ダンゲロス流血少女・フライングSS『飛べない鳥より飛べる鳥?』

流血少女DF自キャラのプロローグですよ。
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東和瞬 @honyakushiya

≪そうね、今は言語さんの提案に乗りましょうか。≫ 「わかったわ。だからって焚書さんが貧乳の宇宙人だなんて『今なんて言った』言ったりはしないから安心していいのよ、ね?」 この美少女の沸点は何億度なのだろうか? 光と熱を操る以上、低いということは無いはずだが、上昇する速度が速すぎた。

2016-07-20 10:39:45
東和瞬 @honyakushiya

手に握った銀の匙が蒸発する。摂氏千度を越える蒸発温度を考えると、その言葉に力があったことは確実である。 一方で、焚書は長い黒髪が一同を覆い隠す。よってノーダメージ! そのくらいの分別はあったのだ。平安貴族のように地に着いて流れる髪の長さは、おそらく本体の倍はある。

2016-07-20 10:45:58
東和瞬 @honyakushiya

「「「言った!「言ってません」」言ったけど言ってませんよ」」」 三者三様の声が調和する。 言語は思った。しかしまあ、同じ十七歳でもこうも体型が違うとはな……。 『体型』を仮にステータス化するなら【貧相】と【普通(おっぱいはおっきい)】の違いと言えるだろうが、この差は残酷すぎる。

2016-07-20 10:50:32
東和瞬 @honyakushiya

「咲夢……嘘をついてるよな。絶、対【豊満】だろ、お前」 女性二人からゴミを見る視線を向けられながら言語はマイペースを崩さない。だが、気は削がれたようだった。 「ま、おっぱい談義は置いといてだ。やっと口で話してくれたな口舌院焚書。本題に入ろうか、人工魔人なんだがありゃどうするよ?」

2016-07-20 10:59:27
東和瞬 @honyakushiya

「ここからはオフレコで頼もうかな?」 焚書に向け言う。ここの最上位者の言葉だ、異論などあるはずもない。 「と、その前に――銀の蒸気は多少は人体に有害だ。河岸を変えようか」 立ち上がる。月の乙女と太陽の皇女に挟まれて両手の花と言うにはなかなか難しい立ち位置であるが、扉を開いてやる。

2016-07-20 13:40:43
東和瞬 @honyakushiya

人工魔人――、言語の代で妃芽薗に支部が置かれていた(・・)ことに引っ掛かりを覚えないことはないが、今は取っ掛かりを得たことを喜ぶとする。 妃芽薗の背後にいる十束学園との間にある程度の連携は取れている。シスマ、パラシトス、マスコット。魔人もどき<マグソイド>と呼ばれる魔法少女……。

2016-07-20 13:58:03
東和瞬 @honyakushiya

回廊を進みながら思考を進める。 こと人造魔人については他の追随を許さないと言っていいだろう。だが、我々にもアドバンテージがある。 「魔人能力の自立」、そのための重要な研究材料となる<スーツ>と呼ばれる『Sの眷属』の現物が手元にある。同じSでもスズハラより一歩先んじていると信じる。

2016-07-20 14:08:37
東和瞬 @honyakushiya

「言わせてもらうと転校生についてはまだ未解明の点が多いのが難点ね。『識家』や『スズハラ機関』に頭を下げるのは私としても御免被るわ」 「当然だ。我々は2014年の『暦』、前年度のような無様を晒したりはしない」 卯月言語はかつての副部長、いわゆるいい人だったジャンヌを思い出していた。

2016-07-20 14:14:41
東和瞬 @honyakushiya

世界の影で暗躍する秘密結社のひとつとして、数多くの人間の運命を動かす力を持ちながら単なる学生同士の仲良しこよしに貶めたことを彼は軽蔑する。 「なるほど。それが昨年の顛末ですかー? 閣下の考えを読むのは難しいですが、副部長の計画の先にかの人の望むものがあるなら――と信じていますよ」

2016-07-20 14:38:13
東和瞬 @honyakushiya

あまりにも唐突な声だった。 最初か細く、段々大きくなっていく。しかし前後を見渡しても気配はない。焚書が訝しんでいるとゴロゴロ、続いてガリガリと何かを転がすような音が混じって聞こえづらくなる。 「ょけてぇー!」 電話BOXが風景画から飛び出してくるシュールな光景は声のすぐ後だった。

2016-07-20 14:46:27
東和瞬 @honyakushiya

競技カルタに関して圧倒的な速度を誇り、上半身の腕の振りを介するなら光速の反射速度を持つ焚書をして、これ予想外だったと言っておく。対魔人戦闘に対しては経験値が低すぎたともいう。結果、皐月咲夢に手を引かれて――口舌院焚書は宙を舞った。 「これも暗殺というのかしら? また会いましょう」

2016-07-20 18:03:37
東和瞬 @honyakushiya

仕立ての良い小袖袴一式をその場に残して口舌院焚書は消えた。 これぞ空蝉の術と玄人は評するのかもしれないが、生憎彼女は忍者ではない。魔人能力である。 ある理由から口舌院焚書は自分が死なないと信じているが、それとは別に彼女の命を守る能力は無数に働いている。これもそのひとつだった。

