1989年の朝日新聞のフランスでの日本アニメに関する記事と、フランス現地での日本アニメバッシングについて

記事を書く人によってスタンスが違ってくるという例。 (2018/06/29) ワンワン三銃士について3DCG版映画を含めて情報を追加・修正。 (2016/03/21) 『水曜日のアニメが待ち遠しい』(トリスタン・ブルネ)書評記事を追加。 続きを読む
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朝日新聞1989年5月の『'89パリ発 革命から二百年』より

(2015/10/15)朝日新聞連載記事のタイトルが正確には《'89パリ発 革命から二百年》でしたので、見出しはそちらに訂正しました。

MUNEGASHI Isako @isako134

1989年の朝日新聞で気になったことのひとつに、フランスでの日本アニメ進出をフランス文化の危機として扱う記事があった件がある。1989年5月30日朝刊4面の『'89パリ発 革命から200年<7>』で《新ジャポニスム あふれる和製アニメ 批判精神を失うと警戒》との見出しが出ていた。

2015-10-10 22:33:53
MUNEGASHI Isako @isako134

記事の概要は橋本順光氏がこのようにまとめている。 hdl.handle.net/11094/27410 《そもそも、マンガやアニメーションの流行を第二のジャポニスムと見立てたのは、こと各種新聞のデータベースを閲する限り、1989年5月30日の朝日新聞の「新ジャポニスム」が最初らしい。》

2015-10-10 22:34:31
リンク ir.library.osaka-u.ac.jp 大阪大学リポジトリ
MUNEGASHI Isako @isako134

《とはいえ、記事は危機感を伝えるむしろ否定的な内容である。『超電子バイオマン』(1984-5) や『聖闘士星矢』(1986-9)といった単純な勧善懲悪の「和製アニメ」があふれ、「フランスで生きていくのに不可欠の批判精神が育たない」という父親の声を引用し、》

2015-10-10 22:34:58
MUNEGASHI Isako @isako134

《「芸術家の目にかなった日本文化が細ぼそと」海を渡り、印象派の絵画に与えたジャポニスムと、「大衆的な文化が大量に、時を移さず国境を越える」衝撃とは「比較にならない」という。》

2015-10-10 22:35:22
MUNEGASHI Isako @isako134

《フランス革命200年取材班による連載記事の一つであることが示すように、そこには、ヨーロッパの貴族文化を極東の大衆文化が破壊する新たな革命といった見立てが底に透けて見えるようでもある。》 バイオマンはアニメではなくて特撮ではあるが、元の朝日新聞の記事では特に区別はつけていない。

2015-10-10 22:37:40
MUNEGASHI Isako @isako134

バイオマンはフランス語読みで「ビオマン」と呼ばれて、放送開始から当時でまる2年でもフランスの子供に人気だったこと、アタッカーYOU!を一時期、300万人の少女が見ていたと紹介した上で、放映後には全仏バレーボール連盟翼下のチームに入った10歳前後の少女が3倍になったと記事にはある。

2015-10-10 22:44:25
MUNEGASHI Isako @isako134

しかし、1989年4月にパリの高等経営学院で行われたある学生たちによる卒業発表では、日本のアニメは一見無国籍だったり欧米風だが、ベースは《女の子は従順、スポーツは勝つため》の伝統的な日本の価値観で、その異質な文化を2歳から6歳のあいだに見せるのは危険だという結論を出している。

2015-10-10 22:49:59
MUNEGASHI Isako @isako134

その後、記事では聖闘士星矢を好む息子を見て嘆いている父親について紹介したあと、日本のアニメのすべてがフランスで嫌われているわけではないとしてAKIRAを例に出し、原作仏語版刊行が間近で、《「舞台こそ東京だが、近い将来、どの国でも当てはまる現象を取り上げている」》との評を紹介した。

2015-10-10 22:57:35
MUNEGASHI Isako @isako134

さて、このあとは過去に自分が書いてきたことの訂正も含むのだが、1980年後半のフランスで日本製アニメを長時間放送していた民放局のひとつ、La Cinq(ラ・サンク)は1989年2月に1200万フラン(当時の日本円で約2億4千万円)の罰金を支払っており放映時間縮小を余儀なくされた。

2015-10-11 00:23:58
MUNEGASHI Isako @isako134

「ドラゴンボール」を欧州に広めた男 日本アニメ輸出の第一人者、アニマックス滝山社長に聞く | エンタメ - 東洋経済オンライン toyokeizai.net/articles/-/137… 記事中の《イタリアの前首相ベルルスコーニが創業したメディアグループ傘下のテレビ局》が、ラ・サンクである。

