【アプレンティスの帰還】

愚者に従うものもまた、愚者となる
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

愚者に従うものもまた、愚者となる

2016-02-21 22:30:58
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「はあっ…はあっ…」 雨が降りしきる横須賀の街を、茶髪の少女が人混みを掻き分けて走ってゆく。その後ろには、彼女を追う人物が2人。彼らは濃い茶色の軍服と軍帽を身に纏い、「憲」「兵」の字が彫り込まれたメンポを着用していた。

2016-02-21 22:32:25
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道行く人々は皆、彼らに道を開ける。それもそのはず、彼らはこの横須賀を守る、地上最強の憲兵隊である。人々は彼らが追う少女を捕まえようとも助けようともしない。憲兵が出るということは、それだけ危険な人物である可能性があるからである。関わるべきではないことを彼らはよく知っているのだ

2016-02-21 22:33:29
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

やがて少女は路地裏へと駆け込んだ。せめてどこかに隠れなければ、やがては彼らに捕まってしまう。だが少女には、自分が何故追われているのかわからなかった 「なんなの…なんで私は追われてるの…?」 やがて少女の脚は走る力を失い、力なく座り込んでしまった。憲兵はすぐそこまで迫っている

2016-02-21 22:34:25
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「あいつらは何者?私は…誰なの?」 「ここにいたのか」 少女は振り返った。今は使われていないと思われる廃ビルの扉が開き、金髪の女性が少女を見ていた 「あなたは…?」 金髪の女性は慌てて大井の手を引っ張り、ビルの中に引きずり込み、扉を閉めた

2016-02-21 22:35:28
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「な、何するの!?」 「しっ!静かに。奴らに気づかれるぞ」 金髪の女性は少女の口に人差し指を当てた。ゆっくり外を見ると、そこには先程まで少女を追っていた憲兵が走ってきた。憲兵はメンポを外し、辺りを注意深く見渡した 「どこに行った?」「こっちに来たはずだが…」

2016-02-21 22:37:34
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少女は怯え震えた。金髪の女性は少女を後ろから優しく抱きしめ、口を塞いでくれた。おかげで少女の恐怖は少し紛れた 「なあ、さっきの子って…」 「あの子だろ?あの宿毛湾の。捜索願の出てた」 「やっぱり…間違いないな」

2016-02-21 22:39:23
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金髪の女性は2人の会話を注意深く聞いていた 「どうする…瑠奈花殿に報告するか?」 「いや、やめておこうぜ。折角見つけたのに見失ったなんて言ったら落ち込むぞ」 「そうだな…噂じゃあの人、だいぶショックを受けてるみたいだしな…」

2016-02-21 22:40:45
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「もう少し探して、見つかったら報告しようぜ」 「だな」 憲兵達はメンポを着け直し、去っていった。姿が完全に見えなくなったのを見届けた後、金髪の女性は少女を解放した 「最近の憲兵はそれなりにかっこいいが横暴で参るなあ」 女性はタイを締め、少女を見た

2016-02-21 22:41:38
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「心配したぞ大井。逃げ遅れたのかと思ったが、無事でよかった」 少女は首を傾げた。その名前には聞き覚えがない 「大井…私の名前?」 「さあ行こう。力を貸してくれ」 女性は少女に手を伸ばした。が、少女はその手を取ろうとはしなかった

2016-02-21 22:42:46
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「あなたは誰なの」 「忘れたのか?さては記憶を失ったか?それで行方不明だったのか」 女性は一人で自問自答を繰り返した 「どういうこと?私の何を知ってるの?」 「なんでも知っている。私は君の友達だ」 友達。その言葉に、冷えきっていた少女の心が少しだけ温もりを取り戻した

2016-02-21 22:44:41
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「大井。君にはフォースという特別な力がある。フォースを使えば、きっと記憶を取り戻せるはずだ」 「本当に!?」 少女は立ち上がり、女性に迫った。女性の顔は自信に満ちていた 「どうすればいいの?」 「大事なことを思い浮かべろ」

2016-02-21 22:46:06
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そう言うと、金髪の女性は少女に金属の筒を手渡した 「これは?」 「それはライトセイバー。君の武器だ。これには君の思い出が詰まっている」 金髪の女性はライトセイバーを受け取った少女の手を包むように握った

2016-02-21 22:47:27
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「ゆっくりでいい。考えるんだ。最初に思い浮かんだのはなんだ?」 少女は目を閉じ、ライトセイバーを通じて記憶を辿る。様々な光景が頭の中をフラッシュバックする 「船…?工具が沢山置いてある…。雪。氷に包まれた島。…少年がいる」 「少年…そいつは“瑠奈花”だ」

2016-02-21 22:48:29
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「瑠奈花…?」 「いい調子だな。それを起点に、もっと先の出来事を思い出せ」 少女は更に記憶を辿る。空を翔ける巨大な船。嵐。飛び交う鮫のような化け物。そして…首から上がない女性が頭を腕に抱え、笑いながらこちらを見つめている光景が思い浮かんだ

2016-02-21 22:49:39
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宿毛湾・雪花 瑠奈花の元に、スーツ姿の男性が1人訪ねてきた 「お初にお目にかかります、瑠奈花殿。フリート・アームズ・コーポレーション、兵器開発部門のフジクラと申します」 フジクラと名乗る男性は丁寧に挨拶して、瑠奈花に名刺を渡した 「こちらこそ、日頃お世話になってます」

2016-02-21 22:51:20
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それを聞いた子日が首を傾げた 「お世話になってる?どゆこと?」 「知らないんですか?子日さん」 すっかり日本語が堪能になったU-511、通称ユーが呆れて言った 「FACは対深海棲艦向けの兵器を開発している会社だ。本社はアメリカ。今や世界的なシェアを誇る大企業だ」

2016-02-21 22:52:31
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瑠奈花が子日に説明した 「その中でも最も力を入れているのが艦娘向けの装備だ。艤装はもちろん、暁の盾や君のギミックアームもこちらの製品を使っている」 「その中でも日本支社の製品は、独自の技術を取り入れたオリジナル製品なんです。多少値は張りますか、日本のモデルは人気が高いのですよ」

2016-02-21 22:53:41
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子日はへぇー。と相槌を打ち、自分の手をまじまじと眺めた 「いや、申し訳ない。以前は営業部に勤めていたもので、つい癖で」 「さぞ仕事熱心だったのでしょう」 瑠奈花は笑みを浮かべてフジクラに尋ねた 「今日はどんな用でこちらへ?」

2016-02-21 22:54:51
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「1つ、お願いがございまして」 フジクラは改まった様子で答えた 「内密な依頼なのですが、兵器の輸送の護衛をして頂きたいのです」 「護送ですか?」 フジクラは頷いた。子日とユーは顔を見合わせている

2016-02-21 22:55:58
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「現在兵器は、群馬県の山奥の研究所に保管してあります。これを横須賀の工廠に運ぶまでの間、守って貰いたいのです」 瑠奈花は腕を組んでフジクラの顔を覗いた 「失礼ですが、もう少し詳細を教えて頂きたい。その兵器はなんなのか。何故陸路の護衛を私たちに頼むのか。理由はなんですか?」

2016-02-21 22:58:03
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