☆丸山隆平【白藍の月】

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蒼いの∞妄想部屋(月の間) @daikyury

《丸山隆平》 【白藍の月 1】 おぞましい程 静かで 凛とした夜更け 妙に近くて 明るくて 不安を駆り立てる月 おまえは…何を求めてる? どこに向かおうとしてる? pic.twitter.com/hUbjh39evV

2016-07-06 03:58:04
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【白藍の月 2】 鳥が… けたたましく啼いておる 何に怯えておる 蒼白く浮かぶ月のせいか? 「…あっ…やぁ…ん、」 腰を突き出し 背中を仰け反らして もっと、もっと、と 躰がねだっておる …つまらん あんなに欲しくて 血に染まり 手に入れた鳥なのに

2016-07-06 03:58:06
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【白藍の月 3】 こんなにも 面白味のない鳥だったとは …何人の男に飼われてきた? 鳥籠から鳥籠へと 生き残る術 その躰を惜しげもなく 晒し与える 小狡い鳥… 従順とも違う 生き抜く知恵 動きを止め くるりとひっくり返した 「あっ…なっ…に」 ほうら 嘘の啼き声

2016-07-06 03:58:10
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【白藍の月 4】 『嘘啼きか?』 冷たい…氷のような… その瞳 「くっ…」 顔を背け唇を噛む鳥 『私を欺けるとでも?』 可哀想な鳥 本当の悦びも知らぬまま 次から次に 新しい飼い主の鳥籠の中 嘘啼きを覚え 飼い主のを咥え込む 羽ばたく事を忘れた 両翼はボロボロ

2016-07-06 03:58:16
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【白藍の月 5】 『私に嘘を通じん』 ズルっ… ソコから抜いた 「…」 憐れみや情けなど 微塵も求めていない その瞳の奥にあるのは 何だ? 強い意思か? 諦めか? 誰にも懐きもせず あわよくば 飼い主の寝首をかき 己の羽で 鳥籠から羽ばたこうと 目論んでいるのか?

2016-07-06 03:58:19
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【白藍の月 6】 鳥は唇の端を 少し上げて笑った 「お気に召さぬのなら、この首を落としてくださいませ」 『…それは…せん』 「では、続きを?」 『せっかくの月を、己の血で紅く染めとうない』 窓辺から見える 蒼白い月 誰のモノにもなり 誰のモノにもならぬ 「どのように?」

2016-07-06 03:58:23
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【白藍の月 7】 従順にみせかけ 飼われてるかの如く振舞う 真に飼い慣らしてみたい… ただ弄ぶために 私の鳥籠に押し込めた 味見をしてつまらなければ 臣下にでもくれてやるつもりだった …面白い みせかけではなく 真に啼かせてみたい 女の悦びを味わい ひれ伏すがよい

2016-07-06 03:58:28
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【白藍の月 8】 『私がそなたに真の悦びを与えてやろう』 「真の悦び…?」 『そうだ』 「私はいつでも快楽に躰を任せておりますが…?」 『任せてる“ふり”であろう?』 「いえ、けしてそのような事は…」 伏し目がちに答える鳥 そなたが嘘をついていようが いまいが どうでもよい

2016-07-06 03:58:31
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【白藍の月 9】 『こちらに…』 起きあがらせて 鳥を引き寄せた 窓辺に2人で立ち 蒼白い月を眺めた 『…私は月が好きだ』 「…ワタクシは怖い…です」 『怖い?』 「吸い込まれてしまいそうな錯覚をします」 『何もかも…見透かされてるようで?』 鳥のこめかみにキスをした

2016-07-06 03:58:36
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【白藍の月 10】 その夜は しばらく2人で月を愛でながら 他愛ない話をした 夜も更けて 全ての音が 闇に溶けて 鳥の寝息だけが 部屋の中で響く 私は 対の塔にいる 一番お気に入りの鳥を 思い返していた ここで 違う鳥を愛撫してると言ったら なんと言うのだろうか…

2016-07-06 03:58:41
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【白藍の月 11】 月がまだ蒼白く 空に瞬いていた 深く眠るその部屋を 後にして 私は彼の所へ向かう 彼は私が訪れるのを 知っていたかのように 出迎えた 〔お待ちしておりました〕 『うむ』 〔此度はどのようなものを〕 『まずは、いつものを』 〔かしこまりました〕

2016-07-06 03:58:47
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【白藍の月 12】 〔いつご所望で…〕 『明日だ』 〔かしこまりました〕 『頼んだぞ』 彼の元を後にする 唯一無二の部下 この私が 信頼を寄せる者 そして…手放したくない者 しかし…いつか私の手で命を止める でなければ 彼が私の命を止めるであろう いつ、その日が来るか