2015-10-11 00:24:25
リンク 東洋経済オンライン 「ドラゴンボール」を欧州に広めた男 | ゲーム・エンタメ ――日本アニメの販売に携わって30年超の実績が、世界的に認められました。私ほど日本のアニメを海外に売った人はいないと自負しています。そもそもMIPTVとはテレビ番組見本市なので、今回の特別功労賞受賞は、こ…
MUNEGASHI Isako @isako134

ラ・サンクが日本製テレビアニメを最も多く放送していたときの平日は《朝2時間、午後3時間、夜2時間の1日計7時間》のスケジュールで、さきの朝日新聞の記事によれば1987年からおよそ2年間で放映したアニメの9割にあたるという。同局が閉局するのは1992年で、その間に経営不振が続いた。

2015-10-11 00:24:54
MUNEGASHI Isako @isako134

いまだにフランス語はよくわからないのでWikipediaの文章を翻訳エンジンに突っ込みながらだいたい把握したのは、ラ・サンクはアニメ以外ではアメリカからの買い付け額が高価だったことなどでもトラブルを抱え、1990年にアシェットが経営を主導することになるが、結局失敗に終わった。

2015-10-11 00:25:13
MUNEGASHI Isako @isako134

日本製アニメのほうでは、1991年にはベルルスコーニが放映権をラ・サンクから引き上げライバル局であるTF1で放送するプロダクションに売った作品が出た一方で、逆にTF1で放映した作品をラ・サンクが買って仏題を変更して放送するケースもあったという。結局はラ・サンク閉局でTF1が勝つ。

2015-10-11 00:25:31
MUNEGASHI Isako @isako134

フランスの日本のポップ・カルチャー(安田昌弘) kyoto-seika.ac.jp/researchlab/wp… フランスにおける日本のアニメや漫画等の進出や批判の流れはこれがわかりやすい。(バイオマンがパワーレンジャー扱いになってるミスはあるが)。アニメについては1990年代半ばは暗黒期だった。

2015-10-12 11:29:23
MUNEGASHI Isako @isako134

フランスのテレビから一時期日本のアニメが消えたのは、TF1の『クラブ・ドロテ』が放送時間を縮小されてしまった末に1997年に終了したことが大きかったのだが、その原因は番組への批判の大きさのみならず、製作会社のABプロダクションが自前で衛星放送を始めることになったのが一番だという。

2015-10-12 11:42:45
MUNEGASHI Isako @isako134

『ゴールドラック』の残影~アニメーションの大量輸出に関する一考察~(古田尚輝) seijo.repo.nii.ac.jp/index.php?acti… 東映アニメーション作品のフランスおよび前段となるイタリアへの進出、フランスでの批判を両方扱った論文。1990年代に輸出できた作品数はその前より少ない。

2015-10-11 11:01:36
MUNEGASHI Isako @isako134

《日本のテレビ・アニメーションは幼児から成人まで幅広い年齢層を対象に作品が多様化している点に1つの特徴がある。しかし、これがアニメーションは2歳から6歳までの幼児のものという考え方が支配的なフランスで短期間に集中的に大量に放送されただけに、その衝撃は予想を超えるものであった。》

2015-10-11 11:12:05
MUNEGASHI Isako @isako134

朝日新聞1989年5月30日朝刊のフランス革命200年連載記事にある、日本製アニメがスポーツものでも日本の価値観を与えるものとして危険視し、2歳から6歳の子供に触れさせてはならないとした学生発表にしても、テレビアニメは物心ついてから小学校直前の子供が見るものという認識からだろう。

2015-10-11 11:17:36
MUNEGASHI Isako @isako134

論文では特撮に触れていないが、TF1では東映特撮作品も放送され、さきの朝日新聞記事やロワイヤル著書で問題視された超電子バイオマンもそのひとつ。番組司会のドロテ氏は1988年に東映の招待で来日した際、超獣戦隊ライブマン、世界忍者戦ジライヤ、仮面ライダーBLACKにカメオ出演した。

2015-10-11 11:23:08
MUNEGASHI Isako @isako134

『キン肉マン』『聖闘士星矢』が引き起こした<日仏アニメ摩擦>(岩上安身) hh.iij4u.or.jp/~iwakami/anime… 1990年当時、キン肉マン(ドイツ出身のブロッケンJr.が正義超人であることが問題視され放送打ち切り)、聖闘士星矢、北斗の拳へのフランスでの批判を伝える内容。

2015-10-12 12:31:39
MUNEGASHI Isako @isako134

この記事ではラ・サンクはTF1と違ってスポーツものなどでうまくやっていると評しているが、同局は1989年時点で当時のクオータ制に違反したため罰金制裁を加えられており、経営手腕や基盤においてもTF1より弱かったので翌々年閉局する。テレビのクオータ制は1993年にはさらに強化された。

2015-10-12 12:59:19
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