「ストレンジャー・ストレンジャー・ザン・フィクション」 #10
「……というわけでございまして、この女を拷問すればニンジャスレイヤーを出し抜くことも容易でありましょう!」ウォーロックは、女……ナンシー・リーの手錠のヒモを荒っぽく引っ張った。「しかしながら、気がかりはダークニンジャ=サンでございますね、偉大なるボスのため自ら囮になるとは……」
2011-01-16 20:35:10「そうよのう」ラオモトはゆったりと相槌を打った。懐から最新の折りたたみ型携帯IRCトーカーを取り出し、耳に当てる。ウォーロックはそれを目で追う。「……ウム、そうか。それはチョージョー。俺様の目の前におる。話は早いぞ」
2011-01-16 20:40:55ラオモトは携帯を耳に当てたまま、無言でウォーロックをじっと見据える。無感情な瞳で。「……え?」ウォーロックはまばたきした。
2011-01-16 20:45:04「マジックモンキーの伝説を知っておるな?ウォーロック=サン。いや知っておるはずだ。素晴らしく小賢しいオヌシのことだからな」「……え?」
2011-01-16 20:47:20「ブッダの冠を盗んだマジックモンキーは、クラウドドラゴンの背に乗って荒野の上空をまっすぐに飛んでゆく。どこまでも、どこまでも。その荒野がブッダの掌にすぎんということが、マジックモンキーにはわからんのだ。わからぬものは恐れようがない。ムハハハハハ、実に哀れな話だ!」「……え?」
2011-01-16 20:51:10「まこと、数を揃えるのは容易であっても、骨のある邪悪さをもった真の強者はなかなか育たん。俺様の目下の悩みはそれでな。ニンジャスレイヤーは実に厄介な存在よ。ニンジャを殺す。文字通り!ムハハハハハ!」「……え?」
2011-01-16 21:03:26ラオモトは携帯IRCに耳を当てる。「……んん?……俺様の戯言の終わるのを待っておったのか?ムハハハ、まったく奥ゆかしい男だ、ダークニンジャ=サン。さっさとやれ。タイムイズマネー」「……え?」
2011-01-16 21:07:25「……ハイ。ハイ。……ハイ。お気をつけて。ハイ」ダークニンジャは携帯IRCトーカーを片手で折りたたんだ。彼は今、真四角の玄室に立っている。四方の壁にレリーフされているのは、ドラゴン、ゴリラ、タコ、イーグルの四聖獣だ。その天井にはバーナー切断された円い穴が開いている。
2011-01-16 21:24:02四角い玄室は赤いペンキをぶちまけたような恐るべき様相であった。無論それはペンキではない。不自然な姿勢で床に這いつくばったニンジャの体がそれをしめしている。背中がストリングチーズめいて裂けており、おお……ナムアミダブツ!首も無い!
2011-01-16 21:33:07ダークニンジャは右手の携帯IRC端末を懐へしまうと、左手に持った……ナムアミダブツ……背骨がついたままのニンジャの生首を、バイオフロシキに包み込んだ。
2011-01-16 21:38:55ダークニンジャは、かつて植物状態に置かれた己の命を奪いにきた二人の暗殺ニンジャのデータを好きなスシネタに至るまで調べ上げ、その裏で糸を引いていた首謀者が誰であるか、とうの昔につきとめていた。
2011-01-16 21:47:27ゴアイサツサマ生命の爆発を回避し、ラオモトを逃がし、四人の襲撃ニンジャ……ゼブラ、クイックサンド、バタフライ、ストーンゴーレムを殺した時には、ダークニンジャは「敵」の特定を終えていた。監視下に置いていたウォーロックの隠れ家を発見するのは彼にとってベイビーサブミッションであった。
2011-01-16 22:02:55己の命を狙い今また陰謀を巡らせた獅子身中の虫をついに殺し、その心中には何が去来するのか。ダークニンジャの冷たい瞳は我々に答えはしない。「イヤーッ!」彼は垂直にジャンプし、自らが開けた頭上の円い穴から消えた。
2011-01-16 22:08:14バラバラバラバラバラバラ。上空から接近するヘリが送る風が、ナンシー・リーの金髪を激しくなびかせる。足元でうつ伏せに横たわるトラッフルホッグの死体。手錠ロープの次なる主となったラオモト・カンはナンシーに冷たい一瞥をくれ、接近するヘリを見上げた。
2011-01-16 22:19:53ヘリのスライドドアが開き、オフホワイトニンジャ装束に身を包んだニンジャが姿を見せた。「ドーモ、ラオモト=サン。ご無事で何よりです」
2011-01-16 22:36:03「ドーモ、ヘルカイト=サン」ラオモトはオフホワイトのニンジャを見上げる「タイムイズマネーを知っておるな。もう二秒遅れればオヌシにセプクを命じるところであった。オヌシのような有能者をソウカイ・シンジケートが失うのは大変な損失で悲しむべき事だ。失望させてくれるなよ」「……ハハーッ!」
2011-01-16 22:43:19ヘリはゆっくりと降下する。ラオモトを迎え入れようと注意を払っていたヘルカイトは、弾かれたように道路の方角を見た。「あれは!」次の瞬間、彼の背中にはバイオバンブーとカーボンソリッド半紙で作られた折りたたみ式ステルスカイトが展開した!「ニンジャスレイヤーが接近しています!」
2011-01-16 22:47:35ゴウランガ!産業道路を滑り降り、爆音と共に一直線にヘリポートめがけて接近してくるヘルヒキャク社のオートバイを見よ!そこにまたがる赤黒のニンジャの姿を……!ヘリコプター横腹のステップからヘルカイトが空中へ飛び上がる。「イヤーッ!」
2011-01-16 23:11:00「アーレーッ!」三人のオイランは地獄の猟犬めいた速度で殺到する黒いオートバイを前に恐慌に陥り、バラバラの方向に走り出した!「アレーッ!」一人が縁から足を滑らせ、海に落ちる!
2011-01-16 23:17:20「ドーモ!はじめましてラオモト=サン。ニンジャスレイヤーです」高速接近するオートバイ上からサツバツとした声が飛び来たる!ナンシーはラオモトから逃げようともがいたが、この状況下でも彼は手錠のロープを離さぬ!
2011-01-16 23:25:48「イヤーッ!」上空を旋回するヘルカイトがバクチクをバラ撒いた!爆発の嵐が巻き起こる中、ニンジャスレイヤーのアイアンオトメはひるむ事なくラオモトを一直線に目がける!
2011-01-16 23:32:48