ウッディ・ガスリーのThis Machine Kills Fascistsについて

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kentarotakahashi @kentarotakahash

あの言葉は日本では、やや誤解されているのではないかと思う。ペンは剣よりも強し、的な意味で語っている人が少なくないのではないだろうか。でも、あれはウッディ達の「転向」宣言でしょう。 twitter.com/discusao/statu…

2016-12-13 08:32:53
もうれつ先生 @discusao

そういやデイヴ・ヴァン・ロンク本では、ウディ・ガスリーのギターの this machine kills fascists ってフレーズに冷ややかな反応でしたな…。 twitter.com/kentarotakahas…

2016-12-12 20:21:00
kentarotakahashi @kentarotakahash

ウッディがギターにThis Machine Kills Facistsと描いたのは1941年。1939年の第二次大戦勃発時には、ウッディの参加するアルマナック・シンガーズを始め、ニューヨークのフォーク・シンガー達、あるいは彼らと接するコミュニスト達は「反戦」の立場だった。

2016-12-13 08:42:40

このギターにかきなぐったThis Machine Kills Fascistsが1941年の最初のヴァージョン。その後、小さなステッカーに変わる

アルマナック・シンガーズ。右からピート・シーガー、ミラード・ランペル、リー・ヘイズ、ウッディ・ガスリー。1941年の始め、まだ反戦の立場だった時期の写真。この数ヶ月後、ギターにThis Machine Kills Fascistsと描いただけでなく、ウッディは髪を切り、ファッションもがらりと変えたのが分かる。

kentarotakahashi @kentarotakahash

アルマナック・シンガーズはアメリカの参戦に反対し、反戦歌を歌っていた。ところが、1941年6月、ドイツはソ連に侵攻する。ヒットラーが共産主義国であるソ連の敵となったことで、米国内のコミュニスト・サークルの空気はがらりと変わる。

2016-12-13 08:53:34

1941年5月に発売されたアルマナック・シンガーズのアルバム『Songs for John Doe』の1曲目。直後の6月にドイツがソ連に侵攻したため、ルーズベルト大統領に反戦の問いかけをしたこの曲を取り除いて、アルバムは再リリースされた。

kentarotakahashi @kentarotakahash

1941年8月、アメリカは大西洋憲章を結び、イギリスとともにヒットラーに立ち向かうことを明確にする。この事実上の参戦をフォーク・シンガー達は支持した。ピート・シーガー作の「Dear Mr.President」は、ルーズベルト大統領に宛てて、支持を伝える曲だった。

2016-12-13 09:09:29

ピート・シーガー作の「Dear Mr.President」。1942年のアルマナック・シンガーズのアルバム『Dear Mr.President』収録。

Now, Mr. President
We haven't always agreed in the past, I know
But that ain't at all important now
What is important is what we got to do
We got to lick Mr. Hitler, and until we do
Other things can wait.

と大統領に対して、過去の不同意を取り消している。さらに、自らも軍に入って闘う意志を表明している。

Now, Mr. President
You're commander-in-chief of our armed forces
The ships and the planes and the tanks and the horses
I guess you know best just where I can fight
All I want to be is situated right

kentarotakahashi @kentarotakahash

このフォーク・シンガー達の「参戦反対」から「参戦支持」への転向劇の中で、ウッディのThis Machine Kills Facistsは描かれた。となれば、それは極めて具体的なメッセージだ。ファシストという言葉が指し示すのは誰よりもヒットラーである。

2016-12-13 09:28:37
kentarotakahashi @kentarotakahash

打倒ヒットラーのためには銃をも取ろう。そういう姿勢でステージに立ち、歌っていることをウッディはギターに描いて示したのだ。もはや、反戦歌を歌っている時ではない、という緊急のメッセージとして。その後、ウッディは軍に入隊もする。

2016-12-13 09:33:06
kentarotakahashi @kentarotakahash

つまり、ウッディ・ガスリーのThis Machine Kills Facistsは「ギターで(音楽で)ファシストをやっつけよう」と言っているのではない。むしろ真逆のメッセージなのだ。

2016-12-13 09:41:57