【仇怨の炎、神風に煌めく】

己を見失えば誇りも失う
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「神風…それは違う」「何が違うというの!」「私は吹雪を見殺しにしたつもりなどない。君からすれば言い訳にしか聞こえないかもしれないが、聞いて欲しい」

2016-07-16 21:52:01
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花は駆逐古鬼を落ち着かせ、春雨吹雪の身に起こったことを話し始めた。最初から駆逐古鬼と戦うのではなく対話の場を作ることが目的だったらしい。既に剣を収めていることがそれを物語っていた

2016-07-16 21:53:26
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「それを私に信じろというの?」「それは君次第だ。だが私は、確かに彼女を愛していた」駆逐古鬼の肩は震えていた。 「そんな…それが本当なら、私はなんのために…」 駆逐古鬼は瑠奈花の言葉と憎悪の感情に揺れ動く。彼の言葉には不思議と彼女を納得させる力があった

2016-07-16 21:54:21
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「こんな説明で君を納得させられるとは思っていない。だが、もし君が復讐のために深海に堕ちたのなら」瑠奈花は跪いて駆逐古鬼に目線を合わせた 「地上に戻ってきてくれないか。君とゆっくり話がしたい」「私は…!」その時!

2016-07-16 21:55:56
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「危ないーッ!」秋津洲が叫んだ。 フライトリバティーの目の前に、突如巨大な火燕流が現れる。避ける間もなく、火燕流は瑠奈花と駆逐古鬼を飲み込む! 焼け付く感覚が駆逐古鬼を襲った。何かおかしい。ブレイズエッジなら、自分にはダメージがないように調整してくれるはずだ

2016-07-16 21:57:26
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

考える間もなく、駆逐古鬼は意識を失った。火燕流はすぐに収まり、瑠奈花と駆逐古鬼の姿は甲板上から姿を消していた。残ったのは必死に瑠奈花の名を叫ぶ秋津洲だけだった。

2016-07-16 21:58:16
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【仇怨の炎、神風に煌めく】#3

2016-08-06 23:01:48
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

身体が重力に引っ張られるような感覚で駆逐古鬼は目を覚ました。ゆっくりと目を開けると、そこは洞窟のようだった。天井は開けていて若干暗い空が覗いている。周囲には布を掛けられた木箱のようなものが複数積んである。それらはどれも、傾いた台の上に置かれていた。

2016-08-06 23:02:38
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

だがそれよりも異常な事態にすぐに気付いた。両手足の自由が利かない。駆逐古鬼は斜めに突き刺さった柱に磔にされていたのだ。横を見ると、瑠奈花も同じように縛られていた。少なくともこいつの仕業ではないらしい。 「瑠奈花。おい瑠奈花」 声をかけたが、反応はない。

2016-08-06 23:04:09
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「お目覚めになりましたか」 洞窟の奥から人影が現れる。深海棲艦だ 「お前…ブレイズエッジ!これはどういうことだ!」 「これも復讐の一環です」 ブレイズエッジは剣を地面に叩きつけた。硬い岩盤にぶつかった刀身から火花が散る 「これは貴方の復讐であると同時に、私の復讐でもある」

2016-08-06 23:05:35
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「私は嘗て、深海大戦の戦闘プランを管理していた。それをその男に奪われた。私は責任を負い、軍での立場を追われた」「そんなことで復讐を」「それだけならいい!」剣が一際強く叩きつけられる 「奴らは私の家族にまで言いがかりを付け始めた。大戦の戦犯の家族だと。我らは深界に居場所をなくした」

2016-08-06 23:08:06
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「幸いにも私達はある教団に拾われ、なんとか食い扶持は確保できた。だが生活は苦しくなるばかり。遂には伝染病を患い、私1人を残して家族は死んだ」ブレイズエッジは剣を瑠奈花に向けた。 「深界も憎い。だがそれ以前に、私はこの男を許せぬ」 「あんたの事情はわかったわ…でも」

