか、子どもを置きざりにして、経済や思想、教育や女性の社会参加など、大人の土俵に移ってしまう。フランスでは、日本の親たちが「いったい、どこがいいんだか」と、いつも悩まされる「子どもならではの楽しみ」が、存在していないかのようだ。》と8日分は締めた。

2015-10-11 23:12:06
MUNEGASHI Isako @isako134

1989年8月9日の第2回は、聖闘士星矢が玩具売上でもフランスでヒットしたことを取り上げ、バンダイ・フランスのみでなく、TF1での放映番組である『クラブ・ドロテ』を製作したABプロダクションにも取材した。スウェーデンと西ドイツは偏見が厳しいので進出しづらいとも同プロは答えている。

2015-10-11 23:22:54
MUNEGASHI Isako @isako134

8月10日の第3回はアステリックスのテーマパークと東京ディズニーランドを例に出し、前者では140cmないとジェットコースターに乗れないという条件の厳しさを取り上げた。なお、同日の夕刊の時点であの事件報道が激化した影響なのか、翌11日の連載は休みで、12日朝刊に第4回が掲載された。

2015-10-11 23:41:52
MUNEGASHI Isako @isako134

第4回は1989年はじめから春にフランスで子供の間で大流行し、絵柄や内容の下品さで問題になった『クラドス』カードの話題。日曜をはさんで14日は国を移して、「子どもの食事や娯楽が乏しい」と記者が評したイギリスが、10代前半でも酒どころか麻薬にも容易に手を出しやすい状況だと報告した。

2015-10-11 23:49:18
MUNEGASHI Isako @isako134

15日は《暴力描写には神経質なのに、ドラッグに寛容――ヨーロッパの社会は、そんなふうに見えてしまう。スイス北部、西独とフランスの国境に近いバーゼルで、その印象は一層強くなった。》と、テレビの暴力表現や店の派手な広告には厳しく、HIV血液感染防止のため大麻には寛容なスイスに触れた。

2015-10-11 23:55:42
MUNEGASHI Isako @isako134

16日はフランスに話が戻り、女子高校生のファッションで地元ブランドではないベネトンが進出しているという。17日の最終回はズバリ『かわいい』がテーマで、スペインやイタリアはサンリオ系を含めてそのようなものが受け入れられやすいと述べたが、ヨーロッパを制圧するのは難しいと連載を締めた。

2015-10-12 00:09:37
MUNEGASHI Isako @isako134

ハローキティがあるかどうかがヨーロッパにおける『かわいい』の進出基準として鈴木記者は探していたが、執筆当時例外だったフランスですらその後しっかり進出してしまうのである。家庭面でのヨーロッパからの記事として、8月半ばでは異彩を放っていたが、同時期に社会面ではアニメを危険視していた。

2015-10-12 00:14:13
MUNEGASHI Isako @isako134

皮肉にも、かの事件および過熱報道がフランスにおいて《子どもを置きざりにして、経済や思想、教育や女性の社会参加など、大人の土俵に移って》いたアニメ有害論の根拠として拍車をかけてしまうことになった。今回の調査で見つけることができたこの連載の当時の状況を今思うと悲しい。

2015-10-12 00:23:14
MUNEGASHI Isako @isako134

なお、1989年12月は状況が落ち着いたのか朝日新聞では2日夕刊にテレビ番組輸出入の記事で、1988年にフランスにてドラゴンボールが視聴率67%をマークし、アニメ番組1位だったことも含めて日本製番組の主力はアニメであると述べている。それでも洋画が主の輸入額よりはるかに少ない状態。

2015-10-12 01:01:43

セゴレーヌ・ロワイヤル氏による日本アニメバッシング

MUNEGASHI Isako @isako134

マンガはなぜ赦されたのか -フランスにおける日本のマンガ- 第1回「はじめにアニメありき」(豊永真美) animeanime.biz/archives/20948 さて、1989年にはフランスでセゴレーヌ・ロワイヤル氏が日本アニメ批判本を出すが、その出版は日本であの事件報道が起きた後である。

2015-10-11 00:25:50
リンク www.animeanime.biz マンガはなぜ赦されたのか –フランスにおける日本のマンガ- 第1回「はじめにアニメありき」 – アニメ!アニメ!ビズ アニメビジネス情報専門サイト。国内外の関連市場動向やビジネス視点でのインタビュー記事などを重点的に掲載。 38 users 154
MUNEGASHI Isako @isako134

《ロワイヤルは1989年に「ザッピングする赤ちゃんにはもう、うんざり(Le ras-le-bol des bébés zappeurs)」という著作をあらわし、日本のアニメは乱暴であり、日本でも、アニメに刺激され宮崎勤のような猟奇的な殺人犯が生まれていると糾弾した。》

2015-10-11 00:26:09
MUNEGASHI Isako @isako134

この本が出たときには、ラ・サンクはすでに罰金制裁で日本製アニメの放送時間を最盛期からは減らしており(ちなみにアニメ三銃士が同局で放映されたのは1989年9月から)、それでもロワイヤル氏がこの本を出したのは、対立する保守党の民放局であるTF1にダメージを与えるためだとわかる。

2015-10-11 00:26:34
MUNEGASHI Isako @isako134

次期フランス大統領は日本文化がお嫌い? All About allabout.co.jp/gm/gc/62966/ これは2007年にセゴことセゴレーヌ・ロワイヤル氏が大統領選挙に出馬した頃の記事で、かの著書の内容に触れたものだが、彼女は具体的にTF1放映作品名を挙げた上で叩いていた。

2015-10-11 00:26:56
リンク [フランス語] All About 次期フランス大統領は日本文化がお嫌い? 決選投票間近に迫ったフランス大統領選挙。セゴが勝つかサルコが勝つか?そんなお二人の気になる発言で、フランス語のお勉強をしてみましょう。
MUNEGASHI Isako @isako134

セゴが非難した作品は、北斗の拳、ドラゴンボール、超電子バイオマン、時空戦士スピルバン、UFOロボグレンダイザー、世界忍者戦ジライヤ、超人機メタルダー、と見事に東映特撮や東映動画作品ばかりというのがなんとも分かりやすい。「TF1で放送している暴力的な作品は大っ嫌い」ということです。

2015-10-11 00:37:23
MUNEGASHI Isako @isako134

その一方で、未来少年コナン、けろっこデメタン、トム・ソーヤーの冒険を薦めているというのが、一見「宮崎駿、動物ファンタジーもの、世界名作劇場なら認めます」という日本のママさんかいな?と思える意見だが、実はこれらは現在のFrance 2、France 3にあたる公共局での放映だった。

2015-10-11 00:27:14
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