「壊星の嵐、抗うは希望の灯火」パート3

絶望が恐ろしいのは絶望を知らないからだ
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

リカルド氏とのコラボ企画「togetter.com/li/881395 」の一環です。第三部これにて完結

2016-02-06 22:05:17
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

第三部「壊星の嵐、抗うは希望の灯」

2016-02-06 22:06:27
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フライトリバティー、落ちる──── 新時代の空を駆ける、自由の象徴フライトリバティー。その翼は無残にももがれ、リランカ沿岸へ墜落した。だが瑠奈花達の視線はこの堅牢な飛空艇を堕とした凶風へ向けられていた。ソーサラーの不敵な笑い声が西方海域に木霊する

2016-02-06 22:07:36
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「これはまた…厄介なことになったわね」 離島棲鬼は引き気味に言った。先程までの嵐よりも更に強力な風が吹き荒れているのだ。無理もない。唖然として眺めていると、墜落したフライトリバティーから乗員達が脱出するのが見えた

2016-02-06 22:08:22
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「お前ら無事か!」 心配したリカルドと瑠奈花が慌てて駆け寄る。見たところ大きな怪我は誰も負っていない。瑠奈花はフライトリバティーの堅牢さを改めて実感した 「…大井はどこだ?」 瑠奈花の声を聞いて、リカルドは辺りを見渡した。彼女の姿だけが見当たらなかった

2016-02-06 22:09:18
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秋津洲も含め全員が黙り、俯いていた。やがて、山城が口を開いた 「墜落の直前に引き入れようとしたのですが、一歩届かず…」 「なっ…!」 龍驤は山城の報告を聞いて握り拳に力を入れた 「あんたが止めてなければ手が届いてたかもしれへんのに…」

2016-02-06 22:10:29
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「馬鹿言わないで。あのままだと貴方まで船から落ちてたわ」 龍驤は反論しようともせず俯いたままだった。山城の判断が正しいと頭ではわかっているのだ。瑠奈花もこれ以上は、何も言えなかった 「悪いけど、お通夜ムードは後にしてくれる?」

2016-02-06 22:11:20
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離島棲鬼の声で瑠奈花は我に返った 「とにかく今は、あれをなんとかしないと。そっちが優先よ」 瑠奈花は項垂れた顔で離島棲鬼を振り返った。表情を引き締めたつもりだったが、変わっていなかったかもしれない 「あなたの弟子でしょ?なら無事よ。今は今のことを考えましょ」

2016-02-06 22:11:54
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「…そうだな」 その通りだ。大井は自分が鍛えている。そう簡単に死にはしない。大井の無事を祈りつつ、瑠奈花はかの凶風に再び目を向けた 「んで、何か手はあるのか?」 リカルドは身体をこわばらせた。ハンターとして数多のモンスターと死闘を演じてきたリカルドにとっても、あれは規格外の相手だ

2016-02-06 22:13:10
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「考えはあるわ」 そう言って、離島棲鬼はフブキを見た 「ソウル・エンハンスメント。その力なら、きっと奴を倒せる。再生する身体を失った今なら殺せる。理論上はね」 「理論上、とは?」 フブキが首を傾げる 「単純な話よ」

2016-02-06 22:13:55
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「奴は空にいるでしょ?どうやって攻撃を当てるかが肝よね。貴方、空でも飛べたりする?」 「空…ですか」 フブキは少し思考した後、首を振った。跳躍して空中戦を仕掛けることなら出来なくもないが、何しろあの強風だ。何か足場でもないと、流石のフブキにも難しいものだろう

2016-02-06 22:14:46
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「ちなみにソーサラーを足場にする、みたいなのは無理ね。あいつにもう実体はない。だからこそ、魂ごと奴を砕けるソウル・エンハンスメントが必要なんだけど」 一行はフライトリバティーを見る。形こそ保っているものの、もはやボロボロで全く飛べそうにない。瑠奈花は頭を抱えた。そして思考を始める

