編集部イチオシ

AIDSの最初の治療薬は熊本大学で発見された理由は偶然ではない

なお出典は主としてWIKIPAEDIAによる。Naverも同じようだ。
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補足その2

成人T細胞白血病の原因ウィルス(ヒトTリンパ好性ウイルス1型 (HTLV-1))が1977年に発見されて38年目の2015年10月スーパーコンピューター京によって全ゲノム解析が終了した。(腫瘍ウィルスとして判明するのは1980年代だが発見は厚生労働省の資料より1977年に訂正。)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken16/dl/05_2.pdf
http://www.amed.go.jp/news/release_20151006-01.html
(中略)
次世代シーケンサーとスーパーコンピュータによる塩基配列の解読
今回、主に国内7施設・グループ(宮崎大学、国立がん研究センター、HTLV-1感染者コホート共同研究班、熊本大学、京都大学、長崎大学、佐世保市立総合病院)から合計426例のATLの検体を採取し、京都大学にて包括的な遺伝子解析を行いました。今回の研究では、全エクソン解析・全ゲノム解析・トランスクリプトーム解析などの次世代シーケンサーを用いた解析およびマイクロアレイを用いたコピー数異常やDNAメチル化の解析を組み合わせて、さまざまな遺伝子の異常を網羅的に明らかにしました。この大規模なデータ解析は、東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センターと共同でスーパーコンピュータ「京」を利用することにより可能となりました
T細胞受容体シグナリング/NF-κB経路への遺伝子異常の集積
本研究の解析の結果、ATLにおける遺伝子異常の最も顕著な特徴は、T細胞受容体シグナリング/NF-κB経路に遺伝子異常が高度に集積することであることが明らかになりました。全体の90%以上を超える症例にこの経路の少なくとも一つの遺伝子異常を認め、この経路の異常がATLの病態において中心的な役割を果たすことが示唆されました。中でも、PLCG1(36%)、PRKCB(33%)、CARD11(24%)、VAV1(18%)、IRF4(14%)、FYN(4%)変異などの機能獲得型変異(遺伝子の機能が亢進する、あるいは新たな機能を獲得するタイプの変異)が多数認められることが特徴と考えられました(図4)。この中でもPRKCB変異はプロテインキナーゼCファミリーというがんにおいて大変重要な機能を持つタンパク群で初めて同定された機能獲得型変異でありました。最も頻度が多かったPRKCB D427N変異を用いた、機能を検証する実験においても、この変異によりNF-κB経路が活性化することが明らかにされました。さらに、このPRKCB変異はCARD11変異と共存することが多いこと、両者は機能的にも協調してNF-κB経路を活性化することが明らかになりました。

宮崎大学
http://www.miyazaki-u.ac.jp/news/20151027-2
本学医学部の下田和哉教授、小川誠司 京都大学医学研究科教授、柴田龍弘
国立がん研究センター研究所 がんゲノミクス研究分野長、宮野悟 東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センター教授、松岡雅雄 ウイルス研究所教授、渡邉俊樹 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を中心とする研究チームは、400例以上のATL症例から採取した腫瘍細胞の大規模な遺伝子解析を行い、ATLの遺伝子異常の全貌を解明することに成功しました。本研究では、全エクソン解析・全ゲノム解析・トランスクリプトーム解析などの次世代シーケンサーを用いた解析およびマイクロアレイを用いたコピー数異常やDNAメチル化の解析を組み合わせて、さまざまな遺伝子の異常を包括的に明らかにしました。本研究によって、ATL患者に特有の遺伝子異常を約50個見いだし、患者1人当たり8~9個の遺伝子に異常が存在することが明らかとなりました。本研究結果はATLの発症や悪化の仕組みの解明に大きな進歩をもたらすのみならず、本疾患を克服するための診断や治療への応用が期待されます。2015年10月6日付で国際科学誌「Nature Genetics」電子版に公開されました。
※なお、この腫瘍ウィルスの一つがエプスタイン・バール・ウイルスヒトヘルペスウイルス4型(human herpesvirus 4、HHV-4)、EBVであり、このウィルスが原因となって引き起こされる病気のひとつが、慢性活動性EBウイルス感染症である。

