- katsuragi_rivea
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「冗談にしても…笑えない!」 神経を逆撫でされたケモノは吼える。既に死にかけの"敗者"に、 その研がれた牙を何度も、何度も、何度も、幾度と無く、突き刺した。 そこには…微塵の躊躇いも無い、最初から結果など…決まっていた。
2016-10-31 22:29:13身動きもままならない初霜に振り下ろされる殺意は勢いを増してくる ―――死ね、死ねっ、シネ!死ネ!!死ねっ!!!!!! その度に目を背けるグラーフが自身が見るに無惨な姿へと変貌していくのを伝えてくる。 …痛覚などもう、忘却の彼方へと飛び去ってしまった。
2016-10-31 22:30:25堪え切れなくなったグラーフが声を荒げる。 「もう、止めてくれ!約束しただろう!!彼女にはこれ以上手を出さないと――― その懇願の声を聞き、初霜はようやく今の状況を察することとなる ―――あぁ、そうか…私は逆に、護られてしまったんですね…
2016-10-31 22:31:27護ると決めた相手を護れず、逆に彼女に護られて、何のための駆逐艦か…ボロボロの手で額に巻く濃青の"誇り"を握りしめる。 ―――託された信頼に、私は…背いた。 これを託した二人の姿。彼女達の笑顔が後ろ髪を引くかのように更に心へ刃を刺す。
2016-10-31 22:33:01(それは貴方に相応しい物ですよ。とても、似合っています。恥じることはありませんよ?) (そうね、悪くないわ。神通さんもそう言ってるし、もっと胸を張っていいんじゃない?) ―――彼女達の誇りに、背いた。
2016-10-31 22:34:16やがて落ち着きを取り戻し、初霜に興味を失った空色の巡洋艦は大きくため息をつく。 「…あぁ、そうだったね。ごめんね、同志。許して」 殺戮に身を任せていたケモノは自我を取り戻すようにグラーフへと微笑みを向ける。
2016-10-31 22:35:29「お前に同志と呼ばれる筋合いはない!」 もはや両者の諍いも耳に届かない。自身への失望が心を満たして波打つ隙間も消え去った。 もう、全ては終わったんだ…腕は海面へと力無く垂れ落ちた。未来を望む可能性を掴むことなく
2016-10-31 22:36:32「…行こう。同志、もう…いいでしょ?」 相手に敗れ、絶望に打ちひしがれ、戦意を―――折られた。 もはや初霜に抗う力は尽きた。悶え、海面に這いつくばる"敗者"に対して一瞥すると 空色の巡洋艦はグラーフを抱え、踵を返す。
2016-10-31 22:37:52「覚悟が足りない奴に、護れる力も、未来を掴む可能性などやっては来ない」 残酷な言葉を残し立ち去る後ろ姿を、ぼやける視界で初霜はずっと見つめていた。 かつての僚艦――親友が、力尽きた駆逐艦初霜から離れる光景に面影を重ねて
2016-10-31 22:39:16結局…誰も、何も護れなかった。友も、誇りも、信頼も…己の弱さ故に、 滲み出る悔しさと後悔が生暖かい雫となって頬を伝う。 深く、青く、澄んだ空色が、大海に響く悲痛な号哭を… 静かに、見下ろしていた。
2016-10-31 22:40:36主に賜りしこの御霊 海の底より産まれ出で 穢れし常世に咽び泣き 七つ魔首の鐘が鳴る 偲ぶ果て夜の飽く先に 彷徨う我らは焔に集う ―――我こそは…最良の選定、進化の先を見通す古きただ一つの眼差…
2016-10-31 22:42:35