ストレイトロード:ルート140(17周目)
- Rista_Bakeya
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市長との会見または大喧嘩を終えて車に戻る途中、藍は次の街へ行くと言った。だが乗車直後に私の顔を見て口を尖らせた。「やっぱり予定変更」指示通り進むと理髪店に着いた。「切ってきて。あなたがだらしないから市長に嫌われたの」散髪は構わないが、それを揉め事の原因にされるのはいい気がしない。
2015-12-10 19:12:09140文字で描く練習、811。散髪。 藍は身だしなみに気を遣うし、その時間を基本的に惜しまない。 ゼファールは気にしないタイプではない。何かと心配事や急用が多いのでつい後回しになりがちなだけ。
2015-12-10 19:12:46ある有力者を訪ねて門前払いされた藍は次の夜、その邸宅の屋根に登ると言い出した。私の肩を踏み台にして二階へ近づき、窓の周辺で何か探っていたが、警備員が向けた懐中電灯に掴まれた。「ただの探し物よ。確かこの辺に」「昨日追い返された子供だろう。主人の何を調べている?」既に見抜かれていた。
2015-12-11 19:32:02車が目抜通りに差し掛かった頃、藍が予告もせず助手席側の窓を開けた。すると夜の冷たい風に乗って、どこからか軽やかな鈴の音が聞こえてきた。それを伴奏に子供たちが聖夜の歌を歌っているらしい。暖かい光に包まれた街で、藍が鈴に合わせて同じ歌を口ずさむ。私は寒さに震えながら信号機を見上げる。
2015-12-12 20:20:25賑わう朝市の片隅で、巨大な魚が競りにかけられていた。人垣の向こうに吊るされた大きな尾鰭は藍の目の高さでも見えただろうか。「あんなになるまで捕まらなかったなんて、運が良かったのね」違う目線からの感想など届かない世界で、商売人達の声がより一層の熱を帯びる。決着へ向けた加速が始まった。
2015-12-13 21:21:42140文字で描く練習、814。競り。 怪物の侵略は人口と輸送の手段をいくらか削った。 人々が遠くの魚を諦めると、売れないならと漁が減る。 魚の敵が減る。
2015-12-13 21:21:48「野菜が足りないなら車で育てればいいじゃない」市場で食料を買い歩く途中、藍が突然提案してきた。何日も人里を通らない旅程では限られた素材の管理が生死を分ける。先日の長旅で空腹から得た教訓を彼女なりに活かそうと考えたようだが、育てる労苦を見落としていた。それもまた経験で覚えるものだ。
2015-12-14 19:24:52巨大な爪が人々に迫る。混乱の中心に往こうとした藍を宿の娘が止めた。「みんな他人よ。それもあなたが来るまで魔女を非難してた」「知ってる」「自分を危険に晒してまで助ける価値ある?」藍が掴む手を払い、振り返った。「その中に友達の友達がいたらどうするの」現実を語る眼差しが相手を怯ませた。
2015-12-15 19:20:24140文字で描く練習、816。他人。 人の縁は見えない。 だから時には知らず足に絡まって、罠のように引きずられる。
2015-12-15 19:20:31怪物が羽ばたいた瞬間、その背に藍が飛び乗った。屋上から遠ざかった怪物はすぐ異変に気づき、空中で暴れ出した。風の力を借りても安全に着地できると思えない。だが首にしがみつく藍は笑っていた。私はどうか。車内にあった毛布を抱えて走ったことは確かだが、その時自分が何と叫んだか覚えていない。
2015-12-16 22:43:38図書館の通路で二手に分かれた。私は奥の書庫で魔女のための探し物。藍は学校の宿題を進めるという約束だ。だが途中で様子を見に行くと、彼女は既にやり遂げた顔で本を読んでいた。「終わった」数学の証明問題の解答を見せられた。辻褄が合う内容の記述が一つもない。「違うの?じゃあ代わりに書いて」
2015-12-17 19:40:15「ここで待ってて。何かあったら電話する」協力を持ちかけてきた女が建物に入ったきり戻らない。携帯端末は一向に鳴らず、藍は神妙な顔で二階の窓を見上げていた。だが突然彼女は私に命令した。「裏に回って。電話が鳴ったらその人捕まえて」魔女は建物の窓を睨んだ。路地裏を取り巻く隙間風が冷たい。
2015-12-18 19:31:46丘の上にて休憩中、藍が小さな実をつけた草を摘んできた。「この前市場で見たの、覚えてる?」その色と形状は記憶にある。だが重大な違いを藍は、表情が演技でなければ、見落としている。「こういうの好きじゃないならわたし一人で…」彼女の口に運ばれかけた実を急いでもぎ取った。毒は避けるものだ。
2015-12-19 19:16:51追っていた泥棒を見失った。私が周辺の道を探す間に藍は近隣の家へ上がり、気づいた時には庭先で古い納屋を探っていた。「ちょうどよかった。手伝って」傾いた納屋の扉は少女の腕力では動かないらしい。まさか中に隠れた奴が抵抗しているのか。「隠れたら開かなくなったんだって」手助けをためらった。
2015-12-20 20:38:33研究所には職員の居住区があり、何故か藍の個室もあった。藍は生体認証らしき装置で解錠すると、私に留守番を命じた。「ここ、わたし以外開けられないから。出歩かないでね」どこかへ行く雇い主を見送った後、自分が研究の現場から締め出されたと気づいた。私は魔女の何なのか。恐らく誰も認証しない。
2015-12-21 20:37:18昼時の繁盛店を覗いたのは興味故だろう。だが藍は何を見たのか、入口の行列を掻き分け中へ飛び込んだ。「お姉ちゃん順番抜かした!」子供が騒ぎ出した。保護者としては放置できない。彼女を連れ戻すべく店内に入ると、既に従業員との掴み合いが始まっていた。「あなたが抜け駆けしたからわたしは…!」
2015-12-22 19:48:45