- tasobussharima1
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「何百年経とうと……人は、人のままでおじゃる」 長い沈黙の後。『マロ』は口を開いた。それは、諦観であり。無常であり。平安の終わりであった。 モニタ上に見える艦隊は、まだ沈黙を保っている。得度兵器を燻り出す積もりなのか。それとも、反撃を恐れてのことなのかは定かではない。
2016-05-04 21:04:04幾つもの砲塔が百足の足の如く蠢き、陸上を指向する。 そして。対岸の海中から、幾つもの大きな船影(シルエット)が浮上する。 海中輸送型得度兵器。タイプ・マカラ。魚のような形状をした、大型可潜艦。 徳エネルギーの供給がパイプラインごと途絶した今、持久策は不利と判断したのだろうか。
2016-05-04 21:08:03得度兵器側には戦闘の理由はあるまい。少なくともメリットが無い。だが、自らに危害を及ぼす存在(リスク)を許容し続けるほど、彼等は大らかでもない。例えそれが、己が救うべき人類であろうとも。 タイプ・マカラの船体前方の鼻のような部位から、桃色の徳エネルギー兵器の光条が放たれる。
2016-05-04 21:12:08船上で解脱者が発生すれば、その解脱エネルギーは船体を容易く溶解させるだろう。故に、これは牽制だ。得度兵器達は未だ、人類を『殺してしまう』ことを極力避けようとしている。 解脱の光条は、艦隊をギリギリのところで掠め、海面へと吸い込まれていく。 「全艦、応射開始。数を減らせ」
2016-05-04 21:16:04艦隊は得度兵器側の攻撃に反応し、反撃を開始。艦載徳ジェネレータから供給された徳エネルギーをマニタービンが電力へと変換し、その膨大な電力がレールガンへと注ぎ込まれる。大気をプラズマ化させ、煙と炎を撒き散らしながら、電磁力によって加速された弾体が得度兵器達を目掛けて飛翔する。
2016-05-04 21:22:57だが、その照準精度は決して良くはない。砲弾の多くは海へと吸い込まれ、水飛沫を上げる。そして、数秒ほどの間隔を開けながら、砲は再び炎を吹く。 ……そうするうち。一発の砲弾が、タイプ・マカラの船体へと直撃した。海賊達が歓声を上げる。この戦いにおける、人類側の初めての戦果である。
2016-05-04 21:28:14