2016-07-06 03:58:52
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【白藍の月 13】 真夜中 静まり返った城 私の足音だけが響く 対の塔へ 愛しき鳥の 羽根の下で眠りたい 安らぎが欲しい 数多の血飛沫を浴び 闇の住人が こちら側にと 手招きする 命を止めるなんぞ 1つも怖くない 私は闇の住人に なり下がる方が怖い 私は人でおりたい

2016-07-06 03:59:02
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【白藍の月 14】 真っ白な夜着が透けて たわわな膨らみがみえる 夜着の上から触れる “あっ…” そのせりあがった双丘に 顔を埋めた “…さま” 鳥はふわりと私の頭を その羽根で抱きしめた “今宵はおいでにならないかと…” “新しい囲い者をお連れになられたとか…”

2016-07-06 03:59:08
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【白藍の月 15】 『うむ、つまらぬ女だった』 “ふふ” はにかむような それでいて 勝ち誇ったような瞳 『もう、この話はよいではないか』 “お疲れでございますか?” 『少し』 “では、おやすみになられてくださいませ” “まだ夜は長うございます” 鳥は優しく私の頭を撫ぜた

2016-07-06 03:59:12
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【白藍の月 16】 小声で子守唄を囀る 心地よく 眠りに誘う 久しぶりに 朝まで眠れるかもしれぬ 数多の血を流し やっと手に入れた その証に 新しい鳥を連れ帰った しかし いつ寝首をかかれるやもしれぬ 騙し 裏切り 貶める 誰にもさせぬ 私は絶対でなければならぬ

2016-07-06 03:59:21
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【白藍の月 17】 “…様?朝でございますよ” 太陽が東の空に上り 私の栄光を讃えるようだ 何も怯える事はない その先も眩しい光が 私を包むであろう ……ちゅっ そして 私に安らぎを与えておくれ 特別な鳥よ そなたが傍におるだけで 私は私でいられる 闇に打ち勝てる

2016-07-14 02:25:51
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【白藍の月 18】 誰よりも傍に ただ生まれいづる元が 定かでないため 私の妻に出来ぬ者 利口な鳥 己をよく知ってるおる 与えるモノ以外 望まぬ このまま 全てを委ねて 野心も野望も捨ておけたら “このまま…どこにもお行きになりませぬか?” 『そうしていたいところだが…』

2016-07-14 02:26:01
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【白藍の月 19】 起き上がり もう1度口づけをかわす 『また…』 “いってらっしゃいませ” 彼の元へ 闘いの後は 滾る昂りを どうにもおさめる事ができぬ 欲が止まらぬ 食も微睡みも淫も 何もかも満たしたい 眩しい光も届かぬ 彼の元へ 〔お待ちしておりました〕

2016-07-14 02:26:04
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【白藍の月 20】 『うむ』 〔お望みの薬でございます〕 〔触れただけで、淫の悦びに乱れます〕 『うむ』 〔新しき囲い者にでございますか?〕 『あぁ…』 〔存分にお楽しみください〕 彼の瞳 その奥に 何を隠し持ってる? 『望めばどんな薬も調合できるのか?』 ふと聞いてみた

2016-07-14 02:26:08
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【白藍の月 21】 〔お望みにもよりますが…〕 『そうか』 〔どんな薬をお望みで?〕 『いや、特にあるわけではない 聞いてみただけだ』 〔さようでございますか〕 踵を返して 扉に向かった もう目覚めておるだろうか 早く試してみたくて 急ぎ扉を開けて 足早に向かう

2016-07-14 02:26:11
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【白藍の月 22】 歩きながら 望みの薬の事を考えていた 彼ならば 調合できぬモノは ないような気がする どのような無理難題でも 最後には望みのモノができてる 魔の使い魔か…? 私を闇に引き摺りこむための? ふっ 唇の片端をあげて笑う それでも構わぬ 私には彼が必要だ

2016-07-14 02:26:14
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【白藍の月 23】 『起きているか?』 まっすぐ鳥の元へ 驚いて目を丸くさせている 「何事でございますか?」 『何でもよい』 「まだ、朝のお食事もいただいておりませんのに…」 『後にせい』 ベッドに横になってる鳥に跨る 彼から受け取った薬を 口に含み 鳥にキスをした

2016-07-14 02:26:18
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【白藍の月 24】 鳥に口移し 舌で押し込み 飲み込ませた こくん 「うっ…」 「な、何をなさいますっ」 『毒ではない…はずだ』 少し薬がつかえたのか 苦しげな表情 どれくらいで効いてくるのか それは私もわからない それでも苦悶の表情は 私を誘ってるかのようだ

2016-07-14 02:26:21
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【白藍の月 25】 そっと頬にふれてみた 「あっ…」 即効性があるようだ 触れた頬が熱い やはり彼の仕事は間違いがない 耳元で囁いてやる 『気持ちよいか?』 そして耳朶を噛んだ 「ひっ!」 急に押し寄せる快感に 戸惑ってるのか 体を捩り逃げようとする

2016-07-14 02:26:24