【第三回】一チョロうどん【4*3一本】

不在だけどたまに復活する小夏 @konatsu_numa

【4*3一本】「なんでアイス？」コンビニを出た僕を、兄が奇異なものを見る目で見つめる。そりゃそうか。肉まん買ってくると言って寄り道したんだったっけ。「贔屓の色だったから」葡萄と抹茶のアイスを掲げると兄が仕方なさそうに笑う。暖かい部屋で食べるデザートは格別なのだ。 #一チョロうどん

ｍｈ @mai021126

【4*3一本】ぶどうとマスカット、どっちにしよう。悩み始めてからもう10分経ってしまった。「どうしたの」「んー、ガムの味、迷ってて」なるほど、と弟は迷わず紫を手に取った。「こっちね」「お前ぶどう好きじゃなかった？」こっちで食べるよ。そう指さしたのは、僕の唇。 #一チョロうどん

かちょう @1drow9m

迷わず雪のなかに四男は手を入れた。冷たさに指が悴むのも構わない。感覚も薄れた頃合いを見計らって、二階に上がった。部屋には風邪をひいた三男が、熱にうなされている。前髪をかきあげ、冷たい手を額に当てた。おしぼりなんかより、直に三男を苛む熱を吸い取ってやりたかった。 #一チョロうどん

かちょう @1drow9m

悴んで赤くなった指先に、バカじゃねえのと、風邪から回復した三男が四男を罵倒する。それでお前が風邪引いたら意味ないじゃん。もう本当バカ。立て板に水の如く小言を聞かされながら、甲斐甲斐しくされる看病に、四男は熱に浮かされながらも幸せを実感する。 #一チョロうどん

浅海 @asa628mimi

【4*3一本】ねえ見て、痺れちゃった。霜焼けになった掌を晒して、微笑む男の瞳が光る。直に突っ込んでいればそうなる。形ばかりのため息を吐き、着けなよと渡した手袋は叩かれた。「こんなので治ると思う？」汚れのない世界に立ち尽くすこの人を、今日も火傷しそうに愛さなければ。#一チョロうどん

ｍｈ @mai021126

【4*3一本】穢れのないような人だ、というとキョトンの目をまあるくされた。「はぁ？あのチョロシコスキーが？」長男でも知らないことはあるらしい、教えてたまるものかとも思うけど。あの人が、清潔なシーツの上でのみ見せる無垢な涙の甘さを知るのは自分だけでいいのだから。 #一チョロうどん

蕪木 @kabura_gi13

【雪】かまくらに入ってみたいと、僕たちたちはかねがね言っていた そしてその機会がついにやってきたーー滅多にない大雪がこの地に降ったのだ 二人で四苦八苦して何とかそれらしき物を造り上げる けれど出来た頃には汗だくで 俺たち何してんだろって、二人でふふっと笑い合った #一チョロうどん

浅海 @asa628mimi

【4*3一本】白銀の世界で遊ぶ兄弟の声が、窓の向こうから聞こえてくる。コタツの中で繋いでいた手は、とうに互いの肌をまさぐっていた。寒い屋外、暖かい室内。無邪気な平穏と邪な禁忌。僕らを隔絶するものはこんなにも大きい。せめてこの白がはしたない音を吸い取ってくれたなら。#一チョロうどん

蕪木 @kabura_gi13

【雪】どこもかしこも白銀の世界 その壮麗さに目を瞠る けれど、僕の目を惹くのは只一人 真っ白な世界に唯一佇む彼は無邪気に雪と戯れている そしてふと彼がこちらを見た 「一松…！」その微笑みに心臓がうちぬかれる ああ、この世界で僕たち二人だけだったらいいのに…#一チョロうどん

🐙八橋杏子(秘密)🐙 @kyoko8284

【4*3】降り積もった雪に年甲斐もなくはしゃいで、体の芯まで冷えきって。とびきり熱い湯に浸かった帰り道、二人並んで帰る夜十時。「あ、ちょっと待って」と褞袍の肩の雪を払ってやれば「……なんか、奥さんみたい」――僕の頬があついのは、たぶん、お風呂のせいだけじゃない。 #一チョロうどん

0034 @0034ichichoro

【4*3一本】「雪の結晶って似ていても同じものは１つとしてないんだって」そう言って君は庭先に積もった雪を手で撫で付けて溶かしてゆく。 「俺達もそうだね…似たようで違う結晶」六つ子を雪に例えるなんて稚拙だが…溶けて、水のように彼と１つになりたい、と思う。 #一チョロうどん

higuruma＠( ﾟдﾟ )＜ｸｹｰ @higu39

【4*3一本】「猫はこたつで丸くなるんだよぉ！」「そんな断り文句ある？！」寒いのは嫌いだ。末っ子の、ねえねえ買い物行こう？というおねだりも跳ねのけてしまうくらい嫌いだけれど、そもそも俺はすぐ隣で寝てるこの細い一つ上の兄の背中を置いて、出かけたくなんてないんだよ。 #一チョロうどん

