【仇怨の炎、神風に煌めく】

己を見失えば誇りも失う
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「それは…本当なの?」「左様」 美しい赤紫の髪の少女は深海棲艦の話を聞き、項垂れた。「嘘…嘘よ…」彼女に齎されたのは、敬愛する上司の訃報だった 「誰が、誰が……を?」「それは、信じ難きことにて」

2016-07-13 23:36:09
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

少女はその男の名前を聞き、驚愕した 「まさか…彼が?」「彼は功を急ぎ、彼女を見捨てた。助けられる可能性があったにも関わらず」 少女の目から光が消えた。彼が…あの男が彼女を見捨てた? 「だが、彼女が死んだことは紛れもない事実」深海棲艦は淡々と語る

2016-07-13 23:37:30
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

少女は拳を強く握った。明かされた真実は、少女の瞳に怒りの炎を滾らせた 「力が欲しいか?復讐の力が」「復讐…」誰よりも尊敬していた女性。それを殺したのは、彼女と特別な仲にあったという男。 「憎い…あいつが憎い!この手で殺してやりたい!……の仇を取ってやる!」「ならば、来い」

2016-07-13 23:38:51
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

深海棲艦は少女に手を差し伸べた。「奴への復讐を求めるなら、深界へ来い。私の…ブレイズエッジの手を取るがいい」少女はブレイズエッジと名乗る深海棲艦を見つめた 「わかったわ…ブレイズエッジ。私は深界へ行く」仲間も、国も、何もかもを捨てる。覚悟を決めた少女はその日、地上から姿を消した

2016-07-13 23:40:28
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

【仇怨の炎、神風に煌めく】

2016-07-13 23:40:54
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

1隻の小さな輸送船が数隻の駆逐イ級に囲まれて航行していた。この輸送船は彼らが奪い取ったものだ。と言っても、交戦して奪還したものではない。彼らは無人と思われる輸送船が1隻放置されているのを見つけたのだ

2016-07-13 23:42:14
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

知能が悲しい駆逐イ級達は罠の可能性など微塵も考えず、これを大いに喜んだ。この輸送船を持ち帰れば昇進間違いなしである。もしかしたらご褒美に最上級のマグロが貰えるかもしれない。彼らは胸を踊らせながら、現在作戦展開中である北太平洋の前線まで輸送船を運んでいた。

2016-07-13 23:44:12
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

そして今、深海軍が本陣を構える北太平洋の小島に到達する。上陸した輸送船に、軽巡級の深海棲艦が数人近づいてきた。 「オイ、コレハナンダ」「輸送船デス。敵カラ奪ッテキマシタ」「奪ッタ?」 名も無き軽巡は唸った。たかだか駆逐数隻でこれを奪えたのか、それとも嘘をつく知能があるだけなのか

2016-07-13 23:46:00
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

それに駆逐達は輸送船と言い張っているが、よく見ればこれは、往年のポルトーフランセの戦いで人類側の兵器として猛威を振るった特二式内火艇に似ている。鹵獲解析され深界の新たな兵器となる可能性を鑑みれば、人類がこれを放置するとは考えにくい。だとしたら…罠の可能性がある

2016-07-13 23:47:26
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「コイツヲ調ベロ」軽巡は部下に調査を命じる。後期型とはいえ、やはり駆逐級の知能レベルは悲しいものだと愚痴を漏らす。 「ナンダオマエ!」「ギャーッ!」軽巡の背後で部下の悲鳴と、鮮やかで独特な音が響き渡る。振り返ると、ハッチから飛び出した小さな人影と、エメラルドの光が目に映った

2016-07-13 23:48:48
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

その姿は紛れもなく…かの光刃の英雄!奴が中に潜んでいたのだ! 「エエイ、ヤハリ罠カ!コイツラヲ片付ケロ!」光刃の英雄──瑠奈花は内火艇から華麗に飛び降りる。それに続き、光刃の剣士が1人、2人…いや、3人飛び出してくる!名も無き軽巡は最後に飛び出した剣士、清霜の光刃に倒れる!

2016-07-13 23:50:26
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「奇襲は成功だ!設営隊の到着までにこの島を制圧する!続け!」ライトセイバーを掲げた瑠奈花に続いて、大井、U-511、そして清霜が、5,60は越えるであろう深海の軍勢に飛び込んでゆく!

