【アプレンティスの帰還】

愚者に従うものもまた、愚者となる
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「気をつけて行ってこい」 「うん。大丈夫」 ユーは控えめに手を振り、子日を追いかけていった。残された菊月は執務室の扉に手をかけようとして、止まった (これは…瑠奈花に報告するべきだろうか)

2016-03-05 23:07:06
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

菊月は迷っていた。瑠奈花は、大井は既に死んだと思っている。今になって「大井を見つけた」と言ったところで、彼は信じるだろうか (だがもし、リンガの時のようにスカだったら…瑠奈花を苦しめるだけか) 菊月の力を頼りに先日リンガ泊地を訪ねたが、大井は見つからず、その気配も消えてしまった

2016-03-05 23:08:43
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

結局菊月は、何も言わずに立ち去っていった。最近になってようやく立ち直ってきた瑠奈花が落胆する姿は、もう見たくない。菊月は返事がないのは承知の上で、自身の中に眠るもう一つの魂に語りかけた 「“菊月”よ、私はどうすればいい…」

2016-03-05 23:09:10
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

青と緑の光刃が交差する。運命の悪戯か、2人の若き剣士が、かつては味方だった2人が対峙した 「大井さん…どうしてここに」 「貴方こそ…ここで何をしているの?」 「それは…」 言わない方がいい気がした。今、彼女はこちらに敵意を向けているのだ

2016-03-05 23:11:29
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「護衛がいると聞きましたが、あなた達なのね?」 ユーは答えなかった。それがかえって、大井に肯定の意と取られたようだ。大井はライトセイバーを両手で持ち、ゆっくりと振り上げた。シエンの構えだ! 「悪いけど、私にも使命がある。邪魔するなら、例えあなた達でも!」 光刃が振り下ろされる!

2016-03-05 23:12:41
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ユーは咄嗟に防御!だが力に押されよろめく!大井の光刃をギリギリ抑えるので精一杯だ。 大井のシエンに対し、最も相性がいいのはソレスだ。だがユーはこれまで、フォーム1・シャイ=チョーのみを訓練してきた。ソレスの戦い方を知らない訳ではないが、付け焼刃で実践するのはあまりにも危険!

2016-03-05 23:13:46
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ユーはフォースを味方につけ、隙を突いて大井から離れ、果敢に斬りかかる!だがシエンの斬撃は力強く、体格の小さいユーにとっては一撃が非常に重い!ならば…と、ユーは後方に大きく跳躍!空中に飛んだユーを見た大井は勝利を確信した。今ならフォースで、彼女を容易に捕らえられる。大井は手を伸ばす

2016-03-05 23:15:13
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

だが大井の目論見は外れた。ユーは空中で体を捻り、ライトセイバーからエネルキー弾を発射!大井は咄嗟に防御! (しまった。あの子のライトセイバーは…) ユーのライトセイバーは、元々彼女が持っていた艤装を改造して作ったものだ。ライトセイバーの光刃と銃撃機構を両立した一品である

2016-03-05 23:16:21
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

エネルギー弾はライトセイバーで防げるが、跳ね返すことはできない。着地したユーはエネルギー弾を連射しつつ、一気に距離を縮める!大井は冷静に防ぎ、ユーの光刃を防御!だがここぞとばかりに攻勢に出たユーの剣戟に押され気味だ。大井は腰を据えてユーの一撃を受け止め、鍔迫り合いに持ち込む

2016-03-05 23:17:05
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

(今だ) 体格差に押され、ユーは少しずつ後退する。その瞬間に、大井はフォースプッシュでユーを吹き飛ばす!直後、背後から何かが噴出するような音を聞き、大井は振り返る!子日だ!子日がジェットパックで空中に陣取り、銃撃!大井は左へ前転回避!