2016-08-06 23:08:40
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

駆逐古鬼は拘束から抜け出そうともがく 「お前の復讐と私を縛ることとなんの関係がある!」「まだわからんか。貴女は我が復讐の歯車の一つに過ぎん」「なんだと…!」駆逐古鬼は目を丸くした 「すまぬな。貴女の存在もここで消させて頂く。貴女より先にその男を葬り、せめてもの手向けとしよう」

2016-08-06 23:10:00
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

ブレイズエッジは剣を強く地面に擦り付けた。大きな火花が散り、剣が炎に包まれる。発火機構を備えた剣、焔刃剣だ。ここで炎を出したという事は、周りの木箱は火薬かもしれない。瑠奈花達を洞窟ごと焼くつもりなのだ。 「くそっ!冗談じゃない!私を解放しろ!」

2016-08-06 23:11:15
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

駆逐古鬼は必死でもがくが、拘束は緩まない。それどころか、細い柱が斜めに刺さってるせいで無駄に身体が揺さぶられ、気分が酔いそうになる 「意味わからん!なんで斜めに刺さってるんだこの柱!」「ナナメは我らを導く希望だからだ」ブレイズエッジは律儀に回答した。「真っ直ぐ刺せよ!」

2016-08-06 23:13:15
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

((このままだと火炙りにされる!何か手は…)) 「…話は聞かせてもらった」 隣から声がした。振り向くと瑠奈花が目を開けていた。駆逐古鬼は訝しんだ 「話は聞いた…?お前まさか最初から起きてたんじゃないだろうな」「その通りだ」「お前ーッ!」

2016-08-06 23:14:44
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

駆逐古鬼はバタバタと暴れ怒りを示したが、ナナメ酔いですぐにおとなしくなった 「ほう、目覚めていたか」「深海の民に恨まれるのも慣れていてな。ブレイズエッジよ。聞いても無駄だろうが、対話に応じるつもりはないか」「話にならんな。我が仇怨はお前の死によって晴らされる」

2016-08-06 23:16:07
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「それは残念だ」 次の瞬間、瑠奈花は落下した。瑠奈花の拘束は既に解けていた ((アイツどうやったのよ!こんなにきつく縛られてるのに!)) 瑠奈花はフォースの風で木箱を吹き飛ばし、水溜りへ落とした。次にブレイズエッジの腰に掛けられたライトセイバーを左手に引き寄せ、取り戻す

2016-08-06 23:17:23
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

その片手間で、瑠奈花は駆逐古鬼に手を伸ばし、フォースで拘束を緩めた。拘束が解かれたことで、駆逐古鬼もまた落下した 「神風とは話すべきことがあるのだ。故に彼女を殺すなら、止めさせてもらう」「おかしな御仁よ。敵を守るために剣を取るのか」

2016-08-06 23:18:34
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

ブレイズエッジは焔刃剣を逆手に持ち、ナナメの独特な構えで相対する 「よかろう。来るがいい、光刃の英雄よ。お前を倒し、本懐を遂げる!」 瑠奈花とブレイズエッジがぶつかり合う。駆逐古鬼はへたりと座り込み、その様子を見ているしかなかった

2016-08-06 23:19:39
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花はライトセイバーを振り下ろす。ブレイズエッジは剣で防御した。焔刃剣は断たれることなく光刃を受け止めた 「成程、私への備えは万全ということか」「当然よ」 ブレイズエッジは返す刃で瑠奈花の胴を狙う。光刃が阻む。次は脚を。再び阻まれる。

2016-08-06 23:20:31
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

ブレイズエッジは熟練の剣士。だが相手は剣聖。流石のブレイズエッジでも勝機は薄かった。彼女は予め対策を考えていた。瑠奈花の性格を利用するのだ。ブレイズエッジは不可思議なナナメハンドサインによる高速詠唱で魔法の火球を繰り出した。火球は瑠奈花ではなく、へたり込む駆逐古鬼へ向かった。

2016-08-06 23:21:14
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「ちぃッ!」瑠奈花はブレイズエッジに背を向け、駆逐古鬼の元へ急行する!両手でライトセイバーを握り、火球を受け止める。光刃が僅かに撓り、激しく反発音が響き渡る。やがて火球は打ち返され、虚空に飛ばされ消えた。ブレイズエッジがその隙を狩る。

2016-08-06 23:22:29