グラウンド・ゼロ、デス・ヴァレイ・オブ・センジン #3

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」やがてガンドーは足を止めた。二列縦隊でものものしく巡回するキョート兵だ。わきに下がり、敬礼姿勢で、ガンドーは彼らの通過を待った。みな揃いのサイバーサングラスをかけ、横顔も同じだ。「……」ガンドーの横で、彼らはふいに足を止めた。最後尾の一人が誰何する。「どちら様ですか」23

2015-11-22 16:15:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヨナカ・タカムラ・アベマルです」ガンドーは予め準備したIDを見せた。「……」警備兵はIDとガンドーの顔を繰り返し確認した。「このエリアへの立ち入りには許可が必要です。持っていますか」来た。ガンドーは眉を動かした。マトイの電波シグナルの方向と合致する。この辺りだ。 24

2015-11-22 16:21:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガンドーは深呼吸した。脳の奥がチリチリする。「許可証を」警備兵が繰り返した。ガンドーは笑顔を作り、懐に手を入れた。警備兵は一斉にライフルに手をかけた。「……許可証です」ガンドーはマキモノを取り出した。オイ、いいんだな。頼むぞ。彼は顔も知らぬ元老に脳内で睨みをきかせた。 25

2015-11-22 16:25:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

警備兵はマキモノを開き、ハンコをあらためた。ガンドーは目を細めた。「この通り許可もあります。詳細は貴方がたにも明かせません。そこ、お解りですね」「……」無表情なサイバーサングラスがガンドーをじっと見た。蛇足だったか?ガンドーは49マグナムの重みを感じる。「どうぞご苦労様です」26

2015-11-22 16:32:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガンドーは表情をほころばせた。「皆さんこそ、ご苦労様です」「ドーモ」「ドーモ」警備兵が去っていくと、ガンドーは懐のZBRを探った。「たまらねえな畜生め……」「行こう」アズールがすぐ隣に来ていた。「たぶん何度も使える手じゃないと思う」「ああ、おう」ガンドーは咳払いし、頷いた。27

2015-11-22 16:36:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「こッからが本番だ。手探りだ」奥に向かって足を早めながら、ガンドーは呟いた。バラック施設の外見はコピー・アンド・ペーストめいて似通っている。端末はこれ以上細かく示してはくれない。頼るべきは彼自身のニンジャ第六感と、ニューロンに触れる壁めいた独特の違和感……その源……。 28

2015-11-22 16:44:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガンドーはアズールを一度振り返り、頷いてみせたのち、入り口に赤紫のノレンを備えたバラックに忍び寄った。ケーブルを取り出し、カーボンナノチューブ・ショウジ戸のロック機構とLAN直結した。頭痛がひどい。やがて内側でガチャリと音が鳴り、鍵が開いた。ガンドーはしめやかに入り込んだ。29

2015-11-22 16:50:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……何ですかねえ……?」数軒離れたバラックの屋根でうつ伏せに寝そべっていたニンジャが、その様を見て訝しげに独りごちた。ニンジャの首には薄く光る首輪が嵌っている。「聞いていないですねえ……今日この時間に来訪ですかあ……」訝しむ目が殺意に濁った。「聞いてないですもんねえ……!」30

2015-11-22 16:55:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャの睨む先、黒いマントを着た少女が振り返った。そして彼を見返した。「!」ニンジャは己のニンジャ第六感警鐘によって跳ね起き、慌てて垂直に宙返りした。「イヤーッ!」ガキン!一瞬後、バラック屋上部の彼が寝ていたあたりの部分が不可視の何かの攻撃によって爆ぜ砕けた。「何!?」31

2015-11-22 16:58:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「侵入……」「GRRRRR!」「グワーッ!」不可視の爪がニンジャの胸元を薙いだ。ニンジャは目の前に不可視の獣の存在を感じ取った。少女の接近に比例し、その圧力が増している!「イヤーッ!」少女は一足で屋根に飛び上がり 、決断的な速度と殺意をもって、ニンジャのもとに走ってくる! 32

2015-11-22 17:05:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……何ですかねえ……?」数軒離れたバラックの屋根でうつ伏せに寝そべっていたニンジャが、その様を見て訝しげに独りごちた。ニンジャの首には薄く光る首輪が嵌っている。「聞いていないですねえ……今日この時間に来訪ですかあ……」訝しむ目が殺意に濁った。「聞いてないですもんねえ……!」30

2015-11-23 21:05:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャの睨む先、黒いマントを着た少女が振り返った。そして彼を見返した。「!」ニンジャは己のニンジャ第六感警鐘によって跳ね起き、慌てて垂直に宙返りした。「イヤーッ!」ガキン!一瞬後、バラック屋上部の彼が寝ていたあたりの部分が不可視の何かの攻撃によって爆ぜ砕けた。「何!?」31