2016-02-06 22:18:15
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ふと、瑠奈花は自分の手を見た。そして先程の戦いを思い出した。吹雪に向けて放たれた火球の軌道を瑠奈花はフォースで逸らせた。あの戦い、いや、ソーサラーにヴィジョンを見せられて以降、瑠奈花は自身に凄まじいまでの強力なフォースが身についたことを実感していた。今なら、やれるかもしれない

2016-02-06 22:20:05
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「秋津洲、フライトリバティーを飛ばすぞ」 「それは無理かも…せいぜい飛ぶので精一杯で、あの嵐には飛び込めないかも」 「問題ない。私が飛ばす」 そう言うと瑠奈花はゼンめいた姿勢で座り込み、瞑想を始めた。秋津洲はわけがわからないという顔でポカンとしていた

2016-02-06 22:21:07
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「私がフォースで、フライトリバティーを飛ばす。これなら奴に近づけるだろう」 一行は驚きを隠せない顔で瑠奈花を見た 「本気で言ってるの?あんなでかくて重い船を飛ばせるとでも?」 「できるとも。大きさは関係ない。やってくれるな?フブキ」

2016-02-06 22:23:32
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フブキは頷いた。その様子を見て吹雪が声を上げた 「私も行きます!何か力になりたいんです!」 「でも、奴を殺せるのはこっちのフブキだけよ。あなたが行っても」 「いや」 瑠奈花は離島棲鬼を制した。そして顔を上げ、吹雪の瞳を見た

2016-02-06 22:24:29
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「身体は大丈夫か」 「はい!」 「なら行ってこい。フォースが君と共にある」 吹雪は頷き、フブキと共に、飛空艇の突貫修理をすると言う秋津洲に続いた 「どういうつもり?あの子を連れていくメリットがあるのかしら」

2016-02-06 22:25:02
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「君が言ったんだろう。私の弟子は強いぞ」 瑠奈花は目を閉じ、心を落ち着けた。ソーサラーの風と、瑠奈花の呼吸の音のみが響く 「スゥーッ…ハァーッ…」 そして瑠奈花が腕を上げると、呼応するように、フライトリバティーがゆっくりと浮上した

2016-02-06 22:26:44
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「…こんなものかな。これが限界かも」 フライトリバティーの損傷は思ったよりもひどかった。その上、満足な修理ができる資材も時間も、今はない。それでも全力を尽くしてくれた秋津洲に吹雪は敬礼した 「ありがとう。ここからは危険ですから、あなたは降りてください」

2016-02-06 22:27:14
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フブキの提案を秋津洲は首を振って断った 「ううん、私も同行するわ」 「しかし…」 「この船は私と黛提督の魂そのもの。一心同体の存在なの。たとえどんな状況でも、私はフライトリバティーと運命を共にする」

2016-02-06 22:27:52
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秋津洲の瞳は強い意思を放っていた。これでは断れない、とフブキは苦笑した 「それにフライトリバティーの操舵手として、二人を無事に連れて帰る義務があるもの。私のことは気にせず、存分に戦って」 二人の吹雪は強く頷いた。自由の戦士を乗せて、翼は再び空を駆ける

2016-02-06 22:28:45
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「大したもんだ」 リカルドはふらつきながらも力強く飛んでいくフライトリバティーを見つめた。瑠奈花にここまでの力があるとは想定外だった 「驚いたか?」 瑠奈花が目を開き、リカルドに声をかける 「まあな」

2016-02-06 22:30:44
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リカルドが驚いたのは瑠奈花の力ではなく、彼が普通に話しかけてきたことだ。これだけの力を行使するのだから邪魔をしないようにと、リカルドは小声で呟いたつもりだった 「自分でも驚いている。皮肉なことに、アイツのおかげだ」 「ソーサラーか」

2016-02-06 22:31:01
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「厄介な相手よ。だが敵のことばかり気にかけてはいけない。吹雪達を信じよう」 瑠奈花は再び目を閉じ、瞑想に入った 「私たち仲間がついてる。こっちが有利だ」 「…ああ。瑠奈花=サン、なんか雰囲気も変わったな」 「そう見えるか?」

2016-02-06 22:31:43