【ラバウル泊地防衛戦】

歴史の転換点が近づこうとしている
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「ううん、撃ってない。ただ銃を向けて、スコープ越しに見てただけ。でもあれ、明らかにこっち見てる」 曰く、伊168が銃を向けた途端に兵器が動き出し、ただの円柱がみるみるうちに要塞のように変形していったとか。 「うっそ、あんなに変形すんの。うわ、なんか出てきた!なにあれ…」

2016-09-24 23:39:34
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

現状、情報源は伊168の言葉だけだ。水軍に緊張が走る。周りが不気味なほどに静かで平穏なのが余計に緊張を煽る。 「待って、やばいやばい。一柳司令官、対空迎撃用意!」 伊168は慌てて通信を一柳に繋ぐ。そして不知火達にも叫んだ。

2016-09-24 23:40:31
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「あいつ撃ってきた!ミサイルと爆撃機!まっすぐこっちに向かってる!」 臨戦態勢になる不知火達。通信から返ってきた一柳元親の返答はこうだった。 『動き出したか。上等!』言うが早いか、船団が動き出し、素早く輪形陣を作り上げていく。

2016-09-24 23:41:24
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「一柳艦隊出撃!対空見張りを厳とせよ!」 不知火も一柳の艦隊に指示を出す。母艦から艦娘達が次々と出撃し、船団を囲うように陣取る。 「高雄さん、清霜さん。お2人にもご協力をお願いしたい」「当然です。そのために来たのですから」2人は既に、艤装の準備は万端であった。

2016-09-24 23:42:26
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「イムヤさんは引き続きそこで!敵の動きに対して迅速な指示をお願いします」「任せて頂戴!」 過剰な程に距離を置いたことが幸いし、敵の攻撃の到来までには十分な時間があったため、完璧に近い布陣を構えることができた。やがて、伊168以外にも視認できる距離にミサイルと爆撃機が現れる。

2016-09-24 23:43:34
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「撃て!」不知火が叫ぶ。流石、艦娘に加え大規模な船団で構えているだけあって、その防空能力は艦娘単体の比ではない。ミサイルと爆撃機は船団の遥か上空で爆発四散する。 「また来る!」伊168の声色は先程よりも強ばっている。「尋常じゃない数よ!」

2016-09-24 23:44:55
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次の攻撃がやってくる。ミサイルが3発。その後には、天を覆い尽くすが如き大量の爆撃機! 「あれだけの数、防げるとは…!」「不知火さん達は爆撃機に集中してください!」清霜が前に立つ! 「清霜さん、何を…」「大丈夫です!従って!」 高雄の気迫に押され、不知火は渋々艦隊に指示を出す。

2016-09-24 23:46:51
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3発のミサイルが迫り来る。清霜は息を呑んで深呼吸すると、両手を翳し、キネシスでミサイルを急停止させた。「きゃっ!」高雄が清霜の背中を抑え反動を抑える。清霜はミサイルを方向転換させ、敵爆撃機のド真ん中へと撃ち返す!ミサイルが着弾し、爆風が爆撃機を飲み込む。それでもなお数は減らない!

2016-09-24 23:48:18
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「斉射!」不知火が第2波への対空砲火を指示!爆撃機は次々と落とされていくが、砲火を掻い潜った爆撃機の攻撃により船団が炎上していく。船団の防空能力は確かに艦娘よりも高いが、撃ち漏らせば回避は容易ではない。第3波、第4波…。海は大量の爆撃機の残骸と、炎上する船団の炎に包まれていく。

2016-09-24 23:50:23
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「これ以上ここにいても被害が増すだけです!撤退の指示を!」不知火は一柳に意見具申した。『全軍撤退せよ!』 船団は一斉に翻り、退却を開始する。「手の空いたものは負傷者の避難を!それ以外は引き続き迎撃に回れ!」 高雄と清霜も海へ飛び出し、残る数十人の艦娘と共に強固な防空線を張る。

2016-09-24 23:51:57
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防空線は船団が退避するまでの間、鉄壁の砦となった。第5波、第6波。すべての攻撃が止むまで一切を死守せしめた。 『退却は完了した。お前達も退け』「はっ!」 不知火が艦娘達にも撤退を指示しようとしたその時だ。 「全員武器を下ろして!」

