【禁忌】

平和とは勝ち取るものだ
0
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

〜宿毛湾〜 トラック泊地襲撃(冬イベ)の数日前… 宿毛湾泊地のとある司令部のミーティングルームに艦娘達が集まっていた 時刻は既に22時を回っている。本来なら消灯の時間だ

2015-04-19 02:05:36
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花「やぁ、みんな集まっているな」 一人の男が部屋に入ってくる。その男はこの司令部の指導者にして、艦娘達をこの部屋に集めた張本人だ 天龍「おう、こんな時間になんの用だ?」 子日「子日…眠い…」

2015-04-19 02:07:38
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花「なに、今後の方針について少しばかりミーティングを、と思ってね」 瑠奈花はテーブルにどさっと資料を置いた。菊月はその中に「異動届」と書かれた紙を見つけたが、黙っていた 赤城「今後の方針…?」 瑠奈花「先日の出来事で、少し考えが変わった、とでも言おうか」

2015-04-19 02:08:48
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

ゴホン、と咳払いをすると瑠奈花は話し始めた 瑠奈花「本題に入る前にちょっとした与太話をしよう。みんなは深海棲艦はどんなモノだと思ってるかな?」 一同にざわめきが起こる。質問の意図が掴めていないのかもしれない

2015-04-19 02:10:01
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

雲龍「…かつて海に沈んだ者達の未練、怨念、そういったものが具現化した存在、では?」 沈黙を破った雲龍の言葉にほぼ全員が頷いた 瑠奈花「なるほど。それが君たちの意見というわけだ」 白雪「…何か間違っていますか?」

2015-04-19 02:10:30
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花「それはわからない。世間一般でまかり通っているその理論が正しいのか、それはいまだ証明されていないのだ」 白雪は眉を顰めた 菊月「お前はどのように考えているのだ?」 瑠奈花「深海棲艦についてはわからない。ただ、深海の住人はオカルトな存在ではないと思っている」

2015-04-19 02:12:04
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

大井「それはどういう…」 瑠奈花「先日、レ級の討伐に向かった者ならば聞いたはずだ。“深界の法で然るべき裁きを与える”と言ったのをね」 龍驤「戦艦棲姫やね…」 瑠奈花「私は一つの仮説を立てた。この星の海の底には人間とは別の種族が住み、国家として成り立っているのではないか」

2015-04-19 02:13:06
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

艦娘達はますますざわついた。深海棲艦は討ち祓うべき悪霊ではなく、意思のある知的生命体だというのだ 曙「そんなことって…」 綾波「考えたこともありませんでした…」 瑠奈花「それは無理もない。君たちは深海棲艦の秘密について疑問を持つなど決してありえないのだから」

2015-04-19 02:13:36
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

比叡「どういうことです?」 瑠奈花「今この国、いや世界中には多くの提督と艦娘がいる。最早数え切れないほどに。それだけ深海棲艦と関わる人がいながら、彼らの秘密について追求する者がほとんどいないのはなぜだと思う?」 島風「??難しいことはわかんなーい」

2015-04-19 02:14:14
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花「それは、提督・艦娘の両者がまず通うことになる士官学校の教育の方針によるものだ」 瑠奈花は持ち込んだ資料をパラパラとめくりながら話していく 瑠奈花「細かいことは割愛するが、要点だけを纏めると、君たちは深海棲艦の謎について疑問を持つことのないように教育されているんだ」

2015-04-19 02:15:05
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

高雄は目を丸くした 高雄「それって…」 瑠奈花「詳しくはわからん。だが君達や提督が受けてきた教育にはこういうことが秘密裏に仕込まれているんだ。怖い話だね」 吹雪「深海棲艦の秘密に興味を持たないように、潜在的に刷り込まれている、ってことですか?」

2015-04-19 02:16:12
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花「そんなところだろうね。実際君達に例外はいなかった」 言葉を失った艦娘達に瑠奈花は淡々と語り続けた 瑠奈花「なぜそんなことを?という顔をしているな。それはズバリ、“禁忌”だから、だと思うよ。大本営にとってね」