2015-11-23 21:06:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「侵入……」「GRRRRR!」「グワーッ!」不可視の爪がニンジャの胸元を薙いだ。ニンジャは目の前に不可視の獣の存在を感じ取った。少女の接近に比例し、その圧力が増している!「イヤーッ!」少女は一足で屋根に飛び上がり 、決断的な速度と殺意をもって、ニンジャのもとに走ってくる! 32

2015-11-23 21:09:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「やめ……貴様女子高生!」ニンジャは身構え、急接近する少女めがけ、警戒的なアイサツを繰り出した。「ドーモ。サキモリです」「イヤーッ!」少女は同じ屋根に飛び移り、着地と同時にオジギをした。「ドーモ。アズールです」「首輪の無いニンジャ?聞いていませんねえ!」サキモリは睨んだ。33

2015-11-23 21:19:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「GRRR!」真横から透明の獣が襲い掛かる。「厄介!」サキモリは側転して不可視攻撃を回避、屋根に手を付き、アズールへ逆さ蹴りを繰り出す。「イヤーッ!」「イヤーッ!」アズールは飛び下がった。サキモリは舌なめずりした。(今の切り結びで判明……さほどのカラテではなし。問題は透明者)34

2015-11-23 21:22:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サキモリは同じ境遇下の下劣なミエザルを想起し、不快な気分になった。「GRRR!」「イヤーッ!」サキモリは二度目の不可視攻撃をも回避。アズールにスリケンを投擲する。「イヤーッ!物騒な透明獣の使役も貴様だ女子高生!でも残念ながら私はこの手の卑劣ニンジャには慣れ親しんでいてねえ!」35

2015-11-23 21:28:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ッ……!」アズールは左腕を押さえ、よろめく。後ろにもう屋根が無い。彼女は落下せぬようバランスを取った。サキモリはアズールの喉にスリケンを向けるが、三度の透明獣攻撃に阻まれる。彼は骨伝導通信機をノックした。「HQ!敵襲!油断なく忠誠心に富んだ私サキモリがこうして……ヌウッ?」36

2015-11-23 21:32:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

視界に一瞬、ザラつく斑のノイズが走った。サキモリのニンジャ第六感は瞬時に己の首の異変に勘付いた。首輪の光が失せたのだ。(これは!自由?)だがすぐに否定する。脳に埋め込まれた爆弾が消えるわけではない。そしてLANに障害が発生している。カブキコム本部との通信がうまく行かぬ。 37

2015-11-23 21:39:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

更に一呼吸後、UNIX施設内から、さきほどの侵入者が飛び出して来た。アズールは大柄なその男と睨み合うような一瞥をくれた。男は加勢せず、別方向へ駆け去っていく。何をするつもりだ?サキモリは網膜HUDに映る通信復帰予測時間バーを呪った。「チィー遅いわ!」「GRRR!」獣が攻撃!38

2015-11-23 21:45:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」サキモリは不可視の顎を殴り返した。圧力に負け、弾かれる。「グワーッ!」屋上のバラック瓦の上を転がり、アズールに襲い掛かった。反動を利用したアンブッシュめいた攻撃だ。「イヤーッ!」だがチョップを振りかぶったサキモリの鎖骨に突き刺さったのは、クナイ!「グワーッ!?」39

2015-11-23 21:52:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サキモリは血走った目でアズールを見る。クナイを投げたのは彼女自身だった。不意打ちを受けてサキモリの打撃が逸れ、よろめく……「ゴウオオオン!」サキモリは吠え声に呑まれながら、悲鳴を上げる。「貴様女子高生……猫を被っていたというんですか!卑怯アバーッ!」ナムアミダブツ! 40

2015-11-23 21:55:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ザッケンナコラー!」「スッゾコラー!」さきほどの巡回警備兵が屋上の死闘を見咎め、アズールめがけ掃射を開始した。彼らの中には通信を試みる者もいる。いまだLAN通信は復帰していないようだった。アズールは敵の生死をザンシンする事を諦め、下へ飛び降りた。「イヤーッ!」 41

2015-11-23 21:57:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「チェラッコラー!」BLAMBLAMBLAM!「ゴウオオオオン!」「アバーッ!」「アバーッ!」たちまち警備兵の掃射は真空嵐めいた透明の殺戮に巻き込まれ、バラバラに切り裂かれて緑の血煙と化した。透明の獣はそのまま真っ直ぐアズールのもとへ走ってくる。アズールは受け入れ、飛び乗る。42

2015-11-23 22:02:17