2016-07-13 23:51:14
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

その戦ぶりは実に鮮やかだった。突然の奇襲に深海軍の指揮系統は混乱、一見多勢に無勢に見えながら、光刃の戦士達の勢いは止められない。 あらかた制圧し終えたところで、設営隊と味方本隊が到着、残った深海棲艦は散り散りに逃げ去っていく。清霜はその中に紛れる小さな影を見落とさなかった

2016-07-13 23:51:39
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「あれ…PT小鬼群!」「む?」 瑠奈花は清霜の言葉に反応を見せた。彼は先日の礼号作戦での清霜の冒険譚を聞き、小鬼らの母たる集積地棲姫に興味を示していた。ここにPT小鬼群がいるならば、集積地棲姫もいる可能性が高い。そして、彼女を回収していったという、ディープ・オーダーなる者達も

2016-07-13 23:54:12
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「しれーかん!もしかして!」「集積地棲姫か…。近くにいるのかもしれない。探してみる価値はあるやもな」 瑠奈花は清霜と共に、島の一角、深海の雑兵が大勢いる区画へ逃げ込んだ小鬼達を追った

2016-07-13 23:55:59
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

群がる深海棲艦を切り払い、瑠奈花と清霜は奥へ進んだ。そこにいたのは、おそらくこの島の深海軍のボス、そして彼女を追い詰めるプリンツ、菊月、天龍。しかしそのボスは、瑠奈花と清霜が想定していた集積地棲姫ではなかった。小鬼達もいつしか、どこかへ消え去っていた

2016-07-13 23:57:36
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

どこかハイカラな雰囲気を漂わす漆黒の和装に身を包んだ少女。右手には小さな身体に似つかわしくない巨大な深海の艤装。雪花の勇将3人に引けを取らない武勇の持ち主。 「あれ、集積地棲姫さんじゃないね」「ふむ…」 「お前は…」漆黒の深海棲艦が、瑠奈花の姿を捉えた

2016-07-13 23:58:58
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

その瞬間、漆黒の深海棲艦の目つきが変わった。「やっと…やっと会えたな、瑠奈花ァ!」漆黒の深海棲艦が瑠奈花に突撃!プリンツらが抑えるも、3人がかりですら押し返さんとする勢いだ! 「気をつけろ!こいつ意外とつええぞ!」天龍が吠える!「私の名を知っているな。どこかで会ったことが?」

2016-07-14 00:00:57
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「邪魔をするな!うああぁぁーッ!」右手の巨大な艤装がプリンツ達をまとめて吹き飛ばす!「私は駆逐古鬼!お前の死を望む者!」駆逐古鬼と名乗る深海棲艦が右手から砲弾を撃ち込む!「危ない!」砲弾は清霜のキネシスにより、瑠奈花の目の前で止まる 「この状況で私を殺せると?」

2016-07-14 00:02:48
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

清霜が砲弾の軌道を変え、虚空へ吹き飛ばすと、天龍達が復帰した。5対1。駆逐古鬼は劣勢に立たされた 「何人いようと同じこと!私はお前の首さえ取れれば良い!」「させるかよ!」その時! 「加勢する!」駆逐古鬼の正面に2本の火柱が上がり、後方からもう一人の深海棲艦が火柱の間に降り立つ!

2016-07-14 00:05:43
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「お前は?」瑠奈花はソレスを構え警戒する。突如現れた深海棲艦は文字通り斜に構えた独特な姿勢で、歪な剣を向けていた 「ブレイズエッジ!邪魔をするな!」「貴女こそ状況をよく弁えよ。今奴に挑んだところで犬死が関の山」「くっ!」

2016-07-14 00:07:07
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

新手の深海棲艦は敗走する駆逐古鬼を庇うように瑠奈花達の前に立った 「貴方のことは知り得ている、光刃の英雄よ。我が名はブレイズエッジ」「ブレイズエッジ…ネームドか!」「左様」 ブレイズエッジは背後の駆逐古鬼を見やると、不可思議なハンドサインと共に術式を展開した

2016-07-14 00:09:43
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「今は期ではない故、ここは退く。いずれまた相見えようぞ」ブレイズエッジは連続バク転で距離を取ると、自信と駆逐古鬼を巨大な火柱で包み込む。火柱が収まる頃、2人の姿は忽然と消えていた。

2016-07-14 00:11:32
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

かくして、雪花艦隊による上陸作戦は成功、飛行場適地として、前線飛行場基地の設営が開始された。しかし、瑠奈花達の間には、新たに現れた謎の敵に対する懸念が残り続けていたのだった。

2016-07-14 00:11:50
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