#完全ノープラン艦これ与太話 【イン・ザ・ファイナル・デイ・オブ・オミナント】１２２５０６００【リヴァーサル・オブ・コンパス・オブ・フォーチュン】#9～#10

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実寸口径12.7cmの艦砲射撃が、巨人を撃つ！撃つ！「深雪スペシャル！イヤーッ！」「グワーッ！？」さらに大振動！巨人の体躯が大きく歪む！視界のブレが消え、立て直したメルカトルはその荒唐無稽なさまを呆然と眺めていた。不可解だった。だが、心の底から痛快であった。 #KZNPLN

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揺れる巨人。龍鳳はどうにか凹凸にしがみつき、流星を着艦させる。崩落は免れまい。モーターサクセサーは転がり落ちてゆく。龍鳳は意を決し、巨人の大腕を駆け下りた。砲撃が続く。やがて、完全に崩落した。 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【イン・ザ・ファイナル・デイ・オブ・オミナント】１２２５０６００【リヴァーサル・オブ・コンパス・オブ・フォーチュン】#9終わり。#10に続く。 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【イン・ザ・ファイナル・デイ・オブ・オミナント】１２２５０６００【リヴァーサル・オブ・コンパス・オブ・フォーチュン】#10 #KZNPLN

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――ドサンコ・ウェイストランド東北、ワンカップベイ鎮守府。 #KZNPLN

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地球温暖化により降雪日数の激減したドサンコ南部であったが、北部ともなれば今なお荒涼とした雪原と険しい山々が生物の安住を阻む。そこより更に北東、海を越えた大日本帝国の最北端たる鎮守府の面々は、凍てつく死と暖かな生を内包する暁の水平線を一望しながら目を覚ます。 #KZNPLN

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第三次世界大戦の混乱に乗じて北方の4島を軍事支配した大日本帝国は、その防衛の要として、かつてパールハーバー・アンブッシュを成功させた精鋭らの集ったこのワンカップベイに鎮守府を建造。これより北には、前線基地であるパラムシールが書類上の鎮守府として存在するのみだ。 #KZNPLN

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流氷に照り返すオレンジの陽光が、比較的小規模な港湾基地を斜めに割る。周辺の山々などの影響もあり、中枢司令部は未だ闇の中にある。それは彼女らを待つ凶兆のあらわれか、はたまた、深謀遠慮の達成を示唆する闇の導きか。 #KZNPLN

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所属艦らの慌ただしい総員起こしと同時、駆逐艦春雨はネオヨコスカ大本営からの文書を抱え、階下の喧騒が嘘のように静まり返った最上階の司令室の扉を叩いた。「クルシュナイ、這入れ」「シツレイシマス」扉を開け、深々とオジギし、扉を閉め、再びオジギ。完璧な作法だ。 #KZNPLN

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「司令官様。ネオヨコスカ大本営は元帥閣下より、件の返答が届いております」薄暗い司令室で、春風は粛々とこれを読み上げた。内容を逐次、秘書艦と思しき大柄な航空母艦が速記で要約していく。春風の透き通った声と、ペンが紙を掻き毟る雑音が、朝の静寂のなかに唯一存在していた。 #KZNPLN

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「オミナントは死ぬ。あれもようよう、益も害をも振り撒いたものよな。インガオホー、或いはショッギョ・ムッジョ……ヤンナルネ」ヨーカイめいた妖艶な長髪をフワリと束ね、北海の女狐はクツクツと微笑んだ。「最期にとんだ土産を遺して逝きおったわ。祭りに戦さじゃ、胸踊る」 #KZNPLN

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「大鳳＝サン、返信を。ワンカップベイ総司令が初春、1月1日、ゴブンコ・ライブラリへの出頭命令を了承した。……遠路遥々、妾（わらわ）手ずから打って出るのだ。盛大にもてなせと念を押しておけ」「ハイ。イヤヤヤヤヤヤヤ！」空母は常人の3倍の速記で書状を書き上げた。 #KZNPLN

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至近距離で砲撃を受け続けた巨人はあえなく崩落した。残骸は深い窪地をつくり出し、粉塵と瓦礫が陽の光を遮る。最早、その甲皮の下に潜んだあまたの電算回路はなんら意味を為さぬ屍体の血管。時折暗がりを照らす火花は、さしずめ夢想の残骸か。岩と鉄。文明以前だけがそこにあった。 #KZNPLN

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モーターサクセサーはメンポの下で喀血した。先のイクサで破損した、姉とのかつての接合部を覆っていたヴァイタルパート装甲は、転落の衝撃で完全に破損。押え付ける鎧を失った内臓が落下衝撃を呑み込み、皮膚を食い破って脇に散らばる。竜骨は折れ曲がり、下半身は感覚すらない。 #KZNPLN

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「バカ、な……私は、ニン……アバッ」モーターサクセサーは死を予感した。己の死ではない。理想の死だ。悲願の死だ。妄念の死だ。――ツカ、ツカ、ツカ。ゆっくりと、確実に、足音は近寄ってきた。歪んだ眼鏡越しに、灯の消えかけた瞳に映った、オブツダンめいた黒色のキモノ。 #KZNPLN

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「わかっていたでしょう。最初から。あの日から。グレート・クジラ事件。世界は私のすべてを奪った。日常も。家族も。――死すらも奪った。でも貴女はいまだ死がある。貴女はモータル。貴女をカラテで殴り続ければ貴女は死ぬ。それが私と貴女の、奪われたものの差。喪ったものの違い」 #KZNPLN

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軽空母はモータルの腹部を殴りつけた。辛うじて繋がっていた肝臓が潰れた。「アバッ」軽空母の拳はそのまま地面も殴りつけ、手首が折れ曲がり、骨が飛び出した。それもすぐに戻った。「ニンジャ。イイエ。貴女はただの亡霊です。死に続けるだけの亡霊です。か弱い、死すべきものです」 #KZNPLN

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軽空母はモータルの胴を蹴った。靴先が破けた皮膚の内側に潜り込み、腎臓を圧し潰した。「アバッ」そのまま靴底を引き摺った。つぶれた腸が泥と砂に混じった。「弱者を踏み躙り、引き裂き、屠り、喰らう。そうです。これがニンジャ。貴女の理想。喜べ亡霊。貴女の死は理想の魁となる」 #KZNPLN

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「貴女は恵まれています。貴女の死には確かに意味がある。命に意味がある。――私の家族に意味はなかった。皆なんの意味もなく死んだ。命とは本来そうしたものです。貴女が私から奪ったものは皆、些細で無意味なものだった。貴女の命だけが価値を持っていた。貴女は、幸福だった」 #KZNPLN

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「だからせめて貴女は私の、無意味で冗長な道の傍らで、できる限りになんの意味もなく、無価値な石礫として、芥屑同然に捨て置かれねばならないのです。私はそうします。そうできます。私は、ニンジャだから」 #KZNPLN

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モーターサクセサーは死亡した。死体は爆発四散することなく、瓦礫の山の中にとどまった。音も光も風も無く、ただ残骸として風景に同化した。やがて瓦礫も崩れてしまい、残骸ですらなくなった。 #KZNPLN

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