「玉狛支部 ⑤」についての考察

WT162話は本当にしんどい回でした。読んでからしばらく、まともに頭が動かなかったです。 でも書かなければと思い、ぽつぽつと呟いてみました。TLではばらばらになっていたので、ここにまとめておきます。
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ひろきあいた @shiorichannnnnn

死者たちの切迫についてかいてみようと思います。

2016-10-25 10:12:32
ひろきあいた @shiorichannnnnn

①ゆりさんは旧ボーダーの集合写真を見た際、「懐かしい」と言いました。 これはよく考えてみると変です。 ふつうなくなった人たちを偲ぶとき、僕たちは写真を見返すからです。 ゆりさんはかなりの期間、この写真を見返していなかったことになる。

2016-10-25 10:19:33
ひろきあいた @shiorichannnnnn

②城戸司令にとって旧ボーダーのメンバーの喪失は、自身を「別人」たらしめるまでに大きな存在でした。「昔はにぎやかだったのよ」。ゆりさんも当時のボーダーをとても好ましく覚えている。 そして、「私たちは」同盟国と戦った、という言葉からして、ゆりさんはおそらく5年前の戦争に参加している。

2016-10-25 10:31:17
ひろきあいた @shiorichannnnnn

③そういう人が、旧ボーダーの人々を思い返すことがない、というのは違和感を覚えます。彼女にとって「彼ら」は思い返すほどの人たちではないということではないし、思い返したくない、ということでも(おそらく)ない。 たぶん、いるんです。 まだ、玉狛には「彼ら」がいる。

2016-10-25 10:41:56
ひろきあいた @shiorichannnnnn

④迅にとって、林藤さんに、小南にとって、レイジさんとゆりさんにとって、5年前になくなった方々は、まだ"玉狛にいる"。 だから城戸司令が使っていた部屋を修にあてがったんです。使われている部屋を誰かに明け渡すわけにはいきませんから。 勿論、玉狛の古株メンバーが妄想している、という訳

2016-10-25 10:48:33
ひろきあいた @shiorichannnnnn

⑤ではありません。古株メンバーにとって「彼ら」は"いるように感じられてならない"存在だ、ということです。5年経った今でも、なお。 「そこにいるように感じられてならない」。だから、[記憶の中の人]にすることができない、あるいはしたくないんです。だから、写真を見返すことができない。

2016-10-25 10:53:50
ひろきあいた @shiorichannnnnn

⑥写真を見返すことによって、その"記憶"というフレームの中に、彼らを納めることができない。思い出話にして、遠い過去の人物にしたくない。 だから、これまでワールドトリガーには、旧ボーダーの面影がちらりとも出てこなかったんです。なくなった人々を、あるいはその記憶を、生のまま自分の中に

2016-10-25 10:58:33
ひろきあいた @shiorichannnnnn

⑦とどめておくには(物理的にもういない人を保存するのは不可能です。それは精神的な作業として執り行われるほかない)、「語らない」という方法しかなかったからです。

2016-10-25 11:08:23
ひろきあいた @shiorichannnnnn

⑧「語らない」ことによって、その思いを言葉で縁取ることを自制することで、それを"生のまま"保ち続ける。 玉狛にいる5人は、そういう道を選んだのだと思います。自身の内側に時の止まってしまった「彼ら」を抱え込んで、それでもなお未来へ進み続ける道を選んだ。 でもそれは、そう簡単なこと

2016-10-25 21:25:53
ひろきあいた @shiorichannnnnn

⑨ではないように思われます。自身の中に、生の自分と死者が同居しているわけですから。ふつうはおかしくなりかねない。 それに適応するように、古株メンバーたちはそれぞれの方法で、死を自身の中に同居させています。 小南は、日常で子どものように振る舞っています。まるで陽太郎そっくりです。

2016-10-25 21:32:02
ひろきあいた @shiorichannnnnn

⑩子どもというのは、生と死の"あわい"に近い存在です。「あちら側」との境目を時々踏み越えてしまうことがある(神隠しはそういう類いの伝承です。それは子どもにしか起こりません)。 そういう[やや危うい]存在になることで、小南は「彼ら」との距離を近づけています。

2016-10-25 21:39:01
ひろきあいた @shiorichannnnnn

⑪(陽太郎は、生まれた頃に「彼ら」が既にそこにいました。直接語られることはなかったでしょうけれど、「彼ら」の影や、匂いや、存在を、玉狛支部の空気の中に感じながら育って来たのだろうと思います。陽太郎にとって「彼ら」は抱え込む存在ではなく、同居人、あるいは家族なのではないでしょうか)

2016-10-25 21:47:41
ひろきあいた @shiorichannnnnn

⑫レイジさんは、身体を鍛えました。 肉体は、魂を入れておく器です。体を鍛えることは、器と魂の結びつきを強め、死に近い状況、すなわち死を抱え込んでも、それに呑み込まれない力をつけることになります。お父さんと鍛えていたことは、5年前にその意味合いが少し変わったのではないでしょうか。

