「シナリオディレクション」と「単なる校正」との違いについて

ストーリー重視のコンテンツの場合、シナリオは大切なものです。 ただ経験が浅い制作現場の場合、ディレクターがシナリオをディレクションしているつもりで校正しかしていないのをよく見かけます。また複数人ライターで作業する場合にも同様なことが起こりがちです。 シナリオディレクションとは、ストーリーをよりわかりやすくかつ面白くするためには必須の工程です。 続きを読む
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Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

岡山で学生さんむけにセミナーを行うに当たって、ゲームシナリオ構成法を更新しました。第8章にケーススタディとして、『涼宮ハルヒの追想』を作った時の資料が載せてあります。すっかり忘れていたんで、アップしました。slideshare.net/nyaakobayashi/…

2016-06-11 21:58:25
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

この資料もですが、特にUnityに限らずゲーム制作全般のセミナーもちょこちょこ行ってます。興味がある方は、有志の方を集めてUnity県人会議のほうに講演依頼をいただけますと可能な限り検討いたします。もちろん企業向けでもOKですよ。kenjin.unity3d.jp

2016-06-11 22:04:49
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

昔はシナリオがなかなか完成しないのでプロジェクトが潰れたゲームというのも、ADVに限らず結構ありました。今でもシナリオが重要なキーとなるゲームもありますので、シナリオのプランニングやディレクションの仕方というのは、実際の執筆に当たるスタッフ以外にも必要だと思ってます。

2016-06-11 23:15:43
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

僕も、以前の会社を辞めた後で思い当たったのですが、結構多くのディレクターの方が、シナリオディレクションを単なる校正と混同しているんですよね。シナリオディレクションとは校正ではなく、エピソードを適切に配置し、またストーリーをより面白くするためにあるものなので、意味が全然違います。

2016-06-11 23:18:05
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

シナリオディレクションでのジャッジは、単なる感想ではなく、もっと具体的なもので、エピソード配置を再検討したり、より効果的に見せるための提案をするものです。つまりシナリオを見て、「なんか違うんだよね~」とかしか言わない人は、ディレクションの場にはいらないということです。

2016-06-11 23:21:39
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

その辺りは僕のツィートなんかよりも、ジョン・ラセター自身が語る『魔法の映画はこうして生まれる/ジョン・ラセターとディズニー・アニメーション』などを見た方が早いでしょうね。これのシナリオギルドでやっていることがまさに「シナリオディレクション」をする姿です。

2016-06-11 23:24:24
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

先ほど、シナリオディレクションは校正とは違うと言いましたが、こんなディレクションはただの校正だよと言いたいのは、1.誤字脱字しか見ていない、2.日本語の使い方しか見ていない、3.文章の綺麗さとか言い回しだけにこだわってしまう、4.必要以上にディレクターが自分自身で直したがる。

2016-06-11 23:29:48
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

一方で、シナリオディレクションで一番見るべきものは、1.伝えるべきテーマがきちんと伝わっているか、2.キャラクターの行動原理は一貫としているか、3.ふさわしいタイミングでふさわしいエピソードが展開されているか、4.そのエピソードを見せるのにふさわしい演出が提案されているか、です。

2016-06-11 23:31:15
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

シナリオディレクションとは、以上のこと通じてシナリオライターにアドバイスすることで「気づかせ」、そして「よりよい方向へのリライトを促す」ことです。自分でリライトしたくってたまんない人には向いてないんですよね。そういう人はシナリオライターになって、きちんと仕事で責任をとるべきです

2016-06-11 23:34:37
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

ラセターのビデオに戻ると、シナリオギルドという集まりでは、前作/今作/次回作の各監督が参加して今作のシナリオを検討しています。なんでこんなに監督を集めるのかと改めて考えてみると、この制度が大変素晴らしいことに気づきます。

2016-06-11 23:41:41
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

このシナリオギルドでのシナリオディレクションに参加することで、各監督は3回の機会を通じて、あるエピソードが元からどのように変わったのかと、変えるにしてもどのような方法があるのか、そしてどんな理由でそれが選ばれたのか、さらにその変えた結果は客にどう評価されたかを知ることになります。

2016-06-11 23:42:53
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

この流れは、いわばPDCAサイクルです。ある程度注意深いゲームデザイナーなら、このことを自分のゲームを発表していく中で、時間をかけて経験値として積んでいくのですが、ラセターのシナリオギルドはそれをシステム化しています。だから結果がすぐに次作、次々作に引き継がれ反映されるのですね。

2016-06-11 23:45:33

「PDCAサイクル」については以下を参照してください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/PDCAサイクル

Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

ゲームも複数ラインが走っていると、どうしてもラインごとにクオリティの差が生まれ、しかも発表順によっては前のラインが成した評判を、次のラインが下げてくれたり(しかし売上げは前のラインの作品の影響で売れたりする)、いろんなことがある訳ですが、(続く)

2016-06-11 23:47:48
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

(承前)シナリオギルドのような仕組みを作っておけば、自然とディレクションにおけるジャッジのルールや基準というものが、次の作品へと受け継がれ、さらに次々作の企画段階できちんと活かされるという訳です。本当に巧妙な仕組みだと思います。

2016-06-11 23:49:02
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

多分このような仕組みが生まれた背景には、「シナリオディレクション」というものの難しさ、そしてその結果をどのように客が判断したかの結果を、素早く取り込んでいきたいという意識があったのではないかと思います。

2016-06-11 23:52:51
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

アメリカのエンタティンメント業界の凄いところは、このように各個人のセンスに基づくような分野にも、きちんとしたシステムを導入することで継承可能としているところだと思います。是非、日本にもそのようなことをきちんと考えることができるスタジオが出てきて欲しいものです。

2016-06-11 23:53:50