不知火に落ち度はない　42（節分編）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

さて、と。軽率に落ちぬいを開始するぞい。 #落ちぬい

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２月３日──節分。 立春の前日の文字通り「節を分ける」日である。 そこには邪気が沸きやすく、鬼が出やすいから豆を蒔くとからしい。 それを示すように本日の深海棲艦指数は６６。 かなり高めの数値が出ており、警報が発令されていた。 #不知火に落ち度はない

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今回の哨戒オーダーは二水戦メンツと球磨多摩組。 網に引っかかった連中を軒並み迎撃して、無事に節分の豆まきを迎えられそうである。 不知火は通信で海にも蒔いていいかと聞いてきてたな、そいや。 OKしたけど連中に効くのかね、大豆。 #不知火に落ち度はない

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「んじゃ北上様、あとよろしゅー」 「あいよ。兵頭っち、よくそんな柄のアロハもってんね」 お、わかる？ 北上様センスあんね？ そう。今日の俺はとっときのアロハを手に入れている。 この日のためにわざわざ海外から輸送して貰った特注品──虎柄アロハだ。 #不知火に落ち度はない

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「強そう？」 「うん、つよいつよい」 「イケてる？」 「うん、ズッキュンズッキュンって感じ」 はっはっは。そこまで褒められると照れるわ。 やっぱ虎柄って憧れじゃん？ 虎って強さの象徴みたいなもんじゃん？ #不知火に落ち度はない

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「で、その格好ってことは、今年の鬼は兵頭っち一人なわけ？」 「北上様、実はお前節分ときなんもしてねなえな」 「とーぜんしてないよー？」 ごくごく当たり前に仰る北上様。 この自分の関心ないことには一切無駄がない生き物ってすごいよな。 #不知火に落ち度はない

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「これから工廠課で豆撒き終わったら、くじ引きで決めるんだよ」 「だから毎年逃げる奴違うのねー」 「そゆこと。じゃ、行ってくら」 「はいはーい。あ、そういえばさ兵頭っち」 「おう？」 あんですか北上様。報告忘れでも？ #不知火に落ち度はない

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「ちょっと一発芸思いついたんだよね－。みてって」 「あ、はいはい。手短に頼むぜ」 どうせろくでもねえことだろうけど。 「ここに恵方巻があります」 「おう。あるな」 「口にくわえて」 「くわえて？」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「フェラチオしてるエロ漫画の顔」 「ひょっとこフェラ顔やめて」 「にゅっぷにゅっぷ」 「やめて北上様。ちんちんがせつなくなるから」 「興奮した？」 「ほんと最低で感動した」 「いえー。勝利」 ちゃんと食えよその恵方巻。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「いてらー」 「ほいほい、行ってきます」 そうして俺は司令室をあとにした。 さて、と。 今年も息災を願って豆をぶつけられますかね。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「つーわけで、みなさん今年も息災を願って豆撒きお願いします」 「お前ら、外に投げろよ。中に投げんじゃねえぞ」 おやっさんの言葉と共に、ぱらぱらとほどほどに豆が蒔かれる。 うむ。実に平和。これで厄除けになるならいいんだけどな。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「おにはー そとー」 ぱらぱら、こつん 「ふくわー うちー」 ぱらぱらぱら こつん おう？ さっきから何回か頭に当たってんのは気のせいか？ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「しねー ひょうどうー」 ばらばらばら ばちばちばち 「混浴ー よこせー」 ばらばらばら ばちばちばち 「十七駆と同じ寮にしろー」 ばちばちばちばち 「お前ら豆撒きだっつってんだろが！」 おもしろデモ活動すんじゃねえクソやもめどもが！！ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

振り返ると工廠課の若い連中みんな揃って中指立てておいでなんですよ。 お前ら最近態度が露骨になってきてねえか。 司令の本気をお見舞いしてくれるぞ。 「お前ら、あに遊んでンだ」 「は、主任。鬼が居たんで豆をぶつけました」 まだ鬼の面つけてねっつの。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ンなんで鬼が追い払えるか。これぐらい持ってこい」 いや、待っておやっさん。 その凶悪なフォルムのライフルis何。 「主任、さすがにそれはやりすぎじゃないでしょーかー」 「鬼が出てンだろ。遠慮いらねえよ」 鬼って俺のことでしょうか？ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「おやっさん。つかぬ事を聞くけどそれ何？」 「ガス銃。新型砲の試作ついでだ。動くなよ」 何でおやっさんスコープついてんのそれ。 つかターゲット俺なの？ 「ベアリング飛んでくるわけじゃねえよな」 「おう。豆が入るようになってる」 そりゃ安心だ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ちなみに威力は？」 「スチロールに穴開く程度だ。こんな風にな」 ぱしゅん、と音が一つして。 ぱあん、と俺の頭のお面が吹っ飛んだわけでして。 #不知火に落ち度はない」

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「おやっさん、それ禁止！ 明らかにおもちゃの域超えてる！！」 「そうだな。調整不足だ」 ごらんよ。工廠課の連中もどん引きですよこれ。 あざぐらいじゃ済まないんじゃないかな、このライフルは。 「悪いな司令」 「いや、いっけどさ。それもうしまっといてよ」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

こんな凶悪なライフル、うちで作ったとバレたらやばいしさ。 上の方から怒られちゃうじゃん。ねえ。 「いや、そうじゃなくてな」 「ん、なにがさ？」 と、頭をかがめた瞬間、ぱあんと再びはじけるお面。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「陽炎嬢ちゃん達に配ったあとなんだわ」 「ちょっと待って！？」 その言葉を聞いた瞬間、俺はその場から飛んでドアの陰に隠れた。 次の瞬間、俺の居た場所をひゅんっと、豆だった物体がかすめていった。 間違いなく頭直撃コースだね今の。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ちっ、と小さく舌打ちが聞こえた気がしたので、そっと入り口から鏡を出してチェック。 建物の端っこあたりに、ちらっと見えるツインテ。 「おやっさん。俺、聞いてないんですけどこれ」 「サプライズするっつわれてな」 なるほど。あのツインテめ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ちなみに威力わかってんのかね、陽炎は」 「さあな。俺は頼まれて作っただけだしな」 「どんな感じの？」 「お前がびっくりする程度だとさ」 おお、なるほど。 それじゃあ確かにびっくりしてるし正しいのかもな。 威力がでかすぎてびびるほうだけどさ！！ #不知火に落ち度はない