【アプレンティスの帰還】

愚者に従うものもまた、愚者となる
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「わかりました」 フジクラはあっさりと説明を始めた 「この兵器は、実は我々FACが開発した物ではなく、深海棲艦から鹵獲したものなのです」 「鹵獲?」 子日が尋ねた。ユーは無言で子日の腕をつつく 「違うって。鹵獲の意味くらい知ってるよう」

2016-02-21 22:59:30
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花は咳払いをして子日のおしゃべりを止めた 「鹵獲した兵器が何故そんな内陸に?」 「我々はこの兵器を解析して深海棲艦の技術を盗み、更なる新兵器を制作するつもりでした。しかし、この兵器は我々の手に負えない程危険なものであると判明したのです」

2016-02-21 23:00:52
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「すぐに我々は解析を中止し、この兵器を処分することに決めました。しかし厄介な事に、解体には海軍工廠の設備が必要であることがわかったのです」 瑠奈花はフォースでフジクラに語りかけた。彼の言葉に嘘はなさそうだった 「なるほど…」

2016-02-21 23:02:12
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「次に、瑠奈花殿に護衛を頼んだ理由ですが…少々厄介な事情でして」 フジクラの顔は明らかに曇っていた。瑠奈花も嫌な予感がしていた 「瑠奈花殿は、プリマテックをご存知ですか?」 「プリマテック…?」 瑠奈花よりも先にユーが反応を示した

2016-02-21 23:02:38
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「君はドイツ海軍の出身か。ならすぐわかっただろう」 フジクラは懐から手帳を取り出し、ページをめくった 「アメリカ海軍の艦娘プリマテックは6年前、士官殺しの罪で国際指名手配されました。彼女は自身の属する司令部の海軍関係者3名と、同僚の艦娘16名を殺害し、逃走」

2016-02-21 23:03:58
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「その後彼女は、世界各地で神出鬼没に現れては、多くの艦娘に牙を剥きました」 ユーが口を開き話を進めた 「ドイツ海軍もプリマテックの被害に遭い、艦娘数名が殺され、一部兵器も盗まれました。その中には私の友達もいました」

2016-02-21 23:04:56
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ユーは淡々と語ったが瑠奈花はユーの思いを察し黙っていた 「プリマテックは人類最大の敵となりました」 フジクラがユーに代わり続けた 「その理由として、どうやって手なずけたのか、奴が常にリベリオン級重巡洋艦とトリッカー級軽巡洋艦を従えていたことがあります」

2016-02-21 23:06:04
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「リベ…なに?」 子日が尋ねる 「リベリオン級重巡洋艦とトリッカー級軽巡洋艦です。日本ではそれぞれ、重巡リ級、軽巡ト級と呼ばれています」 「つまり、だ。プリマテックは深海棲艦に寝返った可能性が示唆された、というわけだ」

2016-02-21 23:07:09
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「その通りです」 フジクラが頷いた 「そんな疑惑を持つ者が、世界中の艦娘を殺したり人類の兵器を奪ったりしている。当然プリマテックは超危険人物扱いされることになる」 「ん?でも…」 子日は再び疑問をぶつけた

2016-02-21 23:08:07
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「子日はプリマテックなんて今の今まで知らなかったよ?」 「そうだ。日本はプリマテックの被害が殆どなかった、というのもあるが、奴は5年前、突然姿を消してしまったのだ」 瑠奈花はプリマテックについて書かれた最後の新聞記事をホログラムに表示した。日付は今から4年前のものだった

2016-02-21 23:09:46
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「奴が現れなくなると、世間の関心は一気に冷めていった。実際音沙汰もなくなり、プリマテックはどこかで死亡したものと思われている」 「そう…なんですが」 フジクラは神妙な顔で言った 「最近、我が社の周辺でプリマテックと似た特徴を持つ女性の目撃情報が上がっているのです」

2016-02-21 23:10:25
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「本当ですか…?」 ユーは拳を握りしめた。彼女の脳裏に無残にも殺された仲間の姿が思い浮かぶ 「そいつがプリマテックだという確証はありませんが…今我々が深海棲艦の兵器を所有している以上、用心しておきたいのです。同じ艦娘なら対策も容易かと」 「ふむ…」

