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【1126BD】 1 「りゅう、明後日ひま?」 同じ学区の目と鼻の先に住んでて、幼稚園から高校までずーっと学校が一緒の腐れ縁。親同士も仲良しの、正真正銘の幼なじみ。 そんなりゅうに告白されて、付き合いだしたのは3ヶ月前くらい。
2015-12-04 02:14:512 幼なじみってだけじゃなくて、ずっと好きだったからすごく嬉しかったの。 りゅうも幼なじみ以上に思っててくれたこと、すごく嬉しかった。 …けど、十何年も「幼なじみ」だったから、どうやって付き合ったらいいのか、正直わからなくて… 明後日、11月26日は、りゅうの誕生日なんだけど…
2015-12-04 02:15:273 「え、部活やけど…」 「…のあと。なんにもない?」 「え、後?…ないけど」 「じゃあ…… 部活終わったらうちきて?」 「えっ」 「…やっぱり他に何か予定ある?」 「…いや、ない」 「じゃあ、そういうことで!」
2015-12-04 02:15:374 なんか恥ずかしくてりゅうの顔見れなくて、用件だけ伝えて、さっちゃんのいる隣のクラスに逃げ込んだ。 小さい頃から何回もお祝いしてきた誕生日だけど、「彼氏の誕生日」として祝うのはもちろんはじめてで… 何したらいいのかわからなくて、さっちゃんに泣きついたら、
2015-12-04 02:15:525 《これなら丸ちゃんも嬉しいでしょ》って、錦戸くんとやすくん、さっちゃんとチカのいつものメンバーで、サプライズパーティをやってくれることになった。 りゅうの誕生日の日、ちょうど両親が遅くまで家を空けてるから、会場はわたしの家。
2015-12-04 02:16:156 …でも、ちゃんと予定空いててホッとした。 ムードメーカーで学校の人気者、みんなの丸ちゃんだから、わたしなんかじゃなくて他にお祝いしてくれる人たちがいるかもしれないってちょっと心配だった。 りゅう、喜んでくれるかなあ。
2015-12-04 02:16:287 11月26日。 案の定、朝からりゅうは同級生だけじゃなくて後輩とか先生とか、いろんな人におめでとうって言われてた。やっぱり人気者なんだなあ… 一応日付がかわるときに、おめでとうってメールしたからいいけど…。 人気者丸ちゃんには近づけないなあって、そーっと遠くから見てた。
2015-12-04 02:16:458 学校が終わったら急いで家に帰って、パーティの準備。みんなもいろいろ持ってすぐに来てくれた。 「マルそろそろ来るんちゃう?」 時計を見ると、最終下校時間から20分経ってた。 「じゃあ玄関の靴隠してくるね」 みんなの靴を靴箱に押し込み終えるとちょうどインターホンが鳴った。
2015-12-04 02:17:099 はーい、って答えると、俺ー、隆平、ってりゅうの声がきこえた。 バレないように。冷静に、冷静に。 「部活お疲れ様。わざわざごめんね?お茶もってくから先に部屋いってて?」 「…おん」 キッチンの方に移動して、りゅうの様子を伺う。 りゅうがわたしの部屋のドアをあけた。
2015-12-04 02:17:2410 「「「「ハッピーバースデー!!マル!!」」」」 パンパンパーン!!! クラッカーの音とみんなの声を聞いて、わたしも部屋に入った。 「へっ!?なんでみんなおるん!?びっくりしたああ……」 りゅうは両手でほっぺを覆って、へにゃへにゃと座り込んだ。
2015-12-04 02:17:4111 「ええ、亮ちゃんも章ちゃんもなんも言うてなかったやんかぁ… チカちゃんもさっちゃんも… みんなありがとお」 りゅうが嬉しい時のふにゃふにゃの笑顔。よかったあ。 やすくんが買ってきてくれたホールケーキをみんなでつついたあと、プレゼントタイムになった。
