不知火に落ち度はない 51(不知火&嵐)
「でよ? 萩ってそんときまっぱで飛び出してったんだぜ」 「そりゃ是非見たかったね」 「百年の恋も一発で冷めるぜあれ。ぎゃああ、って叫んでたし」 「だから余計見たかった。俺そういうの見たことないんだよねー」 今は萩風が浴室でムカデと遭遇した話だった。 #不知火に落ち度はない
2016-07-10 20:10:06「んじゃ、嵐。そろそろ帰るかい? もうこんな時間だぜ」 「おう。支払いよろしくな、長瀬☆」 「もちろん。イタリアンは女におごらせませんから」 「上出来。そゆとこしっかりしとけば入れ食いだ。現金だよな?」 けらけら笑いながら、隣を歩く。 #不知火に落ち度はない
2016-07-10 20:12:14そうして移動する車内の中も、やはり変わらない。 気軽に話をして、ホテルの前まで送り届けて貰う。 「それじゃな。またどっかで」 「おう、どっかで。長瀬、ちゃんと生きてろよ」 「嵐こそ道に迷って変なとこ行かないように」 「あ、てめ」 まるで兄妹だった。 #不知火に落ち度はない
2016-07-10 20:15:20■
「萩ぃ、ただいまー」 「あ、おかえりなさい。嵐」 ホテルの一室に戻ると、萩風はいつもの通り迎えてくれた。 今は私服姿で、一人いろいろと堪能をしていたらしい。 部屋に有るお茶が増えていたから。 #不知火に落ち度はない
2016-07-10 20:17:23「……ってまた飲んだの嵐?」 「バッチリワイン2本開けてきました!」 「自慢するように言わないで! もー、日本だと未成年はだめなんだからー」 はあ、とため息をついて姉ぶる萩風。 そこまであわせて萩風は萩風であった。 #不知火に落ち度はない
2016-07-10 20:18:39「土産あるぞ、ほら」 「……え。ホントにハーブ? あったの?」 「クレイジーソルト」 「こらー!」 けらけら笑って逃げる嵐を追いかける萩風。 これもいつもの光景と言え──そして、ベッドへと逃げ込んだあたりで、萩風が言う。 #不知火に落ち度はない
2016-07-10 20:20:13「……嵐、どうしたの?」 「え? 何が?」 ぽつ、と不安げに言った言葉に、嵐は小首をかしげて。 #不知火に落ち度はない
2016-07-10 20:21:03「……貴方、泣いてるけど」 「え……」 手で触る。 指先に、水滴がつく。 ぽつ、ぽつと。 ぽろり、ぽろりと。 頬を伝って、涙がこぼれ落ちてきた。 #不知火に落ち度はない
2016-07-10 20:22:50ダメだ。それに気づいたらもう、止められない。 平気なことなんてない。 そんなこと、我慢出来るはずもない。 後から後から、涙は出てきて止まらない。 胸が痛み、頭がぐちゃぐちゃになり、あの一瞬がまた帰って来た。 #不知火に落ち度はない
2016-07-10 20:23:49「萩ぃ……」 ふられた。 断られた。 やさしく、切り捨てられた。 真剣だったのに。 これ以上なく、全てを賭けたのに。 そんな想いが、蓋をした上から一気に吹き出してくる。 #不知火に落ち度はない
2016-07-10 20:24:56萩風は、ただそれに対して、手をさしのべ。 嵐の頭を抱くようにして、胸を押し当ててきた。 「全部、話して。ね?」 「萩ぃ……ぃっっ!!」 暖かく柔らかい胸中に、顔を埋めたまま。 嵐は生まれてから、一番大声で泣きじゃくった。 #不知火に落ち度はない
2016-07-10 20:26:58B面:嵐編 あとがき&おまけ
萩風と嵐のその後
親友とは、とても得がたい大切なものです。
「……長瀬さん、か」 「……うん」 「どんなひと?」 「ロン毛でチャラくて……」 「うん……」 「すげえやつ……ヒーロー」 #不知火に落ち度はない #おまけ
2016-07-10 20:33:45──許せないわね。 「萩?」 「どうしたの……?」 「なんか、今言わなかった?」 「なあんにも。今日は一緒に寝る?」 「昔みたいに…?」 「そう。初めて会った時みたいに」 #不知火に落ち度はない #おまけ
2016-07-10 20:36:55アンケートのお知らせ
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