幽霊戦車です! ―退職刑事いまだ健在なり ガールズ&パンツァー出張編―
五郎「お父さんもテレビでみたことはあるでしょう、戦車道、という女の習い事が、ありますね。その戦車道でつかう、戦車に轢かれた死体が、東京港に寄港中の、大洗の学園艦から、みつかりました。」 退職「戦車道、というのは、死人がでないようになっているのじゃなかったかな、五郎」
2016-07-14 21:22:45五郎「お父さん、それは、乗員の話です。なにやら、特殊なカーボンを、内装につかっているとかで、派手に弾を撃ち合って、直撃しても、戦車の中では平気だとか」 退職「そういえば、観客は、離れた会場で、撃ち合いや、追いかけっこを、大きなスクリーンで見ているな。やはり近くにいては危険か」
2016-07-14 21:28:47五郎「戦車が好きで近付きすぎて轢かれたんだろう、というのが最初の見立てでした」 退職「最初の、ということは、そうじゃなかったんだな」 五郎「はい。戦車に轢かれたのはまちがいない。ですが、死亡推定時刻には、学園艦のなかの戦車はぜんぶ、戦車道の試合に出ていました」
2016-07-14 21:46:34退職「戦車があるはずのないところで、戦車に轢かれた、というわけか。戦車の幽霊のしわざかな。いや、幽霊なら足がないはずだ。足にあたる無限軌道もないのに、轢かれるはずもないな」 五郎「おもしろがるのは結構ですが、茶化さないでくださいよ」
2016-07-14 21:53:22退職「ははは。まあ普通に考えるなら、台帳に載っていない戦車がないか、調べなければな」 五郎「それが、大洗の学園艦は、ちょっと前の廃艦廃校さわぎのときに、台帳未登録の戦車も根こそぎ洗いだされたばかりなんです。」
2016-07-14 22:10:14@tsundokulib 退職「ところで五郎、その死体が「戦車に轢かれた」という鑑識結果の根拠は何だったのかな?」 五郎「そうくると思ってましたよ、お父さん。戦車以外の車両や重機によるものを戦車に轢かれたように見せかけたとおっしゃりたいんでしょうけれど、それは有り得ないんです。」
2016-07-16 06:19:07五郎「被害者の服についていた塗料片や砂から、戦車の砲弾の、弾薬の成分が出ています。普通の建設機械に轢かれたなら、でるはずはないでしょう」 退職「すると五郎、これは「戦車がいない場所で戦車に轢かれた」ことが問題ではないよ」 五郎「どういうことですか」 @jinensai
2016-07-17 11:01:49退職「単純なことさ。大洗の学園艦の外のどこかから、死体がもちこまれたんだ。そして、発見されるのはもっとあとになるはずだった」 五郎「ちょっと、ついていけなくなってきました」 退職「大洗の廃校廃艦さわぎは、つい最近のことだ。まだ廃校廃艦をもくろむ人間はのこっているだろう」
2016-07-17 16:33:32退職「戦車の直前は視界がわるい。だから本土決戦のあかつきには、地雷を抱いて戦車に突っ込め、なんていう無茶をいわれた、というのはいくつも証言があるね」 父はそういって関西の近眼肥躯のSF作家や根岸の落語家の名を挙げた。
2016-07-17 16:43:16退職「見立て通り「戦車が好きで近付きすぎて轢かれた」のなら、仏さんは試合で待機中の戦車をこっそり見ていたのだろう。そして急発進した戦車に巻き込まれた。それは大洗の戦車には限らないはずだよ。」 五郎「轢いた方は気づかず、死体だけがそこに残ったんですね?」 @tsundokulib
2016-07-17 18:19:19退職「単なる事故で届け出ればすんだのだろうが、いま、事故でも不祥事がでてはまずい所がある。しかも大洗に厄介ごとを押し付けたい所、となると、轢いてしまったのは、社会人か大学の、プロ内定者、あるいは、無免許のスポンサーに、こっそり戦車を操らせていたか」 @jinensai
2016-07-17 19:50:22退職「学園艦のめだたない練習場に移して、発見が遅れれば、大洗が練習中に死亡事故を隠蔽した、と世間に信じさせることができたろう。だが、早くに見つかって、大洗の戦車にははっきりとアリバイが成立してしまった。これは、事故を起こした方も、一枚岩ではなさそうだね」 @jinensai
2016-07-17 19:54:47五郎「その仮説通りとしても東京港に停泊中の艦に、どうやって死体を運び込んだんでしょうね。」 退職「確か他の艦に偵察に行ったお嬢さんがサークルKサンクスのコンテナに紛れて潜入していたようだね。」 五郎「お父さんも立派なガルパンおじさんでしたか……。」 @tsundokulib
2016-07-17 21:16:26退職「おいおい五郎、劇場版に連れていく約束が果たせそうにない、と、お前が前売り券をもって孫を連れて来たんだろう」 五郎「いやーそうでしたそうでした」 退職「ガルパンは」 五郎「いいぞ」 @jinensai
2016-07-17 21:21:21その後、社会人戦車道チームの中堅選手が数人、急な競技引退を表明し、プロ戦車道準備会事務局でも大規模な人事異動があった。メガネの目立つ文科省からの出向者は本省に戻れず、プロリーグ事務局にも残れなかったようである。 @jinensai
2016-07-17 21:27:57