世界樹5メモ

まとめ。
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里村邦彦 @SaTMRa

菅沼新生は女子高生である。菅沼新生は演劇部である。といっても全国高等学校演劇協議会に加盟しておらず、現状の非・幽霊部員が新生(ニオ、と読む)一人だけであり、かつ演劇らしい演劇をしていないとなったら、これは果たして演劇部と呼んでいいのか甚だしく疑問である。 #人畜神話の果て

2016-08-08 14:54:39
里村邦彦 @SaTMRa

もともとこの「演劇部」は、近場の公民館で芝居を打っていたらしい。それも豪く時代錯誤な、三度笠の浪人がチャンバラするような奴を。ニオはそれを小さい頃見て、とうとう上演元にたどり着いたが、何一つ残っていなかった。いやあった。残ってはいた。小道具だけは山ほどあった。 #人畜神話の果て

2016-08-08 14:58:36
里村邦彦 @SaTMRa

そこでニオは稽古を始めた。だいたいそこがずれているのだが、芝居ではなく剣の稽古である。ビデオを見ながら刀を振った。刃の潰れた模造刀、ふといダイカストの塊を、朝な夕なに千べん振った。剣道部でもないのにである。一人っきりの部室もどきに、ついたあだ名は菅沼道場。 #人畜神話の果て

2016-08-08 15:02:50
里村邦彦 @SaTMRa

奇人変人扱いであり、寄り付くやつからしていなかった。人当たりが悪いわけではない。むしろ好人物の部類である。気が利かないというわけでもない。ただひたすらに、刀を振り回したいという願いが先に立っていただけである。訪ねてくるのは悪友の、花菱茉莉花くらいのものだ。 #人畜神話の果て

2016-08-08 15:06:41
里村邦彦 @SaTMRa

花菱茉莉花は帰宅部である。花菱茉莉花は文化部である。文化部棟を彷徨って、妖怪のように部室に上がり込み、茶や菓子などをせしめている。無所属。花菱茉莉花。ニオの数少ない友人であり、香具師と商品の関係でもある。文化祭、出し物はガマの油売り。これはマリカの仕込みだった。#人畜神話の果て

2016-08-08 15:12:30
里村邦彦 @SaTMRa

今年も何かせねばならん、なにしろ無活動は部室没収、せめて在学中は使いたいのだ。諸々小道具を新調しに、浅草仲見世探して冷やかし、甘いものでも食べたあと、スカイツリーに登ろう。登ろう。どうやらそういうことになった。そこが運命の分かれ道だと、二人にはまだ知る由もない。#人畜神話の果て

2016-08-08 15:15:53
里村邦彦 @SaTMRa

東京タワーからだと思っていた。すっとした、金髪か銀髪か栗色の髪の美少年と出会うと思っていた。勿論異世界召喚のことに決まっている。マリカはネット小説より古い漫画の党派なのだ。実際は、金髪ではあるけどもお姉さんと、元気な婆様と、青肌のロリロリしたのに囲まれている。#人畜神話の果て

2016-08-08 15:25:16
里村邦彦 @SaTMRa

状況を整理しよう。ここはアルカディア(感傷的な名前!)、七つの丘の都(ローマ帝国かよ!)。四つの種族(ファンタジィ!)が世界樹(どこの神話だよ!)の探索に挑んでいる真っ最中で突っ込んだらキリがない。要するにニオとマリカは(自分はサブキャラだ)冒険者になった。 #人畜神話の果て

2016-08-08 15:33:13
里村邦彦 @SaTMRa

人権思想とかまあ、ないだろう。四大種族、どこそこの氏族、親と祖父母が誰の誰兵衛。それがなければ生きる価値なし。幸いなのは魔法(ファンタジィ、もういいか)と謎薬学のおかげで、衛生状態がいいことだった。そうでなくてはニオもマリカも、謎パワーありでも死んでいたろう。 #人畜神話の果て

2016-08-08 15:35:32
里村邦彦 @SaTMRa

ラジ婆が世話をしてくれて、どうにかセリアン(獣耳)系冒険者として、世界樹の迷宮に紛れ込んだ。これが現状。たぶん帰れない。これが現実。ニオはノリノリ。大変遺憾。いうても冒険者、これ以外の商売どうもない。なにしろ雇ってくれるところがないのだ。だったら精々盛り上げる。#人畜神話の果て

2016-08-08 15:38:36
里村邦彦 @SaTMRa

実質ニオと二人きりだというのはまあ、唯一マシな点だし。五番目の種族になるのも悪くない。どうやってかは置いておくとして。なにはともあれ花菱茉莉花は、太鼓持ちとして迷宮に挑む。 #人畜神話の果て

2016-08-08 15:41:41