2016-10-25 22:04:31
ひろきあいた @shiorichannnnnn

⑬迅は、作中で一番[死んでしまいそうな人物]です(那須さんや遊真もいるのに、死亡フラグNo.1と言っても過言ではないキャラです)。なんとなく、存在そのものが儚い。 それは多分、迅自身が"あわい"に自らの身を置いているからです。生と死の間に自分を置くことで、「彼ら」と「自分」を繋げ

2016-10-25 22:17:58
ひろきあいた @shiorichannnnnn

⑭ているんです。最もシンプルで、最も危ういやり方で。 それだけ迅にとって、最上さんや、旧ボーダーの仲間たちは、大切だったのだろうと思います(誰が一番、ということではないですが)。 同じように、林藤支部長も、ゆりさんも、自分の中に「彼ら」―正しくは"彼らに対する想い"―を保持する

2016-10-25 22:25:36
ひろきあいた @shiorichannnnnn

⑮ために、何かしらのことを行っているのだろう、と僕は考えています。 この二人はまだ描写がかなり少ないので、分からない部分が多いです。でも、玉狛の大人組がメインの回も、これから出てくる気がします(読みたいです)。 では、と思います。では、「玉狛から出ていった人たち」は、「彼ら」を

2016-10-25 22:32:55
ひろきあいた @shiorichannnnnn

⑯もうその身の内に宿してはいないのでしょうか。 おそらくそうではないと思います。それは多くの方々のご指摘の通りです。 城戸さんは、二度と「彼ら」のような人々をつくり出さないために、今のボーダーを創った。 忍田さんは、旧ボーダーの考えと現ボーダーの考えをつなぐために中立派になった。

2016-10-25 22:48:07
ひろきあいた @shiorichannnnnn

⑰真都ちゃんも、桐山さんも、おそらく「彼ら」を抱えて生きている、と僕は思います。勿論、そのことについてはまだ何も示されていません。けれど、読者という「他者」がその話を読んだだけで、これほどまでに「彼ら」について"考えずにはいられない"のです。作中の人物たちの抱く想いは想像を絶する

2016-10-28 14:59:28
ひろきあいた @shiorichannnnnn

⑱ものがあると思います。 僕たちは162話を読んで深いショックを受けました。「無理」「つらい」という言葉がTLを埋めつくしました。黒塗りにされた写真は特に重く感じられたようでした。僕たちは「彼ら」についてほとんど何も知りません。最上さんと進さん以外について情報は開示されていない

2016-10-28 15:05:17
ひろきあいた @shiorichannnnnn

⑲からです(正確には進さんも亡くなったとは明かされていません)。 にもかかわらず、僕たちは「彼ら」の存在が失われたことが、耐えられない事実だった。「彼ら」について何一つ知らないにも関わらず、です。 一体何が僕たちの胸中に迫って来たのでしょうか。 城戸さんの変貌ぶりが事の大きさ

2016-10-28 15:20:37
ひろきあいた @shiorichannnnnn

⑳を物語っていたのでしょうか。それとも風刃になった最上さんが明かされたから実感が伴ってきた? いずれもあると思います。また、 生き残った人々のこれまでの言動の意味が大きく変わることで、彼・彼女らの中に「彼ら」が大きな喪失として残っていることを知った、これも要因であると思います。

2016-10-28 16:23:27
ひろきあいた @shiorichannnnnn

21.けれど、それらは「重石の重さを増す要因」であって、「重石そのもの」ではないように思われます。 というのは、僕が初読で「つらい」と感じたのは、 「みんな死んでしまったわ」 という部分だったからです。この台詞の後に「彼ら」がなくなってしまった原因と、なぜ城戸さんが今のような

2016-10-28 16:30:47
ひろきあいた @shiorichannnnnn

22.「こわい顔」になったのかが語られる訳ですが、僕がつらくなったのは「死んでしまった」という最初の部分だった。何も知らないのに、それが大きな喪失であるように感じられた。このことについて、僕はほとんど言葉に置き換えて説明することができません(できるようになりたいとは思います)。

2016-10-28 16:37:03
ひろきあいた @shiorichannnnnn

23.適切な例を出すことが難しいのですが、僕は高校の修学旅行で沖縄に行き、ひめゆりの塔の施設を見学しました。そのときに担任の先生が「このような年頃の子どもたちが戦争で亡くなっていったことが耐えられない」と言っていました。また、映画「君の名は。」の終盤で、主人公の瀧くんが

2016-10-28 16:56:15
ひろきあいた @shiorichannnnnn

24.「なぜ行ったことのない町の出来事に、こんなにも胸が締めつけられるのだろう」というモノローグが出てきます。 この二つの記憶が少しだけ今回の「つらさ」に似ている気がするのです。うまく言えないのですが。 ネット上にそのような記述がないかと思って見ていたら、内田樹さんという武道家

2016-10-28 17:05:44