ストレイトロード:ルート140(20周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビがお届けする、短編という名の習作。 今回は951~1000+おまけ。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、975。伸び代。 伸び悩んだり、急に加速したりする年頃。

2016-05-22 19:56:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

遠い昔から人は鳥に憧れた。羽ばたく姿に自由を思い、彼方の世界を夢見た。翼を作る手掛かりを求め、理想へ近づいた時期もあった。だが今は様子が違う。「こんなの作って捕まらない?」「生態調査だと言えば大丈夫」藍の心配を意に介さない発明家の手から、小型の張りぼて怪物が羽ばたこうとしている。

2016-05-23 20:23:52
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、976。羽ばたく。 (自然界で)出来るやつらから技術を盗むのも科学。

2016-05-23 20:23:57
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

風の魔女率いる調査隊は意気揚々と山道を登っていたが、やがて前方から言い争う声が聞こえてきた。寄せ集めの集団は早くも足並みが乱れたか。剣呑な声は次第に私がいる最後尾へ近づいてきた。「逃げて!」藍の叫びだけが本物だった。耳障りな羽音が怪物の群れを率いて隊列を散らし、斜面を下ってくる。

2016-05-24 18:51:04
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、977。率いる。 一人は怖い山道も、集団で行けば…?

2016-05-24 18:51:09
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

廃村の跡に建った工場を見学した。かつて輸送機を造っていた企業は今、人が着込んで操縦する作業機械が主力製品という。「これ新聞で見た」「重機が入れない場所でも重い物や危険物を運べます」被り物に似た不恰好な機械はあまり安全に見えない。「着てみますか?」「はい!」藍が私の手を持ち上げた。

2016-05-25 18:47:04
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、978。不恰好。 お仕事用のメカのほとんどは大人のためにある。

2016-05-25 18:47:08
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

ある街のホテルで、藍が従業員に一枚の写真を見せた。「この人だけは絶対中に入れないで」この地域に熱心な行商人がいて、風の魔女の滞在を聞いては怪しい商品を売りつけに来るという。「諦めなければいつか思いが届くってことだけ信じてるのよ」藍の方は執拗な営業に辟易していると顔に書いてあった。

2016-05-26 19:31:10
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、979。辟易。 根負け狙いは正反対の結果を呼ぶことも多い。

2016-05-26 19:31:16
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

地図と実際の道を比べながら歩いていた藍が足を止め、斜向かいの奇抜な建物を指した。「何あのお化けみたいな塔」不自然に平面的な理由は直に解った。補修中の壁を覆う幕に建物が描かれていたのだ。「まさか本当にこんな形に改造するつもり?」古い建物ばかり並ぶ通りの住民が計画を許すとは思えない。

2016-05-27 19:33:03
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、980。補修。 古いものを守るには金と時間がかかる。あと、それを美しいと思う心も要る。

2016-05-27 19:33:12
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍が宿の主人から野球道具を借り、屋外に出て投球練習を始めた。雑誌で変化球の仕組みを読んだので試したいと言う。空気抵抗が関与することは確かだが、藍は投げ方以外で軌道を変える方法を模索しているようだ。「特技は多い方がいいでしょ?」魔球を操る魔女。平和な激闘に登板する時は来るだろうか。

2016-05-28 20:31:22
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、981。魔球。 空気が武器。

2016-05-28 20:31:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

強い日差しの下、丘の周辺は見渡す限り白く染まっていた。この地一帯に群生する花が今週見頃を迎え、細い歩道は大勢の観光客で満員になっていた。「ほら、どこも同じ草ばかり」人の波が絶えず押し寄せ、藍は息苦しそうな顔で歩き続けている。「他に何もないから、今の時期以外は誰も来ない場所なのよ」

2016-05-29 20:14:00
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、982。見頃。 今しかない、は大きな力。

2016-05-29 20:14:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「見つけた」「藍?」「部外者を独房に入れたって聞いて見に来たの」「貴女がここへ来たことを研究員の方々は」「誰とも話してないから知らない」「つまり無言であの区域を出てきたと」「いつものことだしどうせみんな知らんぷりよ。ところであなた何したの、わたしは檻に入れてって頼んだ覚えないわ」

2016-05-30 19:00:38
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、983。無言。 騒がしさの後に訪れる。あるいはその前に。

2016-05-30 19:00:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

カーテンを開けると畑一面の名画が現れた。種類の異なる麦を綿密な計画の元に蒔き、村人総出で育てたという。色づいた穂の濃淡は著名な風景画をほぼ忠実に再現していた。「わざわざ全部手作業?」説明を聞いた藍が首を傾げると、村長は笑った。「技術を残す為です。機械が壊れても麦を守れるようにと」

2016-05-31 19:19:54
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、984。名画。 見えない未来の為にただ教わるよりは、小さなゴールへの到達を繰り返す方が、きっと多く実る。

2016-05-31 19:20:00
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

見張り台が壊滅。深夜の一報は怪物に怯える街から瞬時に眠りを奪った。車内で休んでいた私は藍に叩き起こされ、現場へ急行した。「何が襲ったかもよく判らない」当時は全員正しく持ち場についていたと責任者は語った。配置を聞き出した藍は半壊した塔を見上げた。「空しか見てなかったってことない?」

2016-06-01 19:30:06
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、985。持ち場。 人はどこかを見ている時、別のどこかを見ていない。

2016-06-01 19:30:49
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍の親族の家に泊まる間、私達は朝早くから裏手の農園で野菜の世話を手伝った。なかなか私を信用しない家の主人は指示も視線も厳しい。「そこ、顔が暗い!」藍は水撒きを妙に張り切っていた。「手抜きは全部野菜の形に出るってさっき言われたの!」後日、想像以上に育った野菜の写真がメールで届いた。

2016-06-02 19:10:25
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、986。野菜。 雑な仕事と真摯な仕事は結果で分かる。(ただしやる気があっても行き過ぎはよくない。)

2016-06-02 19:10:35
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍はホテルの客室でフットボールの中継番組を観ていた。退屈そうな理由を聞くと、優勝を決める一戦の途中で雷雨に見舞われ、試合が中断しているという。「この大会、毎年肝心な時に雨が降るの」画面は誰もいないフィールドだけを映している。「それで毎年優勝を逃すチームがいるのよ。今年もダメそう」

2016-06-03 19:45:40
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、987。優勝。 2位じゃ終われない。でも敵は首位のチームとは限らない。

2016-06-03 19:45:47