“マカロニウエスタン生誕50周年”『荒野の用心棒』雑学コラム「マカロニ・マシンガンは弾切れしないんだぜ。」蔵臼 金助

イタリア製西部劇研究家による、『荒野の用心棒』Blu-rayコレクターズ・エディション公式BBS連載・雑学コラムの再掲(一部書下ろし)です。
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

セルジオ・レオーネは『荒野の用心棒』の主題曲「さすらいの口笛」とは別に、トランペットが響き渡るこの「デグェジョ」をモリコーネに作曲させました。以来、マカロニウエスタンにおいては勇壮なテーマ曲とは別に、トランペット演奏による哀愁漂う「デグェジョ」がセットになる例が見受けられます。

2015-11-23 02:11:39
蔵臼 金助 @klaus_kinske

『ガンクレイジー』では、スティルヴィオ・チプリアーニがティオムキン作曲の「デグェジョ」を研究し、哀切きわまりない主題曲を作り上げました。『砂塵に血を吐け』では『荒野の用心棒』でトランペットを吹いたミケーレ・ラチェレンツァがオリジナルの「デグェジョ」を作曲しました。

2015-11-23 02:13:16
蔵臼 金助 @klaus_kinske

中には「デグェジョ」が原題となっている、『荒野のみな殺し』なんて作品もあります。『荒野の用心棒』は音楽の面でもまた、マカロニウエスタン史の礎を築いたのです。 pic.twitter.com/tH84O34Pxl

2015-11-23 02:15:56
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

西部開拓時代、ちょっとしたトラブルが銃の撃ち合いに発展するケースが多々ありましたが、この場合、相手が銃に先に手をかけて、それよりも後から銃を抜き、相手を射殺してしまった場合は、正当防衛が適用されました。法的に無罪、あるいは罰金刑で済んだのです。

2015-11-23 02:18:21
蔵臼 金助 @klaus_kinske

それで、「ファスト・ドロウ(早撃ち)」の技術が磨かれます。「クイック・ドロウ」とも呼ばれますが、相手が銃を抜きかけた瞬間に、電光石火の早業で相手よりも速く銃を抜き、撃ち倒すわけです。

2015-11-23 02:18:45
蔵臼 金助 @klaus_kinske

ただしそれが許されるのは、決闘相手と顔を合わせて対峙(Face to Face/Face Off)した時のみ。相手が背中を向けてる時に撃つのは“バックシューター”と呼ばれ忌み嫌われました。ハリウッド製西部劇では“バックシューター”イコール“卑怯者”として描かれることが多いのです。

2015-11-23 02:19:48
蔵臼 金助 @klaus_kinske

しかしマカロニウエスタンにおいては、背中から撃つわ、丸腰の相手も撃つわ、逃げる相手も撃つわ、女子供も撃つわ、神父や親子、夫婦だって、動く者はすべて標的として描かれます。実際の西部ではそれがリアリズムだったのかもしれません。

2015-11-23 02:20:09
蔵臼 金助 @klaus_kinske

それでもセルジオ・レオーネが描く西部劇の主人公は、無闇な殺生はいたしません。『夕陽のガンマン』での林檎を撃ち合う賞金稼ぎたちのシーンを思い浮かべてみましょう。彼らは悪人以外は撃たないのです。

2015-11-23 02:20:32
蔵臼 金助 @klaus_kinske

そのキャラクター設定は『荒野の用心棒』で既に確立されています。アウトローの蛮行はカタルシスを生む場合もありますが、観客は感情移入出来ません。生理的に反発心を覚えてしまうのです。『荒野の用心棒』のヒーローも悪人に対しては容赦しませんが、必要最小限の殺ししかしません。

2015-11-23 02:21:07
蔵臼 金助 @klaus_kinske

そしてそのキャラクターのバックボーンは、『用心棒』の主人公、桑畑三十郎の遺伝子を引き継いだものなのであります。清廉潔白なヒーローの正論的活躍よりもダーティヒーローが時折見せる素朴な正義感の方が、より観客の心を撃ち抜くものなのです。 pic.twitter.com/38DuTP9hDh

