【仇怨の炎、神風に煌めく】

己を見失えば誇りも失う
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

【仇怨の炎、神風に煌めく】#2

2016-07-16 21:09:36
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「何故止めた!瑠奈花を殺すチャンスだったのに!」とある海域の海底洞窟に、駆逐古鬼の声が谺響する 「落ち着け。艦娘達を突破して尚且つ、瑠奈花の首を取る力が自身にあるとお思いか」 駆逐古鬼はすぐ大人しくなった。彼女にとってブレイズエッジは昔からの恩師。その言葉は何より心に響くのだ

2016-07-16 21:11:55
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「…ごめんなさい、ブレイズエッジ。冷静さを欠いていたわ」「奴は今やただの兵士ではない。無策で突っ込んでも討てますまい」 駆逐古鬼は静かに瞳を滾らせ、ブレイズエッジの手を握った 「私はどうすればいい?私に道を示してくれ」 駆逐古鬼は頭を垂れた。私を導けるのは、この人しかいないのだ

2016-07-16 21:13:25
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「着水ーッ!」 秋津洲の掛け声と共に船底からスクリューが飛び出し、フライトリバティーは水面へ降り立った。ゴォーッという大きな音と船体の揺れが収まると、フライトリバティーは順調に航行し始めた。

2016-07-16 21:14:42
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「いやあ、航海モードはあまり使う機会がないからうまく機動するか不安だったの」 秋津洲が冗談なのか本気なのかわからない声で笑った。隣では吹雪が顔を青くしている。相変わらず飛空艇が苦手なようだ 「それで、この辺りで間違いないのだったな」瑠奈花は菊月に確認した

2016-07-16 21:15:57
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

この海域へ来たのは、件の深海棲艦、駆逐古鬼を追うためだ。彼女の顔をバッチリ見ていた菊月は早速千里眼で彼女を追い、居場所と思しき海域を特定したのだ 「余程のそっくりさんでもない限りは、間違いない。奴はこの辺にいる」菊月は短鉄鞭で肩を叩きながら海を見た。船に乗るのはなんだか久しぶりだ

2016-07-16 21:18:04
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「何故海で待ち構える?強襲でもされたらどうする」「なら受けて立つまでだ。彼女の目的は私なのだからな」 瑠奈花は懐から写真を取り出した。瑠奈花の執務室の机にしまってあった写真だ 「“神風”を覚えているか?」「神風?」聞き覚えのある言葉だった。菊月は記憶を辿った。「あの神風か」

2016-07-16 21:19:35
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

神風。かつて門川龍興の麾下として、一部隊を率いていた艦娘。門川は艦娘を実力で登用する男だ。 「思えば大したやつだったな。小さいのにしっかり者で、リーダーシップもあった。当時の海軍にしては稀有な人材だった」彼女が現役で戦っていたのは大戦初期の頃。当時のことをよく知る者は今や数少ない

2016-07-16 21:21:17
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「きっと今でも通用するだけの力を持っていた。それがある日…」 行方不明。その言葉を言いかけて、菊月は瑠奈花と顔を合わせた 「まさか…あの深海棲艦が神風だとでも言いたいのか?」「装甲空母姫のように、人間が深海棲艦に変異した例もある。あながちないとも言い切れん」

2016-07-16 21:24:13
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「根拠は?」「聞いた話では、あの時期の深海棲艦はまるで第二第三の装甲空母姫を生み出さんとするように、艦娘の鹵獲に躍起になってたそうだな」「そうだ。多くの同胞が捕らわれ、望まぬ姿に変えられた」海軍が本格的にダメージコントロールの徹底に力を入れ始めたのはこれがきっかけだ。

2016-07-16 21:25:32
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「だから、あいつが神風だと?」それはあまりにも短絡的だ。次の言葉を悟ってか、瑠奈花は腕を掲げて菊月を制した 「それに、駆逐古鬼のあの目。見覚えがある」「それは、お得意のフォースか?」「ただの勘だ」 菊月はやれやれと首を降った。そして短鉄鞭を構えた。かの復讐者の到来を予感したからだ

2016-07-16 21:26:48
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「司令官!敵襲です!」少し遅れて吹雪が叫んだ。「では、行ってくるぞ」「手筈通りにな。取り巻きは任せる。駆逐古鬼をこちらに引き付けてくれ」 菊月は艤装を素早く装着し、海へ飛び降りた。吹雪、菊月、島風、そして天龍。瑠奈花は彼女らを見送った。動く必要はない。敵は向こうからやってくる