補足その3

このAZTがアメリカで未承認だった1985年を描いた映画がダラス バイヤーズ クラブ

超映画批評
「ダラス・バイヤーズクラブ」75点(100点満点中)
1985年のテキサス州ダラス。ロデオカウボーイのロン(マシュー・マコノヒー)は、大好きな酒と女を存分に楽しむ奔放な生き方を楽しんでいた。ところがそれが祟り、医師からHIV感染と余命30日を宣告されショックを受ける。生きのびるため病気について学び始めた彼は、偏見と誤解にみちたこの病気についてと、米国ですら遅れている治療法の現状を知る。病院で知り合った同性愛者のエイズ患者レイヨン(ジャレッド・レトー)の協力を得てロンは、未承認薬を求めメキシコへ向かうのだが……。
http://movie.maeda-y.com/movie/01836.htm

○町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第75回
http://www.premiumcyzo.com/modules/member/2013/12/post_4765/
 このような抗エイズ薬の購買者クラブは全米各地にあった。患者たちはエイズ対策を求めて政府とさまざまな闘争を展開した。それは13年5月号で紹介した映画『いかにして疫病を生き延びるか』でドキュメントされている。
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20130110
○映画評論家町山智浩アメリカ日記
(前略)
 当時のアメリカ大統領だったロナルド・レーガンはエイズ発生以来、何も対策を講じてなかった。それどころか公の場ではエイズについて決して言及せず、そんな病気は存在しないかのように振る舞っていた。1985年、レーガンの俳優時代からの友人ロック・ハドソンがエイズで亡くなったが、大統領は動かなかった。
(中略)
 しかし、政府も世間も「しょせんゲイだけの病気」と考え、関心を持たない。
 その根底には、まず宗教があった。共和党は70年代からキリスト教保守を支持基盤にしていった。「エイズは神に背いた者への天罰だ」キリスト教保守の重鎮ジェリー・フォルウェル牧師や、ジェシー・ヘルムズ上院議員(共和党)はそう公言した。そして、エイズ対策に税金を使うことに頑なに反対した。ステイリーたちは抗議のため、ヘルムズ議員の自宅の屋根に上って、家全体を巨大なコンドームで覆った。そのコンドームには「エイズ・ウィルスよりも危険な政治家用コンドーム」と書いてあった。
 いっぽうカトリックはコンドームの使用そのものが神に背く行為だと信者たちに教えた。旧約聖書で神の命令に反して膣外射精したオナンという男が雷に打たれて死ぬという記述があるためだ。しかし、すでにエイズは同性愛者だけの病気ではなくなっている。
 1992年、大統領選挙で、ブッシュ父とクリントンが激突した。全世界のエイズによる死者は累計330万人を超えていた。ブッシュ父は「エイズは患者たちの行動に問題がある」と相変わらずゲイを批判し続けた。エイズがかなり進行していたボブ・ラフスキーは、遊説中のクリントンに直接迫ってエイズ対策を約束させてから、亡くなった。
(中略)
 95年、エイズの死者は820万人を超えたが、それがピークだった。いったん体に入ったエイズのウィルスを除去する治療薬はまだ発明されていないが、複数の薬を混ぜて使用し続けることで病気の進行を遅らせることが可能になったからだ。開発した研究者たちは、これがすぐに政府の認可を受けて普及したのはACT UPなどの運動のおかげだと明言する。