2015-12-04 02:17:5912 「丸ちゃん引退まであとちょっと、頑張ってね!」 さっちゃんとチカとわたしの3人からはプロテインと、5本指ソックス。 「マル、これ。俺と章ちゃんから」 「なぁん、もぉ〜!ありがとおなぁ………ん?…なっ、亮ちゃん!」 「マル顔真っ赤やん!」
2015-12-04 02:18:1513 錦戸くんとやすくんからは、ドンキの紙袋に入ったものをあげてたけど、絶対にあかん、ってりゅうは中身を見せてくれなかった。 あっという間にそこそこの時間になって、お開きに。ぞろぞろと帰っていくみんなを玄関までお見送り。
2015-12-04 02:18:3014 みんなを送り終わって、洗い物しちゃうかあって食器を持って流し台に向かうと、ぺたぺたとりゅうが後ろからついてきた。 「りゅう帰らないの?」 「ん、俺も片付け手伝う」 「だめだよ、りゅう今日の主役だもん。おうちで誕生日会やってくれるんじゃないの?早くかえらなきゃ」
2015-12-04 02:18:4615 高校生になったとはいえ、りゅうのこと大好きな年の離れた弟と妹がいるから、ママも張り切って準備してると思う。 だから帰るのを促して、洗い物をはじめると、後ろからぎゅーって抱きしめられた。 「なあ。俺と二人でいるのいや?」
2015-12-04 02:19:0316 流しの音で聞こえなくなりそうなくらい弱い声で、りゅうが確かにそう言った。 「夏祭りもそうやし、」 付き合いはじめてすぐにりゅうに誘われた夏祭り。やっぱり今日みたくみんなを誘った。 いろんな種類のもん食べれて楽しいなあ、て笑ってた、あれは空元気?
2015-12-04 02:19:1917 「今日もそうやんか。みんなでいるのは楽しいし、嬉しいけど…そういうのと違うやん…」 今振り返る自信はなくて、でもりゅうの話をちゃんと聞きたくて、流しの水を止めた。 「俺は、お前にとってまだただの幼なじみ?」
2015-12-04 02:19:3218 りゅう、そんなこと思ってたの? ううん、違うよね、わたしがりゅうにそんなこと思わせてたんだ。 「ちがうの、あのね」 言わないと…ちゃんと。自分のきもち。 「りゅうのこと大好きで、でもずっと幼なじみだったから、恥ずかしくて、どうしたらいいかわからなくて」
2015-12-04 02:19:4219 おそるおそる首を後ろに回して、りゅうの顔を覗く。…なんでりゅうが顔真っ赤なのよぉ… 「…なんやぁ…もうそんなんかあ…よかったぁ…」 りゅうは、ハの字って言葉がよく似合うほど、眉をぐーっと下げて、ふにゃふにゃーって笑った。
2015-12-04 02:19:5220 「もっと俺がちゃんとすればよかったな。うん、ごめんな」 「ううん、わたしがごめん」 こほん、って一つ咳払いをして、 「俺、ほんまに、めっちゃ好きやから。だから、ちゃんとなんでも話して?」 もっかいぎゅーって強く抱きしめ直してくれた。
2015-12-04 02:20:0221 「でも、みんなの丸ちゃんだから」 「みんなの丸ちゃん?」 「学校の人気者のみんなの丸ちゃん。すみっこのわたしには遠いなあ」 なんてね、っていうと、もー、って呟いて、わたしの肩を持って体を反転させた。 わたしよりうんと高いりゅうの目線が、わたしの目線と合って。
2015-12-04 02:20:1422 「確かに丸ちゃんはみんなの丸ちゃんかもしらんけど、りゅうはお前だけのやで?」 ゆっくり近づいてきた 《ただいま!あれ?りゅうちゃんきてるのー?》 「おおおお母さん!おかえりなさい!」 「はわ、おばちゃん、おじゃましてまーす!」 …ちゅーはもうちょっとおあずけかな。
2015-12-04 02:20:33