ｍｈ @mai021126

【4*3一本】「ねえねえ、買い物いってたでしょ」ずるい！と頬を膨らませた末弟の表情はあざといなあ、の一言だ。が、内心冷や汗が止まらない。「連れてってよ！」ほらきた。早く帰ってきて一松、僕じゃ嘘をつき通せない。「何買ったの？」デート服なんで言えるかボケ！ #一チョロうどん

twinkle@booth通販中 @ScorpiiCor

猫は炬燵で丸くなるって、あれは嘘だ。現に目の前では猫が雪と戯れている。寒さに耐えかねて早々に室内に戻った俺を余所に、 楽しそうに雪だるまを作る猫は、何処までもはしゃいで何時になく常識人からは掛け離れた様子を見せている。あーそんなの良いから俺の方を見てほしいなんて。#一チョロうどん

浅海 @asa628mimi

【4*3一本】昔は待ち遠しかった雪をいとうようになったが、その分別の楽しみが出来た。炬燵に蜜柑、暖かい部屋でアイス。どちらもいいけど、こんなに美味しいご馳走は他に知らない。張り付いた前髪をかき分ければ、もっととねだる細い腰。悪いことばかりする僕らにサンタは来ない。#一チョロうどん

ｍｈ @mai021126

【4*3一本】サンタはいいこの元へやってくる。そう聞かされてきたボクらがイイコだったことなんて一度もない。「いちまつ」そういって血色の悪い唇を赤く染めた兄は今日もわらいかける。「おいで」その腕に飛び込んで、熱を互いに分け与える行為さえあれば、もういらないのだ。 #一チョロうどん

蕪木 @kabura_gi13

炬燵の下、冷たく悴んだ手が肌を這う気配に三男はひくっと身を捩らせた だが尚もその指は引っ込める気配なく、つうっと脇腹のこそばゆい所を掠める 思わず悲鳴を上げそうになった それを必死に堪える 外は無邪気な兄弟たちの声 寒がりの四男は炬燵の中 犯人はもう分かってる #一チョロうどん

twinkle@booth通販中 @ScorpiiCor

やはりそろそろ部屋の中に入れた方が良いだろうか?ああやって庭先で雪を見ていると時間の経過を忘れて、あの人はそうやって風邪を引くから。ただ見ているだけではこの差は埋まらない。少し手を伸ばして、その手を掴まなければ。掴んで引いて、今すぐ俺の腕の中に来てよ、兄さん。 #一チョロうどん

不在だけどたまに復活する小夏 @konatsu_numa

【4*3一本】深刻そうな顔で歩いている弟に、たまの親切心を覗かせてどうしたのと声を掛けてやった僕が悪かった。どうやっても冬の間に手袋をなくすんだよね、片方だけ。どうしたらいい？だなんて真面目な顔で聞くんじゃねーよ。知るかよ。手が 空いてるならさっさとこっち来れば？#一チョロうどん

イオ @choi34_0

【4*3一本】ちらちらと降る雪に兄が声を上げる。雪が降るんだもん、寒いはずだよと悴んだ指先を擦り合わせる姿に、思わず手袋を差し出した。「お前なぁ、こういう時はこっちだろ」そう言って手袋ではなく少しだけ温い手を取られ、こっちの方が暖かいよと囁かれた。暑いぐらいだよ #一チョロうどん

ｍｈ @mai021126

【4*3一本】「これでどう？湯加減」「オッケー。ちょっと熱いくらいだよ」フヒッ、じゃあちょうどいいね。そう呟けば片眉を上げられた。だって、少し熱すぎるぐらいのほうが、チョロ松にいさんの肌が赤く染まるじゃないか。そう続く言葉はのみ込んで、一緒に入ろうと手を引いた。 #一チョロうどん

かちょう @1drow9m

突然腕を引っ張られ、路地裏に連れ込まれた。いきなり何するんだ、と睨む三男の唇を、物欲しげに四男は見つめる。雪に混じった兄さんの吐く白い息見たらムラムラした。直球な物言いに呆れたのは一瞬。お前から目、閉じてろ。この前笑ったから、俺のキス待ち顔見せてやらないし！ #一チョロうどん

浅海 @asa628mimi

【4*3一本】片方だけ手袋をなくした、なんてわざとらしい言い訳が通用するこの人が愛おしい。細い指と柔らかいのにしっかりした掌は、まるであんたそのもの。ぎゅうと握れば目を丸くして、赤く染まった顔をマフラーで隠す。もし俺が心を半分なくしたと言ったらあんたの分をくれる？#一チョロうどん

かちょう @1drow9m

雪が降るほど寒い日は、手袋なしだとすぐに手が冷える。数歩前を歩く三男を見据え、標的を定める。油断しきった背中は隙だらけ。今だと伸ばした両手で服をかい潜り素肌に触れる。途端辺りに響き渡る絶叫。怒りに燃える三男からすぐに距離をとって逃走開始。さあ鬼ごっこの始まりだ。 #一チョロうどん

twinkle@booth通販中 @ScorpiiCor

「チョロ松兄さん手袋はどうしたの?」そう問いかえれば、目の前にある大きな雪だるまを指さされた。それも満面の笑みで、寒さに顔を赤くしながら。あーいきなりそんな顔見せんなよ。照れんだろ。それにその指先だって真っ赤なんだから、ほら早く手を貸して。俺が今すぐ温めるから。 #一チョロうどん