2016-09-24 23:52:48
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伊168の声が響き渡り、一瞬の沈黙が訪れる 「イムヤさん、何を」「いいから!」当の本人は既に銃を収めている。高雄も、清霜も、一柳艦隊の面々も、言われるがままに艤装を手放した。

2016-09-24 23:54:58
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伊168はそれからしばらく、建造物がある方角を無言で見つめていた。 「…もういいです。さあ、撤退するわ」「はあ」 改めて不知火は撤退を指示。伊168はその後も最後まで残り、ただ蒼海を見つめ続けていた。

2016-09-24 23:56:28
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高雄達と一柳の水軍は命からがらラバウルへと帰還した。今や何かを語らう余裕もない。一柳元親はひとまず軍議は翌日に回し、艦隊全員に休息を提案した。高雄達もラバウルの施設を借り、十分に傷と疲れを癒す。高雄は備え付けのマッサージチェアの振動に身を任せ、考えた。

2016-10-09 23:01:37
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

被害は甚大。得られた情報は僅か。わかったのは「下手に手を出さない方がいい」ということ。これではますます解決が先延ばしになるだけだ。どうしたものかと高雄は頭を捻る。 「あれ、イムヤさんは?」 風呂上がりの清霜がバスタオルを巻いただけの格好で尋ねた。

2016-10-09 23:02:53
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「後で1人で入るそうです」そう言うと高雄はすぐに思案に戻った。とにかく今は、限りある情報の中で対策を考えるしかない。高雄の中には一つの答えが出ていた。だがそれを裏付ける鍵がない。 「イムヤさん、部屋にもいなかったんだけどな。まあいっか」清霜は火照った身体を扇風機で冷やし始めた。

2016-10-09 23:04:02
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

翌日、一柳元親と高雄達は軍議を開く。その場にも伊168はいなかった。 「イムヤさん、どこ行っちゃったのかなあ」「全く…まあ、ひとまずは軍議を優先しましょう」高雄がそう言うと、一柳は机の上に海図を広げ、建造物の大まかな位置に文鎮を置いた。「さて、お前はどう考える?」

2016-10-09 23:04:39
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

一柳は高雄の意見を仰ぐ。「まず、これは深海棲艦が何らかの目的で設置したものというのはまず間違いありません。海にそびえ立つ堅牢な砦…仮に海艇砦と呼びましょう」清霜はホワイトボードに「海艇砦」と書いた。 「問題はその目的ですが、恐らく攻撃ではないと思われます」「ほう、何故だ」

2016-10-09 23:05:37
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高雄は海図上のラバウル泊地を指差した。「海艇砦と泊地の距離はかなり近い。もし攻撃が目的ならば、ラバウル泊地はとっくに攻撃されている。あれほどの攻撃能力があるならなおのこと」 皆が昨日の出来事を思い出した。海艇砦は、一柳の艦隊をいとも簡単に敗走させてしまうほどの力を秘めているのだ

2016-10-09 23:06:57
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「その目的は、監視。あれはこのラバウル泊地の動向を観察しているのです。来る攻撃に備えて。即ち海艇砦は予兆。そう遠くないうちに、深界軍による攻撃が始まるでしょう」「攻撃…ではあれは、その情報集めのためのものだと?」不知火が尋ねる。「はい。まあ、推測の域は出ませんが…」

2016-10-09 23:08:08
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「もう一つ気になることがある」一柳が口を開いた。「高雄の言う通りならば、海艇砦の攻撃能力は自衛のためと思われる。だが奴はなぜ、遠く離れた艦隊に攻撃を仕掛けてきた?」一柳は小さく欠けた消しゴムの欠片を海艇砦の周りに置いた。「昨日、我々は遠く離れた海にいた」

2016-10-09 23:09:57
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

今度は船の模型を、昨日布陣した位置に置いた。「ここは互いの索敵も届かない場所。一体どうやって、この距離に我らがいることを感知できたのか」「うーむ…」 流石の高雄も黙ってしまった。海艇砦が攻撃を仕掛けてくるきっかけ、ルーチンを把握できないと迂闊に近づくこともできない。

2016-10-09 23:10:58
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「それは私が説明するわ」 不意に会議室の戸が開かれた。そこにいたのは伊168だ。伊168の身体は全身が濡れ、水が滴り落ちていた。 「今までどこにいたのです!」「どこって…ちょっと泳いでたのよ」伊168はホワイトボードに書かれた「海艇砦」という文字を見た。「ここまでね」

2016-10-09 23:12:03
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