2016-07-20 18:08:45
東和瞬 @honyakushiya

「葡萄月アマリリスか、また唐突なご登場で」 キャニスター付き電話BOXというハイソかレトロかよくわからないアイテムの中に少女が座っている。文明の利器としての電話を擬人化したような中学生だった。 よく観察していれば湖畔を描いた風景画の遠方から異物が迫ってくるとわかっただろう。

2016-07-20 20:44:55
東和瞬 @honyakushiya

「愛する魔人能力に轢かれて焚書さんも幸せだったでしょうね」 そうは言うが、実のところ電話BOXと魔人能力は全く関係ない。黒髪黒目、揺らいでいるような印象を与える彼女アマリリスの能力は「ポケット・ビスカッセ」、割とありふれた万物分割能力である。 咲夢はそれをわかっていて言うのだ。

2016-07-20 20:56:52
東和瞬 @honyakushiya

絵画と絵画を繋ぎ、異世界や並行世界への渡航を可能とする魔人能力「隠れ画(エルミタージュ)」。これはアマリリスの盟友「芽月リュドミラ」の物だ。 二人とも「革命暦(カランドリエ)」の中心人物といえば通りはいいだろう。暦本部への直通ルートを持っていることから二人の重要性は推して知れる。

2016-07-20 21:03:29
東和瞬 @honyakushiya

「貴女が顔を出すなんて珍しいけど、部長派の筆頭が何の用かしら。芽月さんが顔を出さないって心配していたからそっちに行ってあげたらどう?」 外面はひたすらによい副部長の下まとまった「暦」と、その妹組織「カランドリエ」。その差は歴然だった。後者はただひたすらにまとまりがない。

2016-07-20 21:15:06
東和瞬 @honyakushiya

だが、個人的コネクションには注意を払うべきだろう。 「葡萄月さん――、君が『暦』に探偵を持ち込んだのは知っていたつもりだがどういうことなんだい?」 おかげで話がややこしくなって仕方がないじゃないか――。 独りごちる声は実感と少々の恨み言、ぎりぎり聞こえる程度に調整してある。

2016-07-27 12:31:15
東和瞬 @honyakushiya

「やぁ、それは難儀でしたね? ですけれど、それはわたしがかかずらわずとも変わらなかったと思いますよ。もう――口舌院は皇族になってしまいましたから」 世界の裏で暗躍する秘密結社、『識家』、『スズハラ機関』、『ニャントロ国際親善協会』、『十束学園』、そして『暦』と『探偵』……。

2016-07-27 12:32:39
東和瞬 @honyakushiya

主だった組織の中で『探偵』だけに固有名詞が与えられていないが、理由はある。それは複数の探偵組織が多くの人工探偵によって草結びされる緩やかな連合であるためである。 彼らの目的は非常に限定的だ。つまり、尊皇思想に寄りかかる探偵国家の成立。口舌院焚書も探偵が肩入れする君主の一人だった。

2016-07-27 12:34:32
東和瞬 @honyakushiya

その一族であるなら必然的に監視要員も増強される。 道明寺羅門のコシヒカリ・パンデミック解決に当たってカランドリエに配置された「遠藤之本格古笹ヶ菖蒲」が希望崎学園を訪れたことを切っ掛けに大正時代出身の転校生探偵「雨月星座」の登場など、知らぬ間の探偵との縁は枚挙に暇がなかった。

2016-07-27 12:35:52
東和瞬 @honyakushiya

全く面白くはないが! 「だけど、『迷宮時計』の一件は全く要領を得なかった。口舌院の家名は必要経費と割り切るけれど、主導権はこちらにあるということを忘れないでね?」 咲夢が念を押す。部外者に事態を引っ掻き回されることを嫌うのは当然だ。この指摘に電話系魔人アマリリスもバツが悪そうだ。

2016-07-27 12:37:04
東和瞬 @honyakushiya

「大正時代の発見、それを経由した睦月さんのサルベージ(再利用)。ちょっとした浅草見物、戦力増強――それは認める。けど、よりにもよって『風月』の永久欠番は大失態ね」 咲夢はさらにカードを切る。 観念したアマリリスは外したヘッドセットに続いて電話BOXから出た。意外と長身であった。

2016-07-27 12:39:05
東和瞬 @honyakushiya

人工探偵「風月藤原京」の失陥、行方不明に伴って欠員を埋める新入りを加えることも不可能となっている。部長から預かった組織を傷つけたのは崇拝者にとって触れられたくない黒歴史だった。 「探偵に肩入れするのは結構。だけど、後片づけが出来ないなら散らかすべきじゃあないわ。……卯月副部長」

2016-07-27 12:40:07
東和瞬 @honyakushiya

腹心の追及を引き継ぎ卯月言語は言い放つ。 「悪いが手加減は無しだ。焚書に帰ってもらったことに礼は言うが、次からは正規の手段で門を叩いてくれ」 嗚呼この人はこんな冷たい声も出せるのだなあとアマリリスは思った。多少なりとも恩を受けたものならこの声を出させまいと思ってしまうのだろう。

2016-07-27 12:41:10
東和瞬 @honyakushiya

だが、頭を上げたアマリリスがまず気にしたことは時計を見ることだった。 中央回廊に置かれた大時計の針は午後三時を指し。 「あら、おやつの時か、」 咲夢が戯れを兼ねて言葉を出そうとした瞬間だった。 「はいはいはい! 交代交替こうたーい!」 すべての伏線を無視して探偵が現れる。

2016-08-07 18:22:33
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