2016-02-21 23:11:55
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「わかりました。検討してみましょう」 瑠奈花はフジクラと握手を交わし、対策を考えることを約束すると、彼を帰らせた 「あの、提督」 「どうした?」 普段はあまり自己主張をしないユーが声を静かに荒立てていった 「この任務、私に任せてください。私がやります」

2016-02-21 23:12:40
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「いや…それはできない」 「どうしてですか」 瑠奈花はユーの肩に手を置いた 「ユー、君の気持ちはわかる。だが復讐心はそれを制御できぬ限り、最も未熟な感情だ。いずれ破滅を招くぞ」 「違います。そんなんじゃ…ありません」 「いや、違くないな」

2016-02-21 23:13:48
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「いいか、未熟な感情は太刀筋を鈍らせる。復讐への渇望は冷静さを喪失させる。…君を喪いたくないんだ。大井のように」 瑠奈花の腕は震えていた。ユーは俯いて言った 「それでも…行きたいんです。プリマテックが生きているなら。復讐なんて考えません。奴を捕まえたい。それだけです」

2016-02-21 23:14:50
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「マスター。あなたを失望させません。必ず期待に応えます」 瑠奈花はかつて、自分が師匠に言った言葉を思い出した。“まだ終わっとらんぞ、修行はな”“もう十分学びました。行かなければなりません”“よく言うわ。…忘れるでないぞ。ここで学んだことをな” 「…師が師なら、弟子も弟子か」

2016-02-21 23:16:46
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瑠奈花は思わず笑みをこぼした 「何かおかしい…?」 「いや…思い出し笑いだ」 「ねえ提督、行かせてあげない?」 それまで2人の会話を静観していた子日が口を挟む 「子日も一緒に行くよ。子日がユーちゃんを守るから。ねえ?」 背中を叩かれたユーはこくこくと頷いた

2016-02-21 23:17:35
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「仕方ないな」 瑠奈花はやれやれと手を振った。だが内心では、ユーに思いやりに溢れた友がいることを嬉しく思っていた 「精神の鍛錬を怠るな。何があっても自分を見失わないように。フォースを信じろ」 ユーと子日は力強く敬礼をして、執務室を出た。残された瑠奈花は1人、フォースに祈りを捧げた

2016-02-21 23:19:01
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

群馬県・榛名山 山奥にひっそりと佇む研究所の外で、子日とユーはトラックに運び込まれる兵器の数々を眺めていた。トラックは7台。そのうち6台は、本命の兵器を隠すためのダミーターゲットである。移送中に襲われたとしてもダミーに気を取られている隙に、子日達で対処する…という作戦だ

2016-02-21 23:21:05
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「おふたりはこちらへ」 フジクラに連れられて2人が乗ったトラックは、まさしく本命のトラックである。好奇心旺盛な子日は荷台を覗こうとするが、慎重なユーはそれを止めた 「どうしてこの兵器は、海軍工廠でないと解体できないのでしょうか?」

2016-02-21 23:22:07
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「それはだね…まあ専門的な話になるからわかりやすいようにざっくり言うが、コイツの中にはとんでもなく強力で危険なパワー・ジェネレーターが仕込まれてあるんだ」 ユーの問いにフジクラは答えた 「それがまた厄介でね、海軍工廠で使っている特別な設備がなければ無力化できないのさ」

2016-02-21 23:23:05
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「普通の兵器なら無理やり壊してしまうのもアリなんだが、コイツの場合勝手が違う。下手に弄れば大爆発だ。そんなことになれば辺り一帯が丸ごと焼け野原になってしまう」 「そ、そんな危険なモノだったんだ…」 子日は背中を震わせた。流石にもう下手に覗こうとは思わなかった

2016-02-21 23:24:34
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「まあ、パワー・ジェネレーターの核を一気に破壊してしまえば、理論上は爆発させずに機能停止できる。実際には回線が複雑に絡み合っているから、結局は安全に処理することはできないがね。会社としては悔しいが、まあ仕方の無いことだ」 フジクラはトラックのエンジンをかけた。出発の時間だ

2016-02-21 23:25:25
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