2016-03-05 23:17:59
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

子日の銃撃を防ぐのは難しい。だが彼女なら捕らえるのは容易い。大井はフォースで子日を掴み、地面にたたき落とす! 「わ!ちょっ!?」 背中から叩きつけられ、制御を失ったジェットパックを子日は素早く外し、大井に投げつける。大井はそれを両断し、二つに分かれたジェットパックが背後で爆散!

2016-03-05 23:18:53
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大井はライトセイバーを、子日はギミックアーム・ガンをそれぞれ互いに向ける。ユーも駆けつけ、対峙した 「大井さん。どうして私達と戦うんですか」 「これが使命だからよ。この兵器は破壊しなければならないの」 子日とユーは顔を見合わせた

2016-03-05 23:19:33
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「この兵器は横須賀の工廠で解体処分するために運んでいるんです」 「嘘よ。こいつらはこれを悪用するつもりだわ。あなた達が関わってるなんて思ってもいなかった」 大井は再びシエンを構える! 「大井さん。その情報はどこで知ったのですか?」

2016-03-05 23:20:47
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「それは…」 「もしかして、イブ・レインズという女性から聞いたのではないですか?」 「イブを知っているの?」 ユーは何かを確信し、光刃を消した。子日が頷くのを見て、話を進めた 「大井さん。伝えておくことがあります」

2016-03-05 23:21:39
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「イブ・レインズ。艦娘としての名前はプリマテック。彼女は6年前、士官殺しの罪で国際指名手配にかけられています」 「なんですって?」 大井は構えを解き、信じられないという顔をした。彼女にとってイブは、苦難を共に乗り越えた友人なのだ 「嘘でしょう?イブが殺しなんて…」

2016-03-05 23:22:36
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「本当です」 ユーは淡々と続けた 「プリマテックは逃亡後、世界各地の軍を襲い、兵器を奪取しています。その過程で、私の同僚も殺されました。そして今回も…」 「信じられない。私の知るイブはそんなことをするような人間には見えないわ」

2016-03-05 23:23:44
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「きっと、大井さんを利用しようとしているんです」 プリマテックが今度は私の仲間を翻弄しようとしている事実に、ユーは静かに憤った 「この前提督から貰った資料には、イブは心を読む能力があると」 「ええ、そうよ。確かにそう言ってた」

2016-03-05 23:24:58
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「それだけではなく、彼女にはマインドコントロールの力もあるそうです。大井さんも無意識に洗脳されていた可能性があります」 「洗脳…」 大井は頭を抱え、ブツブツと何かを呟いていた。やはり、過去に思い当たる節があるらしい。ユーは戦意を喪失した大井に近づく

2016-03-05 23:25:50
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「大井さん。私達はプリマテックが兵器を奪いにくるという見込みでここにいます」 葛藤する大井の瞳を、ユーは真っ直ぐ見つめて言った 「大井さんは、どちらを信じますか?私達とプリマテック、どちらが本当の仲間ですか?」 「仲間…」

2016-03-05 23:27:06
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大井の脳裏に瑠奈花とイブの姿が思い浮かぶ。かつて邪道に堕ちた私を救い、道を示してくれた瑠奈花と、苦難を共にしたイブ。私にとっての仲間は…どっちだ? 短い思考の後、大井は兵器が積まれたトラックを振り返り、意を決して駆け出した。子日とユーもそれに続いた

2016-03-05 23:28:26
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「…ここか」 イブは混乱に乗じ、トラックの荷台に忍び込んだ。ライトを付け、被せられたシートを外す。円柱状の奇妙な形をした兵器が姿を現した 「これだ。これさえあれば、我々の目的も…」 「…イブ!」

2016-03-05 23:29:16
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

背後から名を呼ぶ声が聞こえた。だがイブは振り返らなかった。声と同時に、ライトセイバーが起動する音を聞いたからだ 「どうした、大井」 大井を牽制するように手を伸ばし、イブはゆっくりと振り返る。大井はシエンを構えていた。彼女の感情に影響されてか、光刃が不安定にバチバチと音を立てている

2016-03-05 23:30:15
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