日米地位協定にまつわる誤解・リターンズ

たぶん大佐@Col_AYABE氏による、日米地位協定の下における犯罪容疑者となった在日米軍人の取り扱いについての解説。 なお、地位協定の全文ソースはこちらから読めます。 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/kyoutei/index.html
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dragoner@2日目東サ46a @dragoner_JP

日米地位協定の件、原則的に日本で裁くのに障害があるのは情けない現状なのだけども、アメリカ側からすれば、無実の人間複数から犯行を自供させる国の警察に自国民を引き渡したくないのは当然の道理で、つまりは警察をどうにかせんと改正無理っしょ

2016-05-20 18:41:37
たぶん大佐 @Col_AYABE

Dragonerさんが何をもって「日本で裁くのに障害」と言っているのかわかりませんが、私自身は日米地位協定の、特に裁判権についての流布している情報・認識には誤解があるように感じています。これまでも何度かツイートしたと思いますが、改めて私見を以下に。

2016-05-22 01:01:02
たぶん大佐 @Col_AYABE

日米地位協定の刑事裁判権(協定第17条)について、よく指摘されるのは――1.「“公務中”の米兵を日本が裁けない!?」という問題と、2.「身柄引き渡しの時期」の2点だと思います。まず1番について解説します。

2016-05-22 01:01:31
たぶん大佐 @Col_AYABE

裁判権について:在日米軍人の裁判権について、第17条1項で、日本の裁判権(1項-b)とアメリカの裁判権(1項-a)両方を認めています。一方で、「公務中の犯罪」は米軍に優先裁判権がある(同3項)となっています。

2016-05-22 01:02:56
たぶん大佐 @Col_AYABE

なぜ公務中の軍人は日本に裁判権が無いのか?①:そもそも地位協定は「米軍が日本防衛を円滑に行うため」の協定です。地位協定では米軍人のビザなし長期滞在、米国の運転免許で公道走行OK、外国人登録の免除などが認められていますが、全て部隊移動や部隊行動を円滑に行うためですね。

2016-05-22 01:03:37
たぶん大佐 @Col_AYABE

②:公務中の犯罪に米側が優先裁判権を持つのも、任務遂行も同様に、非常時に日本防衛の任務を優先するためです(犯罪捜査のために任務が停止したり、阻害されないように)。ただし、平時からこれを連発されては日本の司法が蔑ろにされていると感じるのも当然のことです。

2016-05-22 01:05:24
たぶん大佐 @Col_AYABE

③:そこで重大な犯罪について日本側からの要請に米側が「好意的考慮」を行い、日本に裁判権を認める――とされています。日本側に裁判権を渡す余地が協定に入っているわけですが、この点について「アメリカ様の胸先三寸・気持ち次第」と否定的な意見が多いことも確かです。

2016-05-22 01:07:07
たぶん大佐 @Col_AYABE

④:ただし、前述のとおり協定の趣旨は日本防衛の行動を円滑にするためのものです。この「好意的考慮」という文言は、“協定の主目的である任務優先”の原則を曲げることなく、日本へ裁判権を渡すために作られた“落としどころ”だと言えると思います。

2016-05-22 01:09:16
たぶん大佐 @Col_AYABE

⑤:現在は、この「好意的考慮」によって重大な米軍人の裁判権が日本に渡されることで、「米軍人が日本の裁判から逃げる」という状況は回避されていると理解しています。

2016-05-22 01:14:24
たぶん大佐 @Col_AYABE

・・・すみません、今日は眠いので続きは明日書きます

2016-05-22 01:14:41
たぶん大佐 @Col_AYABE

さて、昨日の日米地位協定のお話の続き、ツイートしていこう

2016-05-22 14:34:16
たぶん大佐 @Col_AYABE

[余談] 裁判権の問題で、よく出てくる「公務中」という言葉――アメリカ軍が考える「公務中」について、簡単に補足しておきましょうかね

2016-05-22 14:35:43
たぶん大佐 @Col_AYABE

[余談]公務中とは①:よく、米兵の事件で通勤途中が「公務中」とされることがあり、その点に疑問を持つ人が多いと思います。そもそも勤務時間の考え方が違って、一般的には「9時~17時・土日休み」が勤務時間と認識されていますが、米軍は「軍人は24時間・1週間全部」が勤務中という考え方