2016-07-16 21:29:11
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「敵の数は…20、いや30はいる!」「奴さんも本気っぽいな。あの変なナナメヤロウは?」「いないみたいです!」 吹雪の電探が捉えた敵の数は思ったよりも多い。そうこなくては。天龍は滾っていた。 「上等だァ!島風!アレを頼む!」「もち!」島風に付いて回る連装砲ちゃんが輝きを放ち始める

2016-07-16 21:31:27
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

説明しよう! 島風の相棒である3体の連装砲ちゃんは、それぞれ島風のヘルメット・ハンマー・背部スラスター、魚雷発射管は巨大な籠手へと変形する。これが海軍技術研究本部の傑作、「島風型専用艤装合体式重金属追加装甲システム」である。これにより島風は圧倒的なスピードと力を両立したのだ!

2016-07-16 21:33:52
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「ナンダアレ!」「拙ソウダゾ!早ク撃テ!」「イヤ、変形ガ終ワルマデ待テ!」深海棲艦達は動揺! 「敵艦隊見ゆ!合金島風、行っきまーす!」島風は超合金連装砲ちゃんハンマーを超速で振り回しながら、深海棲艦の群れの中へお構い無しに飛び込んでいく!

2016-07-16 21:35:29
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「何度見てもカッコイイぜ!」「ふ、それには同意する」「あまりの浪漫に気圧されたのかどうかは不明ですが、敵艦隊に駆逐古鬼の姿は見えません!」 駆逐古鬼は恐らく、瑠奈花の元へ向かったのだ。普段なら焦るところだが、今回は想定通りの展開だ

2016-07-16 21:36:40
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「さあ、俺達も負けちゃいらねえ。島風に続け!」刀を掲げ走り出す天龍に、吹雪と菊月も続いた

2016-07-16 21:38:11
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

一方その頃、瑠奈花はフライトリバティーの甲板で駆逐古鬼と対峙していた。後ろの物陰から秋津洲がモンキーレンチを握りしめて隠れているが、駆逐古鬼は気にも留めなかった。標的はあくまでこの男だけなのだ 「この間は退いたが、今度は負けない。覚悟!」

2016-07-16 21:41:55
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

駆逐古鬼は艤装を瑠奈花に向け、砲撃した。今回はキネシスの少女もいない。この一撃を止めることなどできない。そう思った だが駆逐古鬼の思惑は外れた。弾丸はライトセイバーで容易く斬り捨てられた。 「だったら!」砲撃が効かないなら接近戦だ。駆逐古鬼は瑠奈花に向けて艤装を振り下ろす!

2016-07-16 21:43:37
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

彼女の艤装はブレイズエッジが特注してくれたフリク合金製の一品だ。光刃の英雄との打ち合いにも十分耐えてくれる。駆逐古鬼は一撃一撃に憎しみを込め、ひたすら攻撃した。しかし何度やっても、瑠奈花には届かない。細い筈の光刃が堅牢な壁に思えた。

2016-07-16 21:44:48
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「あっ…!」最後の一撃が空振り、駆逐古鬼は体勢を崩して転んだ。瑠奈花に足払いされたのだ。 足払いだと?こちらは命だって捨てる覚悟で対峙しているというのに、そんな簡単にあしらわれていると思うと腹が立つ 悪足掻きに顔に1発ぶち込んでやろうか。そう思った駆逐古鬼は瑠奈花の顔を狙った

2016-07-16 21:46:03
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

次の瞬間、鈍い衝撃が走り、駆逐古鬼の右手を痺れさせた。光刃に耐性を持つはずの艤装が割れ、細い腕が晒される。継ぎ目でも狙ったのだろうか 「聞きたいことがある」瑠奈花は光刃を突きつけながら言った。「君は神風か?」 「神風…違う。その名前は捨てた。私は駆逐古鬼だ」「やはり神風か」

2016-07-16 21:47:59
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「私を恨んでいるようだが」「とぼけるのか!」こいつは自分のしでかしたことを覚えていないのか!「忘れもしない…お前が、お前が“吹雪”を殺したんだ!」「…!」 “吹雪”とは即ち、今は亡き春雨吹雪のことだ。最早勝てぬと悟った駆逐古鬼は、せめて己の罪をわからせてやろうと声を荒らげた

2016-07-16 21:49:33
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「吹雪はお前を慕って…いや、愛していた!なのにお前は、吹雪を見殺しにしたんだ!」神風も吹雪のことは慕っていた。まるで本当の姉のように。吹雪が瑠奈花と恋仲になっていると知った時は寂しかったが、素直に祝福していた。それをこの男は!

2016-07-16 21:51:11
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