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森田季節 Twitter小説「ニイイチゴ」

森田季節さん(@moritakisetsu)のバレンタイン短編Twitter小説「ニイイチゴ」
バレンタイン 小説 ライトノベル 森田季節
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森田季節@スライム漫画6巻・ヒラ役人漫画2巻発売中! @moritakisetsu
「ニイイチゴ」森田季節俺、上杉カズアキ、高一。今年の214の戦績も零(妹がくれたのを入れれば壱)。まあ、惨敗と言ってよかった。正直、今年はちょっと期待してた。平山とは割と仲良くしゃべってたつもりだったんだけど。アイツ、誰かにチョコあげたのかな。
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休み時間、ぼうっとしてると平山が話しかけてきた。やたらと楽しそうに。「ねえねえ、上杉、チョコもらった?」「うっさいな。妹だけだよ」「あらあら、やっぱり」この雰囲気なら聞けると思った。「お前は誰かに本命とかあげたの?」「ううん。誰にも」「その割には楽しそうだけどさ」
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「だって今日はチョコが安くなる日だもん。がっつり買い占めてやろうって」なるほど、そういうことか。「ねえ、もしチョコ好きだったら上杉も来ない?」それは寝耳に水の提案だった。「ばりぼりチョコ食ってやろうよ」これ以上の妙案があるかという顔で平山は笑った。
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ショッピングモールの中のスーパーに行くとワゴンにどっさりピンクの包装が積んであった。平山はがっつりそれをカゴに入れていく。俺もヤケで三つ買った。買い物は十五分で終わり、俺たちはベンチに座って早速チョコをあけだした。かぎ慣れたあの匂いが鼻を突く。屈辱の匂いだ。
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これが平山からもらったものだったらなと思いつつ、俺は最初の一個を口に投げた。横では平山も三つもまとめて口に入れていた。もう、何かの儀式のようだった。バカ食いする平山を横目で見て、俺は不謹慎ながら性的に興奮した。なんでか平山をすごく近くに感じた。
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これってモテない者同士の傷の舐めあいってことだよな。じゃあ、俺がここで告っても全然問題ないんじゃないか? まあ、それはきつくても、そのチョコくれよって言うぐらいならできるだろ。ほら、どうせチョコなんて市販のものだし、いくらでも替えがきくものだし。
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だから、みんなチョコで意思表示に使うんだよな。言葉にするより気楽だからさ。だから、俺だって気楽に言えばいいんだ。そいつをくれって。「なあ、平山」そう言いかけた時、「バレンタインのばかやろう!」平山が人目もはばからず叫んだ。「もう、みんな呪われろ!」
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「さっきはごめんね」帰り道、平山に謝られた。「あの日はろくな思い出なくてさ、だから二度とチョコも買ってないの」「大量購入したとこだろ」「15日ならいいのよ。呪いが入ってないから。14日までのはすごく重いの。だから値段も高いの」
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平山は中2の時に先輩に本命チョコを送ったことがある、と言った。「でも、受け取ってもらえなかった。付き合ってる人がいるからって。しょうもない失恋だけど、そのあとがきつかったな~。渡せなかった本命チョコが部屋に残ってるのよ。ずっと、ずっと。ずっととどまり続けてるの」
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「三日も見てると気分悪くなってきてね。結局ゴミ箱に捨てた。でも、そのチョコは捨てたところで形を残してるんだよね。これが思いや言葉なら形がないから消えてくれるけど、渡せなかったチョコは永久に残るんだよ。好きだったって思いが永久にこの世のどこかに」
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「そう考えると俺もあのワゴンがすごく不吉なものに思えてきた」あのチョコどもはきっと前日まで恐るべきパワーを発揮していたのだろう。人に思いをぶつける呪いのアイテムとしてのパワーを。そして、呪いは失敗すると人に戻ってくるのだ。俺も戻ってきたチョコを食べる勇気はない。
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だから、平山がチョコを二度と14日に買わなかった理由も理解できた。そんなことも考えずに、気軽にくれって言うのがマズイってことも。そのあたりのことを話して謝ると、「こっちこそ同類だと思って連れてきてごめん」と言われた。
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「まあ、愚痴を聞いてほしかったの。もらえなくて辛いってこともあるけど、あげれなくて辛いってこともあるんだってことをね。ご迷惑おかけしました」「いやいや、俺も呪いの怖さを思い知ったよ」だから別れる直前になってあえて俺はこう言う。「そのチョコ、一個くれよ」
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「呪いはないから安心して」と言って平山がくれた箱を見て、俺は「よし」と思う。これで来月、チョコを送り返す大義名分ができた。思い切り高い、どう見ても本命のヤツを。それで勝負に出てやる。平山がいい方法を教えてくれた。呪いで気持ちを伝えるという方法を。
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はじき返されてこっちが死ぬこともあるかもしれない。平山が一思いに呪いを返せば俺は壮絶にもだえ苦しむ。でも、成功すれば相手を呪える。なら、やってやろう。はじくのが怖くなるような呪いを送ってやろう。そして平山が情けを見せてチョコを受け取ったら俺の勝ちだ。
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そこから平山に呪いを送りこむ。平山を不幸にできるのは俺だけでいい。中学時代の先輩なんて頭から消してやる。包み紙から平山がくれたチョコを取り出す。15日になって力を失った一個を口に入れる。力はなくても、いつものあの甘い味が口の中にべったりとへばりついた。呪いのように。<終わり>

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