2016-05-22 14:37:10
たぶん大佐 @Col_AYABE

②:じゃあ家に帰って寝てる時間とか夜飲み歩いてる時間は何なんだよ…ということですが、あれは「Liberty(休息)」とされています。対して勤務時間外は「Leave(休暇)」であり、これは年間30日取得できます。厳密にいえば、この「休暇」が公務外の時間です。

2016-05-22 14:38:48
たぶん大佐 @Col_AYABE

③:アメリカ軍では『「休暇」は権利だが「休息」は権利では無い』と言われます。例えば災害・紛争などの緊急事態が発生すれば軍は「休息」を停止し、隊員を即時召集します。これが「公務中」について生まれる齟齬の原因です。

2016-05-22 14:39:35
たぶん大佐 @Col_AYABE

④:とは言え、日本側への配慮もあり、この点は柔軟に判断され、日本側に裁判権が委ねられるようです。以上余談でした。

2016-05-22 14:39:47
たぶん大佐 @Col_AYABE

次は論点その2、「被疑者米兵の身柄引き渡し」について・・・ちょっと待ってね

2016-05-22 14:40:47
たぶん大佐 @Col_AYABE

さてさて日米地位協定における「容疑者の身柄引き渡し」について、説明していきますね

2016-05-22 15:24:30
たぶん大佐 @Col_AYABE

身柄引き渡し①:よく米軍人事件の報道で「容疑者の身柄が引き渡されない」「容疑者が事情聴取を拒否している」と報道されることがありますよね。このため「地位協定が犯罪捜査の障害」とイメージされることが多いようですね。実際、どうなっているのか説明します。

2016-05-22 15:25:17
たぶん大佐 @Col_AYABE

②:犯罪捜査の流れと米軍人被疑者の状況をざっくりまとめました。被疑者米軍人の身柄引渡しは“起訴後”(17条5項c)です。また逮捕状発付後は、身柄は米側にありますが拘束され、日本の警察署で取調べを受けます。 p.twipple.jp/hzX3q

2016-05-22 15:26:28
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たぶん大佐 @Col_AYABE

③:犯罪捜査は、逮捕状発付後は法的強制力が生じるので米軍人と言えども拒否することはできません。対して発付前は強制力が無いので拒否することができます。たまに「事情聴取を拒否」と報じられるのは任意の事情聴取のことです。

2016-05-22 15:27:56
たぶん大佐 @Col_AYABE

④:まとめると――身柄引渡しは起訴後だけど、取調べの義務は日本人と同じ、ということです。

2016-05-22 15:28:16
たぶん大佐 @Col_AYABE

…まあ、日本では逮捕前の任意同行が半ば強制的なものだったり、逮捕後拘留した容疑者を長時間精神的に圧迫して自供を引き出すなんて話を聞きます。米側に身柄があるため、こうした捜査ができないのは確かですが。このあたりはdragonerさんの言っている、日本の犯罪捜査の問題点だと思います。

2016-05-22 15:31:23
たぶん大佐 @Col_AYABE

[まとめ]地位協定問題の理解には多面的な視点が必要①:日米地位協定は前述したとおり「日本防衛などアメリカ軍の任務・行動の円滑化」が最大の目的です。その意味で裁判権な「受入国(日本)の司法の権限」と一部で干渉するのも事実です。

2016-05-22 15:46:22
たぶん大佐 @Col_AYABE

②:また、米側は自らの命令で日本に派遣した軍人の人権(刑事訴訟の問題で言えば推定無罪の原則)を守る義務があったりします。このあたりの考え方は日本よりアメリカ社会のほうがウルサイですからね。

2016-05-22 15:46:39