不知火に落ち度はない　47（時雨）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

さて、やっと帰宅したので更新開始。今回は時雨回。 ハートフルスイートライフをご堪能あれ。 #落ちぬい

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これは、早霜着任から少し遡った時の話。 丁度GWの中日に起きた、一つの話である。 #不知火に落ち度はない

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俺はその日、GWの合間を縫って休みを取っていた。 いわゆる病院休暇である。 今回は海ぼうずメンツと出会うこともなく。 そして約束もなく。 久々に一人の時間を満喫していた。 #不知火に落ち度はない

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大型連休の中日と言うことも有り、人がごった返す町中。 俺はそんな中喫茶店でも入って、一服でもしようと。 そう思っていたわけであるが。 そこで見知った顔を見かけた。 #不知火に落ち度はない

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岩を削ったような四角顔に、ごつごつした手。 ぴっちりとした切りそろえた髪に、溶接焼けした肌の色。 草野大樹。うちの工廠課の一員である。 役割的には一工員で、主に力仕事と溶接関係をメインとしてる。 #不知火に落ち度はない

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裏での別名は工廠課のモズクズ様。 や、別にモズクズ様つっても、怒ったりはしないし、拷問もしない。 信仰心があるわけでもなく、単純に似てるんだ。顔の作りが。 気の良い奴で、だいたいいつも力仕事で頼られてるし信頼も厚い。 #不知火に落ち度はない

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あとは喧嘩ふっかけても、勝てそうにないガタイしてるってのもある。 故に怒らせちゃなんねえ、って話が一人歩きした結果、モズクズ様なわけだ。 で、その大樹くんの御年は２５。 見た目よりもずいぶんと若かったりする。 #不知火に落ち度はない

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で、まあ。ここで面白い話題を一つすると。 この彼こと、大樹くんだが。 時雨の個人情報を取得して良い許可を貰ってる奴だったりするんだ。 見えないだろ？ 下手すりゃモアイにも見えるこの外見だとさ。 だから逆にありがたいんだけどな。 #不知火に落ち度はない

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で、喫茶店で二人がけの席に座ってるのを見ると、どーもこりゃおデートですな。 可愛い柄のハンドバックが向かい側の席にかけてある上、でっかいパフェが置かれてる。 多分何かしらの理由で中座してるんだろうな、時雨。 思ったよりも少女らしくて安心したぞ。 #不知火に落ち度はない

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一方の大樹君は、渋くコーヒーで決めてる。 そいや工廠課でも甘いモン食べない組に入ってるしな。 どっちかというとせんべいと日本茶が好きで、さらにコーヒーはブラック派だったはずだ。 工廠課では、酒も煙草もやらない珍しい人物だった。 #不知火に落ち度はない

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さて。ここは基地司令として、そっとおデートを見守るとしますかね、と思ったんだが。 「司令じゃないですか。どうも」 おいおい。気づいて早速こっちに手を振りましたよ大樹君。 それじゃ、俺が行かざるを得ないじゃないですか。 時雨の機嫌損ねるぞ、それ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ども。そっちは休み？」 「そうです。司令もお休みですか？」 「ああ、まあ病院でな」 と、言う間に何故か大樹君、椅子引っ張って来てますよ。 あの？ あの？ それ俺にデートに割り込めって言う意思表示なんですか？ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「いいよ。デートだろ？」 「まあ……そうなんですが。その、紹介をしておきたくて」 「紹介？」 はて。時雨となら毎日会ってるけどさ。 朝礼んときにフツーに会ってるけどさ。 どういうことなんでしょうか、それ？ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「大兄ちゃん、おまたー……って。え、あれ？」 そしてそこに、大樹君の『お相手』がやってきたわけで。 それは時雨ではなく──俺の基地にも居ない、茶色の髪をしたヘアバンドの少女だったのである。 当然俺と面識は一切無い相手だった。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「えっと。ど、どなたですか？」 そのまま警戒をMAXにして、そそと、少女は大樹の後ろに隠れて行く。 まあ、それはそうだわな。アロハの髭おじさんがいきなりデートに割り込んでるし。 「大兄ちゃん……この人、誰？」 あ、やばい。通報カウント上がったぞ今。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「こら、露坊。この人はおれの勤務先の司令官だよ」 「ええええ！？ アロハ着てどーみてもヤクザじゃん！？」 うっわ、すっげえ。歯に衣着せねえなんてレベルじゃねえ。 ずばずば物言うタイプだこの子。 性格は服装にも出てる。女子とわかるがスッキリした格好だ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「こら」 「むぎゅ」 ごちん、とモズクズ様チョップが遠慮無く入った。 なにこれすごい。大樹くんが遠慮無くチョップ喰らわすなんて、初めて見たぞ。 なんだこの距離感。一朝一夕で出来てる関係じゃないぞこれ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「大兄がぶったぁー……アホになったらどうすんのよ、もー」 「まったく……すみません。考え無しな奴なんでどうか、見逃してやってください」 「あ、ああ。そりゃいいけどさ」 頭を無理矢理押さえて下げさせてるあたりで、『露坊』っていう子とは相当な仲と感じる。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そりゃいんだけどさ。 大樹君、お前さんもしかして二股かけてるパターンというわけではあるまいね？ 多分紹介したいっつーことは艦娘なわけだし。 いや、別に個人情報取得は、複数名に渡っちゃダメって話は無いけどさ？ それでもほら。さ？ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

具体的には時雨って超根に持つタイプだぞ？ 一回でもなんかしでかしてたら10回分ぐらいはじわっと来るタイプだぞ？ こういうのバレたら後々すっげー怖いと思うんだけどさ。 つか、こないだのチョコ見る限り入れ込み度が本気すぎて、扶桑と二人で震えてたしさ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「そんなんだから休日デートにあたしぐらいしか相手いないんだよー」 「お前が暇だからどっか連れてけって言ったんだ。それより、挨拶」 「あ、はいはい！」 するとぺこんと、頭を下げて仰る『露坊』。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「どうも、草野大樹がいつもお世話になってます！」 あ、はい。お世話になってるの確かだけどさ。 お前さん、その大兄が苦笑いしてるの見えてる？ あと、声ちょうでけえ。 もうちょっとトーン落としてくんね？ 休みだしさ。 元気が良いのはいいことだけどな？ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「で、あたしはしらつ──もぐ」 やばい単語を公共の場で口走りかけたのを、固くてごつごつした手が押さえ込んだ。 うん。大樹君ナイス。ここで正体バラすのって、あんまりよくないからね。 その露坊が暴れて肘打ちまで入ってるけど、平然としてるあたりタフだな。 #不知火に落ち度はない