2015-11-23 02:23:10
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

17.「ファッションに興味があるのか?」by シャイアン (『ウエスタン』) pic.twitter.com/I4RvyMwzSR

2015-11-23 02:26:34
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

それまでのハリウッド製西部劇では、ウエスタンファッションと言うと、チェックのウエスタン・シャツにブリム(ひさし)がカールしたカウボーイハット、革製のベスト、ブルージーンズにブーツ…と言うのが定番でした。

2015-11-23 02:26:59
蔵臼 金助 @klaus_kinske

『荒野の用心棒』でイーストウッドが登場した時、その斬新なスタイルは西部劇ファンの目も奪いました。 pic.twitter.com/DTrbMr9QHp

2015-11-23 02:27:32
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

ブリムの真っ直ぐなハット、細いストライプのシャツにシープスキンのベスト。そしてメキシコ人がかぶるポンチョに、洗練されたデザインのガンベルト、ブラックジーンズに、ロングライド用ではないスマートなブーツ…今見てもカッコ良く、印象的です。 pic.twitter.com/uXVKLsUxTh

2015-11-23 02:28:26
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

名無しの男の後を追いマカロニウエスタンの登場人物達は、次々にファッションセンスを競い合います。バンダナの代わりに白いマフラーを巻いた賞金稼ぎ、全身黒いレザー姿のガンマン、インバネスコートにロングコート、凝った小道具やアクセサリー…。 pic.twitter.com/GNrCFuQTLJ

2015-11-23 02:31:37
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

チネチッタスタジオは、荒野の最新コレクション発表の場となりました。マカロニウエスタンにおいては、登場するガンマンたちのファッションもまた、革命的だったのです。 pic.twitter.com/f5nNlAGWLx

2015-11-23 02:32:17
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

何事にも始まりと終わりがあります。今から50年前に、『荒野の用心棒』は公開されました。この作品なくしては、マカロニウエスタンの空前のブームは起こりえなかったのです。

2015-11-23 02:40:04
蔵臼 金助 @klaus_kinske

『荒野の用心棒』が公開された1964年、日本は高度経済成長の真っただ中でした。その1964年のさらに50年前と言うと、1914年(大正3年)。サラエボ事件が起こり、第一次世界大戦が勃発した年です。パナマ運河が開通し、日本では赤煉瓦の東京駅が開業しました。

2015-11-23 02:40:27
蔵臼 金助 @klaus_kinske

アンリ・ファルマンやカーティスの複葉機が飛び回っていた1919年から50年後には、アポロ11号が月面に着陸していました。50年という年月はそれだけの重みを持っているのです。

2015-11-23 02:40:56
蔵臼 金助 @klaus_kinske

『荒野の用心棒』公開から50年経った現在、映画は携帯端末から観られるようになりました。当時の映画館で観ていた画質と同等の、Blu-Rayでも楽しめるようにもなりました。

2015-11-23 02:41:33
蔵臼 金助 @klaus_kinske

半世紀が過ぎて世に残っているものは、そう多くはありません。『荒野の用心棒』が誕生させ、一世を風靡した“マカロニウエスタン”というジャンル映画は、既に消え去ってしまいました。

2015-11-23 02:42:41
蔵臼 金助 @klaus_kinske

今から50年後の2064年。はたして『荒野の用心棒』はどのようにして視聴されているのか。まだ人々の記憶に残っているのか? 残念ながら私はその行方を追うことは出来ませんが、未だ見ぬ未来を想いながら、このコラムを終えようと思います。 pic.twitter.com/C84ab41F7O

2015-11-23 02:44:04
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

レオーネ作品2本立て分の冗長なツイートによく耐えたな、Companeros♪ pic.twitter.com/2tQwRprvi2

2015-11-23 02:46:19
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