2015-04-19 02:16:45
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

暁「禁忌…」 瑠奈花「何が禁忌なのかは推し量れないが、なにかやましいことや隠したいことでもあるのかもしれないな」 長良「一ついいですか?」 瑠奈花「なんだ?」 長良「…禁忌に触れたら、どうなるのですか?」

2015-04-19 02:18:18
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

吹雪は背筋が凍るのを感じた。「禁忌を犯す」この言葉がどれほど恐ろしく罪深いことか直感したのだ 瑠奈花「…間違いなく消されるだろうね」 予想通りの答えだ。身体を竦める吹雪を白雪は優しく抱きしめた 瑠奈花「先程の教育も完璧じゃあない。意図せずとも禁忌に触れる者も当然出てくる」

2015-04-19 02:18:54
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花「そういった者は大抵消される。表向きは出撃中のトラブルだとか、施設の爆発事故だとか言ってね。深く踏み込まなければ左遷で済むかもしれないが」 長良「…!」 一同に沈黙が訪れた。あくまでも彼の仮説だということはわかっている。しかし…

2015-04-19 02:19:42
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

曙「…ところで、あんたは例外なの?」 瑠奈花「ああ。知ってる者もいるかもしれないが、私は正規の教育を受けていないからな。 私は引退した戦略家に師事していた。その戦略家は正規の教育を受けていたが…彼は教育者としては未熟だったようだな」

2015-04-19 02:20:26
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花「例外は他にもいる。例えば、ザハ提督のような異邦人だ。彼は正規の教育を受けたようだが、あの人は元々この世界の常識を知らない。そういった人は潜在意識に縛られる可能性は低くなる」 曙「ふぅん…」 瑠奈花「彼は薄々、何かに気づいているのかもしれないね」

2015-04-19 02:20:57
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花「与太話はおしまいだ。それで今後の方針についてだが…」 赤城「まさか…」 瑠奈花「私は深海棲艦の社会を探してみようと思う。彼らには少なくとも司法が存在することがはっきりしているからな」 艦娘達は絶句した。それはつまり、「禁忌を犯す」ということだ

2015-04-19 02:21:27
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花「深海棲艦に国家があることを期待し、究極的には彼らと和平を結び、このくだらない戦争を終わらせる。 友人の受け売りだが、言葉を交わせる者同士で争う必要などない。手を取り合える道は必ずある。私はそう思う」 大井「志はすばらしいと思います。ですが…」

2015-04-19 02:22:59
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花「君の言わんとすることはわかる。これは当然、禁忌を犯す行為だ。だけどそれを恐れていたら、いつまで経っても戦争は終わらない。 歴史は、繰り返されるんだ。 かつての大戦でこの国が降伏を選んだように、時として大いなる決断が必要になることもある」

2015-04-19 02:24:49
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花「私は不当な戦争で人々の命が奪われる。こんな世界を変えたい。この世界に平和と秩序をもたらしたい。 そのためならどんな禁忌でも破る覚悟がある。勇気ある決断を下す覚悟があるんだ! それが私の生き様だ」 全員が黙って瑠奈花の話を聞いていた

2015-04-19 02:25:15
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

大井「…それでも私は賛同しかねます」 皆が一斉に大井に目を向けた 大井「そんなことをしたら、貴方が消されるかもしれないのですよ。私はそんなの耐えられません。 皆だって同じはずです。口ではなんと言おうと、ここにいる者は皆貴方を慕っています。」

2015-04-19 02:26:52
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

大井「貴方はわかっているのですか?貴方は独りじゃない 皆がいて、初めて「雪花」なんですよ。 貴方に覚悟はあるかもしれないけど、皆もそうだと思わないでください。 着いていきたいけど…今回は相手が悪すぎます。」 大井は若干涙ぐんでいた。あの大井がこんな姿を見せるとは思わなかった

2015-04-19 02:28:12
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花「…ここまで反対されるとは思わなかったよ。これも奴らの教育の賜物かもしれないな」 瑠奈花は大井を抱きしめ、ハンカチで涙を拭いた 瑠奈花「だが君たちは、人々の平和を守る、誇り高き兵士達だ。その妨げになると判断したなら私であっても撃ち殺す、そのくらいの覚悟は持つべきだ」

2015-04-19 02:29:01