現実の世界に舞い降りた「長生きの薬」を作る満屋教授の終わりなきエイズ研究

 満屋のウイルスとの戦いも依然として続いている。ここからは本文で述べていない満屋裕明のその後を少し記したいと思う。
 終章の最後に、カナダでのAZT訴訟で満屋側が勝ったと書いた。だが後にバローズ・ウェルカム社(現グラクソ・スミスクライン社)は判決を不服として控訴。カナダの特許訴訟でも勝利をおさめ、カナダの特許発明者の欄からも満屋裕明という名前は消えた。
 悲憤ということでは、バローズ・ウェルカム社がAZTを売りだした当初、記録的な価格の高さに満屋は怒りを覚えていた。自身が効果を発見した薬であるにもかかわらず、AZTがあまりにも高価だったため、すべての患者の手に届かなかった。
「AZTを飲まなかったことで何百、何千という患者さんが死んだのです」
「長生きのくすり」を開発しても、以前からの願いはかなわなかったのだ。
「そういう時に研究者が取り得る道というのは、第二、第三の薬を開発することなんです。研究を通じて戦うことだけ。それ以外、製薬会社に報復する手はない」
 多くの治療薬が認可され、市場にでまわれば競争の原理から価格はさがる。ddIとddCの登場は満屋の望んだとおりの結果をもたらした。AZTの価格がさがったのだ。それでも、その二薬が登場するまでの数年間、バローズ・ウェルカム社はエイズ治療薬を独占した。
 AZTはいまでも感染者・患者に服用されている。ddIもいまだに飲まれている。だが三番目に認可されたddCはいま、使われていない。
「ddCは死にました。副作用がありましたから」
 三薬が認可されたあと、今度は本当に「いよいよ満屋は終わり」と思っていた研究者がいた。
 だが満屋は四つ目のエイズ治療薬を見つけるのである。
 ところがジョン・Eは満屋とゴーシュ教授の名前を入れずに、部下と二人だけで特許申請をだしていた。またしても特許にからんだ不正に巻き込まれることになった。
 特許では過去に痛い思いをしていた満屋は、黙っていなかった。
「多くの人間は特許の話になると欲がでてきます。ダルナビルの中核的なデータは僕の研究室でだしたものです。特許には発明人(ゴーシュ教授と満屋)の名前が入らないといけない。だからアメリカの特許庁に手紙を書いて、このままだったら特許を“殺す”と脅したのです」
 〇六年になってダルナビルはFDA(食品医薬品局)が新薬として認可し、日本の厚労省も翌〇七年に認可する。さらにアメリカ政府は、感染者・患者が多いアフリカの国々などが、ダルナビルの特許料を支払わずに使用できるようにした。高い薬代は必要ない。それこそが満屋の望んだことだった。
 満屋はそれ以外にも有望な治療薬を抱えている。その一つが「EFdA(イーエフディーエイ)」という薬だ。分類としては逆転写酵素阻害剤に入る。
 満屋が率いる熊本大学をはじめ、ヤマサ醤油、東北大学、京都大学、横浜薬科大学が共同研究という形で手を組み、新薬の認可をめざす。一五年、すでに臨床治験に入っており、遠くない将来、満屋にとって五つ目の治療薬となるかもしれない。「EFdA」は抗ウイルス活性がAZTの四〇〇倍以上といわれており、大きな期待がかけられている。臨床研究元はアメリカの製薬大手メルク社だ。
 さらに満屋が開発した薬だけでなく、ほかの複数の治療薬を合わせて飲む多剤併用療法がうまくいっている。八〇年代、症状がでたら二年以内に八~九割の患者が死亡していた「死に至る病」は「慢性の感染症」になったのだ。ウイルスに感染後、かなり早い段階に治療薬を飲めば、ほかの人にウイルスを感染させるリスクは減る。感染しない確率が96%という数字さえある。治療をしている人からの新規感染は近い将来ゼロになるだろう。
 満屋は「これからは一週間に二錠、さらには一錠でよくなるはずです。その時が比較的早い時期にくるでしょう」と言う。
http://hon.bunshun.jp/articles/-/4074

※EFdAは現在簡易生成法が開発されている。
https://prw.kyodonews.jp/opn/release/201502127604/
横浜薬科大学・大類洋教授
2015年2月12日
画期的な抗HIV(エイズ)臨床薬として期待される「EFdA」の簡易合成法を開発
都築学園グループ 学校法人都築第一学園 横浜薬科大学
 EFdAについては、大類教授がヤマサ醤油、熊本大学大学院血液内科・満屋裕明教授グループとの共同で研究を進めた結果、HIV感染症治療に関し、すでに以下のことが明らかになっています。
(1).耐性HIVを発現させない
(2).臨床薬で最も効果が高い抗HIV薬「アジドチミジン(AZT)」の400倍以上、他の臨床薬の数万倍という高い抗HIV活性を持つ

(3).高度の耐性を獲得したHIV変異株に対しても非常に高い活性を持つ
(4).マウスだけでなくサルに投与しても、副作用なくHIVの増殖を協力に阻止し、CD4陽性T細胞(ヒト免疫系に必要な白血球)を感染から効果的に守る