【アプレンティスの帰還】

愚者に従うものもまた、愚者となる
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「イブ…その兵器どうするつもりなの?」 「言っただろ。これは破壊して」「嘘」 大井が言葉を遮る 「本当は違う。何を企んでいるの」 「友達の言う事を疑うのか?」 「私の仲間は雪花よ」 イブは怪訝な顔をして、やれやれと首を振った

2016-03-05 23:31:18
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「大井…お前のことは本当に友だと思ってた。だから無理矢理思考を操るんじゃなく、自然な形で仲間に引き入れようとしたんだが」 本性を現した。大井は落胆した。私だってあなたを友達だと思っていたかったのに 「私の見せた幻は本物っぽくはなかったか?」

2016-03-05 23:32:17
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「…どういうこと?」 「ソーサラーとかいう奴だよ。お前の心を覗いて、ソイツの事を恐れているのを知ったから、お前の記憶を頼りに再現したんだがな」 「まさか…」 今まで何度か見てきたソーサラーの幻影。奴の残留思念か何かが心に取り憑いているものだと思っていたが…

2016-03-05 23:33:30
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「わかるぞ、お前の考え。元々夢に見ていたのは違うが、ソーサラーの幻影を見せていたのは私だ」 「バカな、どうやって…」 「もう知ってるんだろ?私が心を操れるって。幻を見せるのくらいわけないことさ」 全ては、イブが仕組んだことだったのだ。大井はライトセイバーを握る手に力を入れた

2016-03-05 23:34:35
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「最初から私を利用するつもりだったのね…!」 「正直、あそこからは一生出れないと思ってたからな。利用しない手はなかった。おかげで助かった。ありがとな」 ユーの言う通りならば、この女は相当な危険人物だ。野放しにする訳にはいかない。大井はライトセイバーを振り下ろし、斬りかかろうとした

2016-03-05 23:36:00
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「おっと、そこまでだ」 イブが大井を指差すと、大井の身体は硬直した 「私はお前を意のままに操れるんだぞ。止められやしない。“ライトセイバーをしまって、ここから立ち去れ”」 イブは大井の頭に語りかけた。大井は顔を歪める 「こ、ここから…立ち去る…」 「そうだ、それでいい」

2016-03-05 23:37:03
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大井はゆっくりとライトセイバーを下ろす。それを見て、イブは勝利を確信した。だが… 「…フォースを舐めないで」 「何?」 大井は再びライトセイバーを振り上げ、イブを睨む! 「そんな小細工、今の私には通じない」 力強い気迫と共に、ライトセイバーを振り下ろす!

2016-03-05 23:38:17
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「グワーッ!?」 緑の光刃が、イブの身体を斜めに切り裂き、焼け焦げた傷を作り出す!そして今度は心臓を狙い、突き刺す! 「イヤーッ!」「グ、グワーッ!?」 光刃はイブの身体を確実に貫く。ライトセイバーを抜くと、イブはふらふらと振り向き、兵器にもたれかかるようにして倒れた

2016-03-05 23:39:06
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「ハァーッ…ハァーッ…」 大井は倒れたイブを無感動に一瞥した。その後、ユーと子日が駆けつけ、目を丸くした 「大井さん、これは…」 「ケリはつけたわ。あなた達に剣を向けた贖罪になったかしら」 ユーは何も言わず、頷いた。ひとまず、この騒動は収まったのだ

2016-03-05 23:41:12
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Beep!Beep!突如警報が鳴り響く!大井達は飛び上がった 「どうした!?」 警報を聞いたフジクラが走ってきた。そして兵器を見て、顔面蒼白となった 「フジクラさん!何がどうなってるの!?」 子日が慌てて尋ねる

2016-03-05 23:42:21
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「まずい…この音は、兵器が作動してしまったことを知らせる警報だ!」 大井は咄嗟に、イブの身体を確認した。恐らく倒れ込んだ際にどこかにぶつかり、運悪く作動してしまったのだ! 「これが作動したらどうなるわけ?」 子日は大井に、先程フジクラから聞いた話をそのまま伝えた

2016-03-05 23:43:23
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話を聞いた途端、大井の顔からも血が引けてゆく 「つまり、この辺り一帯が丸ごと消し飛ぶってこと!?」 「は、はい…恐らく山自体も無くなってしまう程の威力かと…」 大井は驚愕した。この兵器のどこにそれほどまでの威力があるのというのだ!

2016-03-05 23:44:38
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「早く逃げないと!」「無理だ!今からではとても間に合わない!」 最早時間は残されていない。ならば…と、大井はライトセイバーを起動させる 「私がこの場で破壊します。ジェネレーターを狙い撃ちすればいいのよね?」 「そんな無茶な!」 フジクラは慌てた

2016-03-05 23:45:33
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だが困惑するフジクラを子日が制した 「どうせ爆発しちゃうなら、賭けてみようよ」 「こんなことになった原因は私にもあります。責任は取る。任せてください」 大井はフォースを使い、配線を切らずに核を突き刺せる一点を慎重に探る (フォースを信じよ)瑠奈花の言葉が蘇る

2016-03-05 23:46:51
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(…ここだ) 大井はゆっくりと、兵器にライトセイバーを突き刺す。数秒後、警報は鳴り止み、爆発は止まった。光刃を消し、脱力した大井には、子日達の歓喜の声も耳に入らなかった

2016-03-05 23:47:32
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数日後・雪花 「…これが今回の事件の顛末です」 大井は行方不明時の出来事、そして兵器の件について瑠奈花に報告した。イブ・レインズによる兵器の奪取、及び兵器の暴走は未然に防ぐことができたのだった。瑠奈花は報告書をまとめ、大井の前に立った 「わかった。本当にお疲れ様。とにかく…」

2016-03-05 23:49:31
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瑠奈花は涙ぐんだ目で大井を抱きしめた。身長の関係から、実際には抱きついたように見えたが 「君を喪ったかと。よく無事に戻ってきた。本当に…本当によかった」 「ご心配をおかけしました。その…ただいま」 二人はしばらく抱き合い、そして名残惜しそうに離れた

2016-03-05 23:51:07
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「大井。プリマテックはどうなった?」 「イブ…プリマテックは少し目を離した隙にいなくなっていました。仲間が遺体を持ち去ったか、下手をすれば生きているかも」 「彼女らは“黎明の結社”と名乗ったんだな?しばらくは動向に気をつけねばいけないか」 「そうですね…過激な集団のようですし」

2016-03-05 23:52:37
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「それから!」 大井はふと思い出したように瑠奈花に尋ねた 「私が捕まってたリンガ泊地の澤井って男。プリマテックの言葉を信じるなら、あいつも何か怪しいです」 「あそこか。確かに…何のために極秘にプリマテックを捕らえていたのかも気になる。後で調査団を派遣するつもりだ」

2016-03-05 23:53:52
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大井の心には得体のしれない不安がしこりのように残っていた。恐らく瑠奈花も同じはずだ 「とにかく、しばらくはゆっくり休みなさい。北上や木曾も心配していた。何しろ死んだことになっていたのだからな」 「わかってるわ。例の件、何かわかったら教えて頂戴」 こうして大井は、雪花へと帰還した

2016-03-05 23:55:06
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その後、瑠奈花の要請によって、元帥・門川龍興による調査団がリンガ泊地へ派遣された。だが、大井を捕らえていた澤井と彼の司令部は、当時麾下にいた磯波も含め、忽然と姿を消していた。結局彼らの行方について、その時わかることは何一つなかったという…

2016-03-05 23:55:48
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

【アプレンティスの帰還】終わり

2016-03-05 23:56:03
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